ホーム  話題別インデックス  書評インデックス  掲示板
読冊日記英国編(99年9月18日〜25日)
このページにリンクするときには、diaryuk.html#xxにお願いします(xxは日付)。
9月18日(土)

 さて今日から日記もイギリス旅行編である。
 ブリティッシュエアウェイズ機でヒースロー空港に到着したのは午後6時。空港からはヒースロー・エクスプレスという最近新しくできた路線を使い、20分くらいでパディントン駅に到着。ロンドンは日本に比べてかなり肌寒い。20度もないのではないか。
 今夜の宿はハイド・パークに程近いランカスター・ゲイトというところにあるコモドール・ホテル。パディントン駅からも近いので、タクシー代がもったいないので歩いて行こうと思ったのはいいものの、初めての土地だけに道に迷ってしまい30分近くうろうろ歩くはめに。
 歩いていて気づいたのだが、ロンドンは観光客が多い街である。私たちと同じように重そうなスーツケースを引きずって歩く人が人種を問わず非常に多い。ほとんど市民より観光客の方が多いのではないかと思えるほど。
 さてようやくたどりついたホテルは一応エレベータ(イギリスではリフトという)はついているもののときどき停まっていてなかなか動かない上、部屋は広いのだがトリプルで、使わないベッドがでんと場所をとっている。私はまあここでもいいか、と思ったのだが、妻はあまり気に入っていないようで、予約の切れるあさって以降は別のホテルに移りたさそう。まあそれでもいいか。
 気づくともう20時を回っているので、夕食を食べに外出。降り出した雨の中、傘をさして歩いていると、ホテル近くのギリシャ料理店の前で客引きの兄ちゃんに呼びとめられるが、いきなり決めてしまうのもどうかと思ったので、もうちょっと見て回ってから、といって断ってしまった。
 そこからちょっと歩くと夜中でもにぎやかなクイーンズウェイに出た。中華、タイ、日本、ギリシャ、レバノンなどさまざまな国のレストランが連なっている上、ショッピングセンターには「無印良品」の店まである無国籍地帯である。
 翌日以降知ることになるのだが、別にここに特別エスニック料理店が密集しているというわけではなく、ロンドンはそこら中に世界中の国のレストランがあり、いながらにして世界各国の料理が食べられるのであった。中でも多いのが中華料理とタイ料理、それからギリシャ料理かな。私のようなエスニック料理好きには夢のような都市である。いいなあ、ロンドン。
 ただし、この日入ることにした中華料理店の料理は、量は食べ切れないほどあるわ、油に妙な臭みはあるわで最悪。ああ、ギリシャ料理店の兄ちゃんの言うことを聞いておけばよかった、と思ったがあとの祭りなのであった。
9月19日()

ロンドン塔

 さてこの日が実質的にはイギリス観光の初日。ホテルでコンチネンタル・ブレックファストを食べた後は、今日は移動が多くなりそうなので、地下鉄のランカスターゲイト駅で一日乗車券を買ってバンク駅へ向かう。
 そこから人通りのない銀行街をぶらぶらと歩いて私たちが目指したのは、ロンドン塔。最初の訪問地にこういう陰惨なスポットを選んでしまうあたりが私らしいというかなんというか。この日は日曜だったせいか、開館時間前にはチケット売り場前は長蛇の列。こういう場所が好きな人は多いと見える。
 一見すると単なる古い建物にしか見えないが、ロンドン塔といえばもちろん拷問と処刑の場所。ここでは何気なく回ってしまわず、入り口の所で貸してくれる日本語ガイドを聞きながらゆっくり回るのがお勧め。アン・ブーリンやジェイン・グレイの処刑場跡やトマス・モアやエリザベス1世の幽閉所、ルドルフ・ヘスが収容されていた建物などなど、さまざまな血なまぐさい歴史の跡を見ることができる。
 しかし、こういう王室にとっては不名誉な場所まで観光地にしてしまうイギリスの根性はすごい。日本でも見習ってくれないもんだろうか。

タワーブリッジ

 次に訪れたのはロンドン塔にほど近いタワーブリッジ。ロンドン塔が中世から近世のロンドンの象徴だとすれば、これは鉄と蒸気の時代、近代の産物。そう、まさに時代はスチームパンク! 巨大な機械が轟音とともに動くぜ! というわけで巨大機械マニアには絶対のお勧め。ただし今じゃ蒸気じゃなく電気で動いているらしいし、橋が上がることもあまりないらしいけど。タワーの中で見せられる人形と映像による寸劇は、正直言ってあまり面白いものではないけれど、最後の仕掛けには驚いた(突然どこかから鉄のきしむ音が聞こえてきて、いきなり上の天井が降りてくるのだ!)。

 このへんでそろそろ腹が減ってきたので、タワーブリッジのチケット裏に書いてあったイタリアンレストランで食事をしてみたのだが、これがまずいのなんの。イギリスの食事、これで2連敗である。「アメリカで大人気のイタリアンレストランチェーン」と書いてあった時点で気づくべきだったか。

ロンドン・ダンジョン

 タワーブリッジから公園を抜け、歩いて10分くらい。次に行ってみたのはまたしても陰惨な場所、ロンドン・ダンジョンである。ここは別に由緒ある名所でもなんでもなく、国鉄の高架下の敷地を使って作られた一大テーマパーク。ただし日本のテーマパークのように生ぬるいものではなく、ここにあるのは中世の拷問や疫病、処刑といった残虐な場面のリアルな蝋人形。疫病にかかった女がげろげろと血反吐を吐いている悪趣味なシーンもあるし、切り裂きジャックの殺人現場を再現した場面もあったりする(もちろん臓物がはみ出た蝋人形が路上に倒れていて、それを娼婦姿の係のお姉さんが説明してくれるのである)。
 こういう蝋人形ばかりかと思ったら、そうではなく、途中からは道は水路になり、そこからはいきなり遊園地のような小さな船に乗せられる。しかし遊園地とは違って周囲で我々に待っているのは血まみれの処刑シーン。しばらくして何もないところで船は止まったのでおかしいな、と思っていたら、突然ガシャンと音がして後ろから落ちる! このときはいちばん後ろに座っていたおかげで私たちは水浸しになってしまった。思えばこのときがこの旅につきまとう水難の始まりだったのかも。
 売店ではいろいろとグロテスクなものを売っていてなかなか楽しい。ここで私は血の入った注射器型のボールペンという悪趣味なものを何本か買う。これを病院におみやげに持って行ったら嫌がられるだろうなあ。

ロック・サーカス

 さてここからは再び地下鉄に乗ってピカデリー・サーカスにあるロック・サーカスへ。ここはマダム・タッソーの蝋人形館の別館みたいなもので、ジミヘン、マドンナ、ティナ・ターナーなどなど、数多くのロックスターの蝋人形が展示してある場所。むろん、フレディ・マーキュリーの蝋人形と写真が取りたいという妻のたっての要望である。
 墓地を模した部屋に立っているフレディの蝋人形と並んで何度も写真を撮ったあと、妻は売店でクイーングッズを買いあさる。そこにあったクイーン本全種類を手にしたあと、妻が発見したのはクイーンのCDクロック。しかも3種類ある。ただの時計なら3つも買うことはないが、よく見るとどうやらちゃんと聴けるCDで、それにはフレディ・マーキュリーやブライアン・メイのインタビューが収録されているらしい。1枚15.99ポンド(約2880円)。ただのCDとしては高い値段である。しばし悩んだあげく妻は3つ全部を購入。悩んだときは全部買え。オタクの買い物の鉄則である(家に帰って聴いて見たらちゃんとインタビューが収録されていた)。これで妻はすっかり満足したらしく、結局フレディの家は訪問しなかった。それでよかったのか、妻よ。

 ピカデリー・サーカスにあるショッピングセンター「トロカデロ」の入り口の屋根の上にはなぜかソニック・ザ・ヘッジホッグの像が。ここにはセガワールドというゲーセンが入っているのである。さらに同じ建物内のHMVにはゲーム売り場もあって、鉄拳3とバイオハザード2(こちらでは"RESIDENT EVIL 2"というタイトル)が人気らしい。ドリキャス(なぜか渦巻きが青色)も売ってたな。
 同じトロカデロ内のウィタードという店で紅茶を買ったのだが、ここではフレーバーティやインドや中国のお茶など、あらゆる種類のお茶を売っている。中でも驚いたのはアールグレイのグリーンティなる代物(ダージリンもあった)。変なもの好きな私は迷わず購入。日本に帰ってから飲んでみると、見た目は緑茶なのだが鼻を近づけると濃厚なベルガモットの香りがする。確かにアールグレイである。味も予想していたほどまずくはない。むしろ、けっこういけるかも。考えてみれば紅茶にはこんなにフレーバーティがあるのに、緑茶のフレーバーティがないことの方が不思議かもしれない。

夕食

 バスでいったんホテルに戻り、さて今日はどこで食事をするかな、ときのうと同じ道を歩き、ギリシャ料理店の前を通りかかったとたん、"Oh,My Friend"と呼びかけられた。なんと、きのうの客引き兄ちゃんである。我々のことを覚えていたらしい。
 きのう断った手前、今日はここに入らないと悪いかなあ、と入ってみることにする。我々がメニューのよくわからない料理に悩んでいると、客引き兄ちゃんがやってきて「シーバスとビーフストロガノフを食べるといい、日本人好みの味だよ」といい、料理まで勝手に決めてしまった。まあ、確かに彼の言うことに間違いはなく、料理は非常に美味だった。イギリスに来て初めてのおいしい料理である。ただし、どうも注文の時のやりとりに行き違いがあったらしく、いくら待ってもビーフストロガノフが来ないなど不愉快な思いもしたが、これは我々の英語力に問題があっただけなのかも。

ウォーキング・ツアーについて

 私は参加しなかったのだけど、ロンドンはウォーキングツアーが盛んで、毎日のように何かのツアーが行われている。The Original LONDON WALKSの主催だけでも、ビートルズのロンドンやらオスカー・ワイルドのロンドン、シャーロック・ホームズのロンドン、ダイアナ妃ツアーなどなど、ものすごい数である。切り裂きジャックツアー、ウェストエンドの幽霊ツアー(もちろん集合は夜)なんてのもあったりする。さらに幽霊ツアー専門のTHE LONDON GHOST WALKというツアー会社もあったりする。ヒアリングに自信があればこういうのに参加してもよかったんだけどなあ。こういうのは、説明が理解できなければただ街を歩きまわるだけになってしまうので今回はパス。
 しかし、日本でもこういうウォーキングツアーやってくれないかなあ。小塚原、鈴ヶ森刑場跡ツアーとか四谷怪談ツアーとかやってくれてもいいと思うんだけど。
9月20日(月)

 さてコモドール・ホテルの予約は今日まで。妻がきのう別のホテルに電話して予約しておいたので、今日からホテルを移ることに。といっても同じロンドン市内、それほど遠くはない。朝チェックアウトしてタクシーをつかまえ、大英博物館裏手のブルームズベリにあるアカデミー・ホテルに移動。このホテル、エレベーターもなく小ぢんまりとはしてはいるが、部屋はさっぱりしているし、スタッフもフレンドリーだし、かなり居心地のいいホテルである。

大英博物館

 チェックインはまだできないので、そこに取りあえず荷物だけを置いてから歩いて向かったのは、大英博物館。やっぱりロンドンに来たからにはここに来なけりゃね。広大な建物の中にはエジプトの巨大な神像やらアッシリアの壁画やらが惜しげもなく展示されていて圧倒されるばかり。まるまる一室エジプトのミイラだけ、という部屋まであったりする。とても今、日本のエジプト展のために展示品を貸し出しているとは思えないほどの充実ぶりである。
 しかし、よく考えてみればこりゃ全部盗んで来たものなのでは? 神像も壁画も遺跡の壁から引っぺがして持ってきたものなんじゃないか。そんなものをこんなふうに偉そうに展示するなんて盗っ人たけだけしいと思ってしまうのはひがみですかね。まあ、入場料無料で写真撮影自由なのはうれしいけど。
 たった半日ではとても全部は見きれないので駆け足で館内を回ったあとは、博物館入口そばのパブ、ミュージアム・タヴァーンで昼食。なんでもホームズ譚にも登場する歴史のあるパブだとか。3日目にしてようやくイギリス料理の食事である。私はフィッシュ&チップス、妻はコテージパイ。フィッシュ&チップスにはイギリス流にモルトビネガーをかけていただく。これが実にうまい。誰だ、イギリス料理がまずいなんて言った奴は。まろやかな味の茶色いイギリスビールも、私には、日本のドライなだけのビールよりはるかにうまいと思うんだが。日本ではなかなか手に入らないんだよなあ、イギリスビール。

Forbidden Planet

 さてこれからどうしようかと博物館を離れてオックスフォード・ストリートを歩いていると、突然発見したのがSF専門書店Forbidden Planet。これはもう寄るしかないでしょ。壁の貼り紙によれば、10月にはウィリアム・ギブスンのサイン会、そのあとにもケヴィン・J・アンダースンやらニール・スティーヴンスンやら錚々たる作家たちのサイン会が開かれるそうだ。さすがはロンドン。
 1階はフィギュアやコミックが主で、スタトレやスターウォーズのアクションフィギュアのほか、「ああ女神さま」や「銃夢」など日本マンガの翻訳や、FFやキューティーハニーのフィギュアだとかピカチュウのぬいぐるみなんてのも売っている。でも飾ってあるフィギュアを見た限りでは、英国人はどうも塗りが下手のようだ。
 SF書籍は地下にあるのだけれど、売り場は広くてさすがの品揃え。ここでは、イギリスの幻想ホラー作家クリストファー・ファウラーの短篇集"Uncut""Flesh Wounds"を購入(作品がだいぶ重なっていることに気づいたのはホテルに帰ってからのこと)。以前ハヤカワ文庫FTで出てた『ルーフワールド』(ロンドンの建物の屋根の上を跳梁する秘密結社があるという話)を読んでファンになったものの、その後まったく邦訳が出なくなってしまったんだよなあ、この作家。しかし本国ではファウラーは『ルーフワールド』以後もロンドンを舞台にした幻想冒険小説を書きつづけているようで、「100年以内にロンドンにはクリストファー・ファウラー・ツアーが出現するだろう」という書評もあるくらい。結局、あとでここにはもう一度来てファウラーの"Rune""Disturbia"というロンドンを舞台にした長篇2冊を買ってしまった。しかし海外に来るたびに洋書を買っているが、まともに読み終えたためしが一度もないんだよなあ、しくしく。来年までには絶対読んでやるぞ。
 昔サンリオ文庫で読んで気に入ったボブ・ショウの作品もほしたかったのだけど1冊しかなくてがっかり。本国でもすでに忘れられた作家なんだろうか、ボブ・ショウって。
 イギリスらしいところといえば、スティーヴン・バクスターのコーナーがあってサイン本が山と積まれていたこと。それからホラーのコーナーにはジェームズ・ハーバートがたくさん並んでいたこと。ハーバートは、イギリスではキングと並ぶ作家らしいぞ。

ウェスト・サイド・ストーリー

 「せっかくロンドンに来たんだからミュージカルが観たい!」と妻が言うため、夜はプリンス・オブ・ウェールズ・シアターに「ウェスト・サイド・ストーリー」を観に行くことにする。劇場のボックスオフィスでチケットを取ったところ、開演まで1時間くらいあったため夕食はケンタッキーですませてからいよいよ劇場へ。私はミュージカルは全然わからないので、こんなもんかと思ったのだが(途中まで主人公が誰だかわからなかったくらいである)、妻は感動していた様子。

 イギリスのテレビでは連日、台湾の大地震のニュースを放送しているが、地震の少ないイギリスではやっぱり他人事のような印象である。一方、ワイドショーにあたる番組は、ダイアナ・ロスがヒースロー空港でボディチェックを受けたとかいうニュースでもちきりである。別に麻薬を所持していたというわけでもなんでもなさそうなのだが、ただただこの話題で延々と引っ張って行くありさまは日本のワイドショーそっくりである。
9月21日(火)

カーディフ

 今日は少し足を伸ばして朝からウェールズの首都カーディフへ向かう。特急なら2時間だから充分日帰り可能な距離である。イギリスでは特急だから料金が高いということはなく、鈍行と同じ料金である。値段の差は、あくまで一等車か二等車かで決まるのである。つまり、料金というのは快適さを買うものであり、日本のように金を出して時間を買うという発想はあまりないようである。
 パディントン駅で手間取っているうちに列車に乗り遅れてしまったので、駅で1時間待つことになってしまい、カーディフに着いたのは12時近く。カーディフの街は10月から始まるワールドカップ・ラグビー一色。街中には至るところに垂れ幕がかかっているし、中心部には巨大なミレニアム・スタジアムが見える。さすがウェールズの首都だけあって大都市である。
 さらに驚くのは、カーディフでは、駅名から観光地の説明板に至るまですべて英語とウェールズ語の二ヶ国語表記だということ。道路のバスレーン表示も二つの言葉で書かれているし、観光地ではウェールズ語版のパンフレットまで売っていた。いったいどれだけの利用者がいるのかしらないが、これがイングランドとは違った文化を持つウェールズの意地ってものなんだろう。

カーフィリー城

 さてカーディフについてまず目指したのは、市街から11キロ離れたカーフィリーの街にあるカーフィリー城。原語で書けばCaerphilly Castle。ガイドブックではカイルフィリー、ケールフィリー、ケアフィリーなどいろいろと表記されているが、現地の発音ではカーフィリーがいちばん近いようである。ここまで行くには、たいがいのガイドブックにはバスを使ったほうがいいと書かれているのだけれど、ヴァレー・ラインという鉄道でも20分ほどで行ける(こっちの方がバスより速い)。
 カーフィリー城は13世紀に作られた城で、イギリスで最も大きい中世の城砦の一つなんだそうな。広大な堀に囲まれた廃城の姿は非常に美しく、まさに私たちが思い描いている中世の城そのもの。ほぼ原型をとどめている塔もあるが、半ば崩れ落ち斜めに傾いた塔もあり、廃墟の雰囲気が存分に味わえる城である。カーディフからちょっと離れているが、訪れる価値は充分ある場所である。
 ここでゆっくりと時間をすごしてから再び鉄道でカーディフへ。

カーディフ城

 カーディフ駅に着いたら、今度は市街の中心部にあるカーディフ城へ向かう。
 城に入る前にまずは城の前にあった"Celtic Cauldron"というウェールズ伝統料理の店で遅めの昼食を。ここで妻が食べた「カウル」というスープはけっこう美味だったようだが、私が頼んだ「ウェリッシュ・レアビット」というエビとチーズの載ったサンドイッチのような食べ物はあまりおいしくなかった。むう、別のものを頼めばよかったなあ。
 さて、カーディフ城は一見なんてことのない城のようだが、実はここは内装がものすごい。なんでも、19世紀にここに住んでいた3代目ビュート候が贅を尽くして改装したのだそうで、食堂、図書室、寝室に至るまで豪華絢爛の一言。柱や天井には金で模様が描き込まれ、暖炉には彫刻、壁には聖書やグリム童話、アラビアンナイトなどなどの物語の一場面が描かれていて、そのごてごてとしたきらびやかさは、ほとんど悪趣味の領域にまで達している。というか、完全に悪趣味だよ、これは。
 カーディフ城は自由な参観は許されず、時間が決められていてガイド付きで部屋を回ることになるのだが、このガイドさんの英語はとてもわかりやすくて、ヒアリングに不自由な私でもなんとか半分くらいは理解することができた。
 カーディフ城の庭に放し飼いにされていた孔雀や鴨としばし戯れてから外に出るともう時間は18時。城の前のみやげ物屋に寄ろうかと思ったら、17時半までで閉店だそうな。イギリスはどこも閉店時間が早いのが難点である。
 仕方がないので駅まで戻り、駅の構内にある「WHスミス」というキオスクというかコンビニみたいな店に入ってみた。すると、日本のコンビニならおにぎりが並んでいるような棚にフラップジャックという謎の食べ物が並んでいる。ヨーグルト味やカプチーノ味などさまざまな味があるようだ。見たことのないものを見ると買いたくなってしまうのが私の悪い癖。もちろん買ってみて帰りの列車の中で食べてみた。これはけっこううまいではないか。ちなみに、フラップジャックは英和辞典にも載っていて「オート麦を入れた甘いパンケーキ」とのこと。なるほど、イギリスの伝統的な食べ物なのですね(今回の旅行にはセイコーの電子辞書を持って行ったのだがこれが非常に便利だった)。

ホテル探しと夕食

 ロンドンに帰ってホテルに戻り、明日までしかホテルを予約していなかったので、あと2泊延長してもらおうとしたら、もう予約がいっぱいなのでそれはできないとの答え。これで明日からの宿泊先がなくなってしまった。明日はツアーに行く予定なのでホテル探しはできない。こうなったら仕方がない。夕食にも行かず、ホテルに電話をかけまくる。ちなみに電話をしたのはすべて妻。私は英語力に自信がないので交渉は妻に任せっきりであった。情けない。
 何軒かのホテルに電話をかけたが全て満室で断られ、最後にかけたラズボーン・ホテルがようやく空いているという。今泊まっているホテルよりもちょっと高いが、歩いて行ける距離なので便利。即座にそのホテルに決める。
 22時半ごろに出かけて、ホテルのすぐそばにあったタイ料理のレストランで遅めの夕食。ロンドンは普通の店は日本よりかなり閉店が早いのだが、レストランやパブはかなり遅くまで開いている。この店も午前1時閉店とのこと。タイ料理は日本とほぼ同じ味で、可もなく不可もなしといったところ。
9月22日(水)

バスツアー

 今日は、ロンドンから郊外に出るバスツアーに参加してみることにした。ロンドンからはかなり多くのバスツアーが出ている(日本語ツアーもあるのだが、日本人ばかりでぞろぞろと歩くのはどうもぞっとしないので却下)のだが、私たちは、最初に泊まったコモドール・ホテルにあったパンフレットで見つけたアストラル・トラベルズという会社のツアーを申し込んだ。なんでここにしたかといえば、ストーンヘンジとエイヴベリのストーンサークルの両方に行くのはこの会社のツアーしかなかったからである。
 いくつかのツアーがある中から私たちが選んだのは、2つのストーンサークルのほかソールズベリの大聖堂も訪れる「ストーン&ボーンズ・ツアー」という名前のツアー。本当はソールズベリの代わりに、アーサー王の終焉の地アヴァロンがありおまけに聖杯まで埋まっているといわれる(ホントか?)グラストンベリを回る、その名も「マジカル・ツアー」に参加したかったのだけど、こっちはすでにいっぱいで参加できなかったのが残念。

 7時半に、16人乗りのミニバス(イギリスではミニコーチという)がホテルまで迎えに来てくれる。案内してくれるのはガイド兼ドライバーのジョディ君。市内のホテルを回ってツアー客を拾ったら、さあ出発!

ソールズベリ大聖堂

 まずは高速を2時間ほど走って着いたのが、ソールズベリ大聖堂なのだが、ここは修復中で外側に白いカバーがかかっていた。なんだかイギリスはどこへ行っても工事中のような気がするなあ。聖堂の中はただ、だだっぴろいだけで別に大したことはないのだが(おい)、チャプターハウスでは現存する4つのマグナ・カルタの原本のうちの1つを見ることができる。おお、これが歴史の授業で名前だけは聞いたことのあるマグナ・カルタか、とちょっと感動。紙ではなく、なんだか緑っぽい色をした皮に書かれているのですね。

オールド・セイラム

 次にバスで向かったのはオールド・セイラム。ソールズベリの旧市街のあった場所である。といっても今では石の土台があるだけで別に面白くもない遺跡なのだが、ここは遺跡よりも眺望が見事。ここは小高い丘の上にあり、周囲には高い山などまったくなく、あっても丘程度なので、四方ともさえぎるものなどまったくない。ソールズベリの市街や大聖堂の尖塔も見えるし、方向によっては地平線まで見える。どこへ行っても山が見える日本とはまったく違う景色である。
 日本では丘というと山の一部だったり住宅地に覆われていたりするので、私は今まで「丘の上」とか言われてもあんまりぴんと来なかったのだが、イギリスに来て初めて本物の「丘」を見たような気がする。

パブで昼食

 さてミニバスは広大な畑、牛や馬、羊が放牧されている草地やあひるや鴨のいる小川といったイギリスの田舎の風景の中を走り、昼食ポイントである小さなパブに到着(といっても大きな駐車場があったりしてけっこう観光化されていたようだけど)。ここで私が食べたのはジャケットポテト(皮ごと蒸したジャガイモ)にスティルトン・チーズとベーコンという素朴な食事でこれがまたうまいのなんの。2回目のイギリスビールもやっぱりうまい。なんでイギリス料理はまずいなんていうかなあ。

ストーンヘンジ

 そこからちょっと離れた平原の中に突然出現するのがストーンヘンジ。しかしドルイドの呪いかなんだか知らないが、着いたときには突然の大雨。ものすごい風が吹き、雷まで鳴り響く始末。出発時刻まではそんなに余裕がないので吹きすさぶ嵐の中、片手に折り畳み傘、片手にオーディオガイドを持ちながらぐるりとストーンヘンジを一周したのだが、もう傘を持っているのがやっとでストーンヘンジなんて見ていられないほど。足早に一周して戻ってきたときにはもう全身びしょぬれである。靴もズボンも水を吸って重い。妻の傘(私が以前誕生日に贈った傘だ!)に至っては、あまりの強風に骨が折れてしまっている。
 ここのショップでしばらく雨宿りしながら、ストーンヘンジの日本語ガイドブックと"A Guide to the Stone Circles"というガイドブックを購入。イギリス、アイルランド、ブルターニュ地方を合わせて全部で390ものストーンサークルが紹介されている。そんなにあるのか。
 もっとよく見たかったなあ、と思いつつも出発時刻になったのでバスに戻ったとたん、なんと雨がやんで急に晴れてきたではないか。おいおい。なんだこれは。嫌がらせか。
 バスは非情に出発したのだが、太陽の反対側には見えてきたのがくっきりときれいな虹。これが、日本では見たこともないほどとても色鮮やかな虹である。さえぎるものの何もない平原では、虹は山に隠されることもなくはっきりと見える。七色の虹を通して向こうにある家が見えることもあって、なるほどこれなら虹の根元を掘ったら……といった伝説も生まれそうである。日本じゃ虹の根元なんて見えやしないからなあ。

エイヴベリ

 さて次の目的地はエイヴベリのストーンサークル。小さな村の中にあるストーンサークル、というよりは巨大なストーンサークルの中に村があるような場所である。このへんにはシルベリー・ヒルという5000年前に作られたこんもりとした人造の丘(「イギリスのピラミッド」だそうな)もあり、しかもクロップ・サークル(日本で言うミステリー・サークルのこと)の多発地帯。実際、近くの丘の刈り取られた畑にかすかにクロップ・サークルの跡が見えた。まさにイギリスのムー民御用達、UFOマニアの聖地とでもいうべき場所なのである!
 さてエイヴベリに着くやいなやガイド兼ドライバーのジョディ君がおもむろに取り出したのはなんとダウジング・ロッドではないか。アストラル・トラベルズという会社名からもしやとは思っていたが(アストラル・ボディという魔術用語があるのである)、まさかそんなものが出てくるとは。そして巨石の脇に立ったジョディは、「この二つの巨石の間にレイラインが通っていて……」と説明をしはじめたではないか。おいおい。
 日本に帰ってから調べてみると、アストラル・トラベルズというこの会社、クロップ・サークル・ツアーなんてのもやっていた。見事に私たち向きのツアーに申し込んでしまったらしい(笑)。
 ジョディがダウジング・ロッドを持って歩くと、二つの巨石の間を通った瞬間にすっとロッドが開く。で、逆に通ると閉じる。そしてジョディは、ツアー客に棒を渡してやってみろ、という。ツアー客の中にはダウジングが何なのか知らなくて途方に暮れている人もいたようだが、こういうのが大好きな妻は嬉々として何度もやっている。妻がやってもやっぱりロッドは開くのだが、どうしたわけか、私がやるとうまくいかない。ううむ。やはり懐疑論者にはうまくいかないのだろうか。

 バスに戻る途中に寄ったストーンサークルの近くのみやげ物屋(その名も「ヘンジショップ」)では水晶とかヒーリンググッズとかケルト文明本などなどその手のグッズが山のように売られていた。やはりここは聖地らしい(笑)。私はここでエイヴベリのガイドブックと一緒にAndy Thomasの"Vital Signs"というクロップ・サークルのコンプリート・ガイド・ブックを買いました。完全にビリーバーの視点から書かれた本だけど、きれいなサークルの写真がたくさん載っているのが魅力。
 このエイヴベリのストーンサークル、日本のガイドブックにはあまり載っていないが、ストーンヘンジと違って観光客も少ない上、実際に触れることもできるし周囲にはシルベリー・ヒルやチョークの丘に彫られた白馬など見所も多くてお勧め。できればツアーではなくもっとゆっくりしていたかったなあ。掲示板で教えてくれたシボンちゃんに感謝します。

 バスでロンドンに戻り、ホテルに荷物を取りに行ってから本日の宿であるラズボーン・ホテルまで歩く。こちらのホテルはちょっと値が張るだけあって部屋はなんと豪華なスイート。花柄の壁紙に大きなソファ。テレビも居間と寝室に2台と、なんだか気後れしてしまうくらいである。それでも日本のホテルに比べればはるかに安い値段である。
 夕食はホテルのそばにある"Paolo's"というイタリアン・レストラン。まあ、日本の普通のイタリアン・レストラン程度の味かな。2日目の昼食を食べたレストランに比べればはるかにましである。
9月23日(木)

 今日もどこかへ遠出しようかとも思ったのだが、なんだか疲れたのでのんびりとロンドンで過ごすことにする。
 まずはテート・ギャラリーにでも行って見ましょうか、と地下鉄に乗ったものの、ピムリコの駅を出ると雨が降っている。しかもけっこう激しい。妻の傘はきのう破壊されてしまいもう使えないので、私の小さい折り畳み傘に二人で入って歩き出す。激しい雨の中を歩いたのだが、ギャラリーに着いたころにはもうやんでいるではないか。しまった、もうちょっと待てばよかったか。
 この旅で、私はイギリスの天気について学んだことがある。
(1)イギリスでは晴れていても突然雨が降ってくることがある。
(2)その雨は十数分も待てばやむ。
 なるほど、駅で雨宿りをしている人が多かったわけだ。

テート・ギャラリー

 さて、テート・ギャラリーも大英博物館と同じく基本的には入場料無料で寄付制。美術館の中では、課外授業らしい子どもたちが床に座って先生の話を聴いたり、熱心に写生をしたりしていた。こんなところに毎日でもただで入れるなんて、イギリスの子どもがうらやましいなあ。
 館内でもっとも混雑していて日本人も多いのが、19世紀イギリス絵画の部屋。日本でも有名なJ.W.ウォーターハウスの「シャーロットの乙女」やJ.E.ミレーの「オフィーリア」などラファエル前派の作品が並んでいる。私が以前から見たかったのは、同じ部屋にあったリチャード・ダッドの「妖精の樵のたくみな一撃」(The Fairy Feller's Masterstroke)という絵。案外小さいのだがきわめて密度が濃い、一種異様な印象を残す作品である。それもそのはず、作者リチャード・ダッドは父親を殺しベドラム精神病院(99年3月1日の日記参照)に20年間も入院していた画家なのである。当然この絵も精神病院の中で描いた作品。妻によればクイーンにも同じタイトルの曲があるのだそうで、これはフレディも好きだった作品らしい。
 ウィリアム・ブレイクもかなりあるが例の『レッド・ドラゴン』に出てきた有名な絵はなかったのが残念(ワシントンのナショナル・ギャラリーにあるらしい)。イギリスを代表する画家ターナーのコレクションの量もものすごいのだが、私にはどれもおんなじような絵に見えてしまう。どうやら私にはターナーのよさはよくわからないらしい。

ウェストミンスター寺院

 さてテート・ギャラリーを見たあとはナショナル・ギャラリーへ向かうつもりだったのだけど、いちおう観光客らしくビッグベンでも見ておくか、とテムズ川沿いのミルバンクをとぼとぼと歩いて国会議事堂前へ。美しい建物だよなあ。国籍不明の日本の国会議事堂とは格が違う。
 向かいにあるウェストミンスター寺院も有名だし取りあえず入っておこうか、と何の気なしに入ったのだがこれがまたかなりの充実ぶり。さすがに王室の教会だけあって内部の壮麗さは昨日のソールズベリ大聖堂などは及びもつかないほど。暗い聖堂の中には所狭しと壮麗な記念碑や棺が並んでおり、ほとんど建物全体が墓場といったありさまである。歴代の王や女王、貴族たちの棺の並ぶ中を観光客がぞろぞろと歩きまわるさまは、考えようによってはロンドン・ダンジョン以上に悪趣味かも。日本でいえば天皇陵を観光地にしてるようなもんだよね。
 じっくりとそこらじゅうの碑文を見ながら聖堂を回っていると、思いがけずクロムウェルとかリビングストンとか意外な有名人の墓や記念碑を発見することができてなかなか楽しい。意外だったのは、政治家や貴族の墓が並んでいる一角でブルーワー・リットン卿の墓を発見したこと。まあ政治家で貴族だったんだから不思議はないが、日本じゃ『ザノーニ』とか『不思議な物語』とか国書刊行会系の幻想小説で知られている作家ですな。どっちも読んだことないけど。

ナショナル・ギャラリー

 さてウェストミンスターで時間をくってしまったので、ナショナル・ギャラリーに着いたときには見る時間がほとんど残っていなかった。ここも当然のように無料、寄付は歓迎。ここで見たかったのは、ハンス・ホルバインの「大使たち」という絵。だまし絵や視覚マジックの本には必ず載っている作品である。一見すると楽器や地球儀などさまざまなオブジェのある部屋に2人の男性が立っているだけの絵にすぎないのだが、下の方を見ると2人の間に斜めに謎の物体が浮遊している。この物体、前から見ただけでは何だかわからないが、実は絵の横の方から見ると髑髏が浮かび上がるという仕掛け。これは意外に大きい絵だったので驚いた。
 ナショナル・ギャラリーではこの絵とダ・ヴィンチの聖母子像を見ただけであとはざっと流すだけの時間しかなかったのが残念。

Murder One

 そのあとはチャリング・クロス・ロードをぶらぶらと歩く。ここは日本で言えば神保町のような書店街である。しかしここでもあまり時間がなくて(ロンドンではたいがいの店が午後6時には閉まってしまうのだ)、じっくり見たのはミステリ専門店"Murder One"だけ。ミステリ専門店とはいっても置いてあるのはミステリだけではなく、この本屋の地下に"New Worlds"というSF、ファンタジー、ホラー専門フロアがあるのである。ここにはSFグッズやコミックなどはなく、店の規模では"Forbidden Planet"に劣るものの、ここにしかない本もあったりするし、それに何と言っても古本の充実度がすごい。エースのダブルブックやアナログ誌のバックナンバーなどが山ほど揃っている。
 ここでは日本趣味の表紙に惹かれてAlexander Besherという作家のサイバーSF"RIM"("MIR","CHI"という続編があって三部作になっている。作者は日本育ちで高木彬光を海外に紹介したりもしてるとか)、ティム・パワーズの"Earthquake Weather"を購入(でも、パワーズの前作"Expiration Date"はハワイで買ったまま、100ページ読んだだけで積ん読になっているんだよなあ)。
 本屋街を歩いていて驚いたのは、SF書店に限らず、普通の小さな本屋にもイアン・バンクスやコリン・デクスターの新作が平積みになっていること。デクスターはともかく、バンクスがベストセラーになるなんて、いい国だなあ。イギリス。
 さらにいえば、地下鉄に乗っている人の多くは本を読んでいるし、駅のコンビニでもブロンテ姉妹やウィルキー・コリンズのような古典を売っている! すごいぜイギリス。

 今日の夕食は"Andrea's"というギリシャ料理店(二日目とは別の店)。ここもやっぱりシーフードがうまい。ギリシャ料理店は日本にはあまりないけど、これはけっこういけそうである。

MIND THE GAP

 さてロンドンでは、そこらじゅうで地下鉄のマークに"MIND THE GAP"というメッセージを組み合わせたTシャツが売られている。いったいこれはどういう意味だろうと首をひねっていたのだが、地下鉄に乗ってみて謎が解けた。ホームに大きく"MIND THE GAP"と書かれてある上、同じ文句が何度も繰り返しアナウンスされているのである。つまりこれは「ホームと電車の隙間に注意せよ」ということ。実際、日本では考えられないほどホームと電車の隙間が大きくて、こりゃ落ちる人も多そうである。
 そのほかにも地下鉄マークをあしらったグッズは、マグカップからパンツまでいろいろと売られていて、けっこう人気があるらしい。日本じゃ営団地下鉄マーク入りの商品を出しても売れそうにないよなあ。
9月24日(金)

 さていよいよ今日がイギリス最終日。ホテル近くのベイグル屋でクリームチーズ入りのベーグルを買って朝食にする。これも実に美味。
 "Forbidden Planet"で買い忘れた本を買ってから(妻はLocusの最新号と妖精の置き時計を買いました)、すっかり重くなったスーツケースを引きずって歩いていると、ビルの上からいきなり「モーナリザ、モナリザ」と歌声が響いてくる。しかも妙にうまい。驚いて見上げると、工事現場で働くオヤジがビルの足場の上で歌っているではないか。粋なオヤジである。

 イギリスはどこへ行っても古い建物ばかり。一見すると町全体が古めかしくみえて、ビルや建売住宅に慣れた日本人からすると驚くばかりである。こういうふうに古いものをそのまま残せるというのは、石の文化ならですね。ストーンヘンジもそうだし古城もそう。悔しいが木の文化である日本じゃ無理そうだ。
 しかし、建物の外見は古いし、タクシーも一見古めかしいオースティンなのだが、今回泊まったホテルは全部モデム接続可能だったり、タクシーも中は意外に新しく機能的だったりと、内部は徹底的に改装してある。ソールズベリの大聖堂にしても、ステンドグラスや祭壇は意外に現代的だった。なるほど、これがイギリス流ということなんだろうなあ。

 ヒースロー15時30分発のブリティッシュ・エアウェイズ機で成田へ。飛行機の中で軽食についてきたブルーベリー・マフィンは、"THE FABULOUS BAKIN' BOYS"BALLISTIC BLUEBERRY MUFFINなる商品。BALLISTICなマフィンってどんなんだ。
9月25日(土)

 11時40分成田到着。飛行機を降りたとたん、むっとするような蒸し暑い空気に包まれる。イギリスの肌寒いほどの涼しさに比べればまるで熱帯のような暑さ。いくら日本が暑いとはいえ、9月末に30度というのは普通じゃないよなあ。どうやら日本を離れていた間に台風が通りすぎ、貴ノ浪が休場し、淡谷のり子が亡くなっていたのか。ううむ、短いようで長い8日間であった。
 家に帰ってすぐ、旅行中の後れを取り戻すべく、さっそくコンビニで「バイオハザード3」を購入(笑)。

home