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更新日: 2004/10/06


2004年 2月下旬

2004年2月25日(水)

SFマガジン4月号

 届いたので読む。
 角川書店の広告ページ(30ページ)には驚いた。真っ黒(よく見ると小説の一部と思われる文字列がグレーで印刷されている)な背景の上、池上永一がNewType4月号から小説「シャングリ・ラ」を連載することが告知されていて、その上に大きく「これはSFではない。」と書かれているのだ。
 そ、それは瀬名秀明が禁じた禁句ではなかったか(2001年のSFセミナー講演で、瀬名秀明は。「『これはSFじゃない』と今後5年間言わない。作家・読者・評論家・編集者含めて全員で申し合わせる」と提言したのだ)。その禁句を、しかも瀬名秀明とも関係の深い角川が、あえて逆手に取り堂々と使って見せてSFファンを挑発するとは。やられました。SFファンの心理をうまくついた広告である。
 しかし、5年間の期限が切れる2006年のSFセミナーでは「思う存分『これはSFではない』と言う部屋」でもやろうか、と思っていたのに。先を越されてしまったなあ。

購入本

 伊藤典夫先生が何年も前からずっと訳していたロバート・リード『地球間ハイウェイ』がようやく刊行。そのほかケリー・リンク『スペシャリストの帽子』、E・E・スミス『三惑星連合軍』、G・K・ウオリ『箱の女』、オラフ・ステープルドン『最後にして最初の人間』などを購入。今月は、『ふたりジャネット』も含め、海外SFは豊作ですね。その点日本SFは……。

謹呈本

 山崎マキコ『声だけが耳に残る』(中央公論新社)が送られてきました。ありがとうございます。ただ、いったい誰が何を期待して送ってきたのかがよくわかりません。SF書評家としての私に送ってきたのかと思ったのだけれど、どうも本はアダルトチルドレンもので、SFではなさそう。精神科医としてなんかコメントしてほしいとかいうのかなあ。あんまり私の得意なジャンルの本ではなさそうなのだけれど。

2004年2月26日(木)

旅行記

 妻の両親に「ペルー旅行記はどこかいね」と聞かれたので書いておきます。
 ここがペルー旅行記です。
 ちなみに、他の旅行日記は、バリ(日記内)、アイルランドイギリスハワイとなっております。しかし、初めての海外旅行でおっかなびっくりハワイに行った私がペルーにまで行けるとは。人間成長するものですな。

[読書]マックス・バリー『ジェニファー・ガバメント』(竹書房文庫)

 あまり目につかない文庫から出ているので知らない人もいるかもしれないのだけれど、実はこれはSFの佳品。
 航空会社のマイレージをきっかけに、世界のほとんどすべての企業が2つの陣営に属していて、政府はほとんど無力、伝統的な名字もなくなっていて、人々はみんな所属する企業の名前でジョン・ナイキとかヘイリー・マクドナルドというように呼ばれている……という設定がまずすごい(まあ、現実にもヨーサナン・3Kバッテリーなんてひとはいるわけで、驚くほどのことではないのかもしれないが)。タイトルのジェニファー・ガバメントは政府で働いているからガバメントなわけだ(娘はマテル社の幼稚園に通っているのでケイト・マテル)。
 物語は、ナイキ社のジョン・ナイキが、スニーカー人気を煽るために購入者10人を殺す、というマーケティング手法を考えて実行に移すところから始まるのだけれど、偶然が偶然を呼んで、ストーリーは次々にとんでもない方向へ。物語そっちのけでキャラクターが勝手に動き回って網のような物語を織り上げている様子、それにこういう設定なのに妙に倫理的な話の進め方は、どぎつさの少ないカール・ハイアセン、といった印象。佳作ではあるのだけれど、派手にはじけるのではなく、妙におとなしくまとまりすぎているあたりがかえって欠点かもしれない。結末なんて、あまりにも普通すぎてがっかりですよ。でも、来年の『SFが読みたい!』ではたぶん10位〜20位くらいに入ってきそうな作品。

SFマガジンの書評

 しかし、私がSFマガジンで国内SFの書評を始めてもうかれこれ2年になるのだけれど、たったの1回も「よかったよ」とか「今回はちょっとね」などという感想を言われたことが(ネットでも面と向かっても)ない。少なくとも私は、まずSFマガジンを開くとレビューページを読み、小説は気になった作家の作品くらいしか読まない。私の例を基準に考えれば、レビューページはSFマガジンの中でもかなり読まれている方のページだと思うのだけれど、でも誰も書評のことなんて話題にしない。書評とはそれ自体が批評の対象にはならないものなのだろうし、それが書評なるものの宿命だとは思うのだけれど、なんとなく寂しい気がしないでもない。誰かひとことくらい反応してくれてもいいと思うのになあ。

2004年2月28日(土)

スティーヴン・キングの「キングダム・ホスピタル」

 アメリカで3月から放送されるTVミニシリーズ。キングの名を冠しているけれど、これはラース・フォン・トリアーの『キングダム』のリメイク。でも、トリアーの作家性が強烈ににじみ出たアレをアメリカナイズしてしまったら、ただの凡庸なホラーになってしまう気が……。偏屈なカナダ人医師が屋上で「アメリカなんか嫌いだ!」と叫んだりするんでしょうか。ウド・キアーの役はいったい誰が……。キングよりリンチあたりに監修させたほうがよかったのでは。
 しかし、トリアーってば、もう『キングダム』の続きを作る気はないのかなあ。あのシリーズ好きなんだけど。

伴野朗死去

 実は、伴野朗の作品はけっこう好きだった。伴野ファンの多くはそうだと思うけれど、まず乱歩賞受賞作の『五十万年の死角』の群を抜いた面白さに夢中になり、その後は鄭和を主人公にした『大航海』や、玄奘三蔵を描いた『西域伝』など波瀾万丈の中国歴史冒険小説にハマったものである(逆に、現代ものや中国近代ものはあまり読まなかった)。中国歴史ものを書く作家は多いけれど、伴野作品は謀略や冒険の占める割合が多くて、その中でもかなり異色だった。ご冥福をお祈りします。


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Written by Haruki Kazano