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9月30日(木)

 おいおい、臨界だぞ臨界。炉の中でもなんでもないところで制御できない核分裂が始まってしまったという信じられないような事態だというのに、なんでまたテレビはこんなに緊迫感を欠いているんだろう。今までの冷却水漏れとかナトリウム漏れとかそういう事故と並べて扱っていたニュースもあったが、そういう事故とは全然質が違うではないか。バラエティ番組なんか中止してもいいから、いったい何が起こっているのかわかりやすく説明してほしいんだがなあ。家の外にも出られず不安な夜を過ごしている付近の住民のためにも。
 2.4キロしか投入してはならないところに16キロもの大量のウランを投入してしまったのが原因だというのだが……まさか原因は単純な人災?
 そういえば今の科学技術庁長官の有馬朗人は原子物理学者。政治家としての能力はともかく、科学オンチの閣僚にいったい何が起きているのか教えるのにはちょっとは役に立つんじゃないかな。
 この事故こそ恐怖の大王だと言い出す奴が出てくることに100カノッサ。

 名前を使えなくなるらしいオウム真理教の新しい名前は、いっそのことあのオウムのマークそのものにしてしまうというのはどうか。何と読むのかと訊かれれば、そりゃ"The Religion Formerly Known As AUM"だろう。長ったらしいというのなら「元オウム」でどうか。それじゃ今までと同じだって? そうだなあ、それならオウムの逆ということで「ジーメンス」はどうか。わかりませんか。そうですか。それじゃいいです。
9月29日(水)

「薬を飲むって、100パーセント純粋な水に不純物が溶け込むようなものだと思います」
 彼は唐突にそう言った。私が何と答えていいのかわからずに黙っていると、理解してもらえなかったと思ったのか、彼は付け加えた。
「ぼくは純粋な水で、薬は不純物なんです」
 なるほど。
「薬を飲むとどうなる?」と私は訊いてみた。
「楽になります」彼は認めた。「でも、本当のぼくではない感じがします」
 確かに気持ちはわかる。彼は純粋でいたいのだ。薬によって意識が変容してしまい、自分が自分でなくなってしまうのが許せないのだ。それは、私にもよくわかる。でも、医者としての私は、彼には薬が必要だと確信している。だから、彼に薬を飲むことを勧めなければならない。
 私は少し考えてからこう訊いた。
「それで、100パーセント純粋な方がいいと思うの?」
「もちろんです」彼は真剣な表情で私を見つめる。
「でもね、100パーセント純粋な水は飲んでも全然おいしくないんだよ」
「そうなんですか?」彼はちょっと目を見開いた。
「そう、山の水とかミネラルウォーターがおいしいのは、カルシウムとかナトリウムとかいろんな不純物が溶け込んでいるからなんだよ」
「純粋な水ってのはないんですか?」
「実験室で作ればあるけどね。でも全然うまくない」
「そうなんですか」
 私は、これまでに彼がしてきた数々の奇行を思い出した。そして、彼の自宅での行動を語っていたときの、両親の恐怖に満ちた目も。
「君はたぶん100パーセント純粋なままでは世の中に受け入れられない。君にはむしろ不純物が必要なんだ。だから、君は薬を飲まなくちゃいけない」
「……」
 彼は何も答えなかった。
 私の言葉は彼に伝わったのだろうか。それとも詭弁だと思われただろうか。それはわからないし、それどころか、自分で話していても半ば詭弁のような気もしていた。
 私には、純粋でありたいと願う彼の気持ちは痛いほどよくわかる。説得している自分がまるで、夢を追う主人公が活躍する小説や映画に出てくる、権威を傘に着た悪役のように思えてイヤになったりもするし、彼の方からすれば私はそんなふうに映っているのだろうと思ったりもする。
 だが、この社会の一員である以上、彼が彼の望むように純粋なままでいることは許されないことなのだ。
 だから、私の立場ではこう言うしかない。
 すまない。

 しりあがり寿『弥次喜多in DEEP』(3)(アスペクトコミックス)購入。
9月28日(火)

 旅行に行っている間に、ポストには謎の怪文書が入っていた。B4の紙1枚なのだが、もう一面びっしりと文章で埋まっており、ところどころによく意味のわからない図版が入っている。その文章というのがだいたいこんな感じ(固有名詞や住所の部分は伏せ字にした)。
日本政府吸血41年間手口解明23年間
××××豊島区北大塚×-×-×警察官の異常正常国民戸籍抹消発覚7年後
家財私物化地獄生命食料薬害危害裏工作最終解剖用
主役捨て子乞食特殊光線指図××団地から掠奪毎日空巣仮死状態猥せつ室内外空間スリ煮え湯
人体外衣類布団洗濯物家具草花風呂の湯愛犬諸々尿害家中尿臭ノミダニゴキブリ持参害
個人の自由束縛八分海部総理公団強制退去取得保谷市東町×-×-×-×××没収
廃人傷害年金失敗眼球危害肛門積めこみ攻め惨殺法人相体型醜く変貌

生活崩壊新妻××子×××隣室保谷市東町×-×-×-×××寄生尻尾襤褸S33開始文京区根津××団地××団地××-×××捨て子乞食断種男女6名面白可笑しく卑猥駄弁尽夜間断なく煩く特殊光線マジック手口着眼吸血犯手引き炊事洗濯入浴排便外犯罪の限り

××団地自宅前路上毒害と明記愛犬マルチーズ一日中団地住民に晒し短胴伸ばし胴長にし真っ直ぐの足湾曲に変形眼球危害目小さくし真っ黒の鼻脱色小さくし無臭覚生涯耳溜尿注入攻め赤く腫れ89.1.8.薬殺死
 単語の羅列で全然文章になっていないし、実際何があったのかもよくわからないのだが、ともかく書き手の並々ならぬ怨念が伝わってくる文書である。内容を読む限り、典型的な迫害妄想に取り憑かれた人物の書いた文章といえるが、そんな小ざかしい分析よりも、とにかくこの文章の迫力には圧倒されてしまう。このような文書を作成して大量にコピーし、一軒一軒の家を回ってポストに入れる情熱を思うとなんだか背筋がぞっとしてくるくらいだ。
 しかし愛犬マルチーズにいったい何が起こったんだろう。
9月27日(月)

 一週間も病院を休むと、仕事がたまっていてたいへんである。急変を起こした患者さんがいなかったのにはほっとしたが、忙しい一日を送る。
 おまけに、一週間も日本を離れると新刊がたまっていてたいへん。ロバート・アーウィン『アラビアン・ナイトメア』(国書刊行会)、長山靖生『鴎外のオカルト、漱石の科学』(新潮社)、折原一『暗闇の教室』(早川書房)、キャロル・オコンネル『クリスマスに少女は還る』(創元推理文庫)、ジェイムズ・アラン・ガードナー『ファイナル・ジェンダー』(ハヤカワ文庫SF)、永井路子『新装版 悪霊列伝』(角川文庫)をまとめ買い。マンガは唐澤なをき『二十一世紀科學小僧』(文藝春秋)を購入。唐澤なをきはギヤグによく舊假名を使ふのだが、假名遣ひに不正確な処が多いのが氣になつてしまふなア(「すごひ」とか「いいぢやなひか」とか)。『アストロ球団 第1巻』(太田出版)も買ってしまった。今読むとこれはまさに島本和彦のノリだなあ。これはもう最終巻まで買うしか。
 ああ、今日も手抜きモードの日記であった。
9月26日()

 というわけで、英国から帰ってまいりました。
 今日は時差ぼけで疲れ切っているので、昼まで寝倒したあとも、だらだらと寝たり起きたりしているうちに日が暮れてしまう。うーむ、旅行中の一日に比べると、家で過ごす一日は、とても同じ一日とは思えないほどあっと言う間に過ぎて行くのお。
 すまん、今日は手抜きモードなので日記はこれで終わりだ。
9月25日(土)

 イギリス旅行編へ。
9月24日(金)

 イギリス旅行編へ。
9月23日(木)

 イギリス旅行編へ。
9月22日(水)

 イギリス旅行編へ。
9月21日(火)

 イギリス旅行編へ。
過去の日記

特別編 英国珍道中の巻
99年9月中旬 多重人格、オークニーに行きたい、そしてイギリスの巻
99年9月上旬 家族、通り魔、そしてもてない男の巻
99年8月下旬 家庭内幻魔大戦、不忍道り、そしてDASACON2の巻
99年8月中旬 コンビニ、液晶モニタ、そしてフォリアドゥの巻
99年8月上旬 犯罪者ロマン、イオンド大学、そして両生爬虫類館の巻
99年7月下旬 ハイジャック、あかすばり、そしてさよなら7の月の巻
99年7月中旬 誹風柳多留、小児愛ふたたび、そして動物園の巻
99年7月上旬 SF大会、小児愛、そして光瀬龍の巻
99年6月下旬 小此木啓吾、上野千鶴子、そしてカルシウムの巻
99年6月中旬 妄想、解剖学標本室、そしてパキャマラドの巻
99年6月上旬 睾丸握痛、アルペン踊り、そして県立戦隊アオモレンジャーの巻
99年5月下旬 トキ、ヘキヘキ、そしてSSRIの巻
99年5月中旬 鴛鴦歌合戦、星野富弘、そして平凡の巻
99年5月上旬 SFセミナー、ヘンリー・ダーガー、そして「てへ」の巻
99年4月下旬 病跡学会、お茶大SF研パーティ、そしてさよなら日記猿人の巻
99年4月中旬 こっくりさん、高い音低い音、そしてセバスチャンの巻
99年4月上旬 日記猿人、生首、そして「治療」は「正義」かの巻
99年3月下旬 メールを打つ、『街』、そしてだんご3兄弟の巻
99年3月中旬 言語新作、DASACON、そしてピルクスの巻
99年3月上旬 サマータイム、お茶の会、そしてバニーナイツの巻
99年2月下旬 バイアグラ、巨人症、そしてドッペルゲンガーの巻
99年2月中旬 クリストファー・エリクソン、インフルエンザ、そしてミロクザルの巻
99年2月上旬 犬神憑き、高知、そして睾丸有柄移植の巻
99年1月下旬 30歳、寺田寅彦、そしてスピッツの巻
99年1月中旬 アニラセタム、成人、そしてソファの巻
99年1月上旬 鍾乳洞、伝言ダイヤル、そして向精神薬の巻

97-98年の日記

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