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牧野修『楽園の知恵 あるいはヒステリーの歴史』の書評を書きつつ作ってみた、「
捲屋名山(まくりや・めいざん)=マグレガー・メイザース 「黄金の夜明け」創立者のひとり。
黒井津楼膳(くろいつ・ろうぜん)=クリスチャン・ローゼンクロイツ 伝説的な薔薇十字団の創始者。
添田唖蝉坊(そえだ・あぜんぼう)=これは魔術関係ではなく実在の明治時代の演歌師。
憂入谷臼琴(ういりや・うすこと)=ウィリアム・ウェストコット 「黄金の夜明け」創立者のひとり。
金宮不乱(きんぐう・ふらん)=フランシス・キング 『英国魔術結社の興亡』などの著者。
江戸川縁次(えどがわ・へりじ)=エドワード・ベリッジ 「黄金の夜明け」の中心人物の一人。性魔術に興味を示した。
アニー豊任丸(あにー・ほうにんまる)=アニー・ホーニマン 「黄金の夜明け」の裕福な団員。ベリッジの不道徳を糾弾した。
幌州夫人(ほろす・ふじん)=ホロス夫人 米国出身の詐欺師。〈秘密の首領〉アンナ・シュプレンゲルの魔法名を自称し、メイザースを騙して儀式文書を入手した。
主蓮華安奈(しゅれんげ・あんな)=アンナ・シュプレンゲル
荒下黒瓜(あれした・くろうり)=アレイスター・クロウリー 超有名魔術師。
大安宝珠(だいあん・ほうじゅ)=ダイアン・フォーチュン 20世紀の魔術師。「内光協会」の創立者。
W.B.イェイツとかフローレンス・ファーとかも出してほしかったなあ。
いや、誰がどう見ても宇宙版ジャンヌ・ダルクなのでそれはいいとして。
「世界とは書籍であり、あらゆる事象は物語として語られ、創られる」という冒頭の一節や、それを利用した「記述式無限選択航法」、、さらには奴婢腫瘍と服従物質といった病と精神を結びつけたアイディアなどはいかにも牧野節でぞくぞくするのだけれど、ストーリー自体はきわめてシンプルで予定調和。とはいっても、神の声によって「正しき方向」へと導かれて世界を救う少女の話なんてものを、あの牧野修がまじめな顔して書いているとも思えないので(実際、彼女の狂信者としての理不尽さは、物語の随所で描かれているし)、これはやっぱり、一見単純なファンタジーの裏側にあるものを深読みしろ、ということなんでしょう。
そう思って読むと、神の声を信じて疑わない独善的な少女ピュセルは、なんだか『だからドロシー帰っておいで』の伸江みたいだし、神とピュセルの関係は、「踊るバビロン」のポー先生と「僕」のよう(肉体的な苦しみの果てに「物語る力」を得るところなんてそっくり)。そういえば、ピュセルに殴られて「なぜか嬉しそうな顔をする」儕輩号にも、いつもの鬼畜系牧野キャラの匂いがする。この物語を楽しむには、深読みだ! 徹底的に深読みせよ! 「ネビイーム」とは何か? 「ル・ジュール・ドゥ・グロワール・レ・タリヴェ」とはどういう意味か? 「グランマティケー」とは何か?
あと、気になるのは「神」とは何であり、この物語自体を記述しているのはいったい何者なのか、ということでしょうなあ。主人公が「物語る乙女」であることからすると、この物語自体が「物語る乙女」が語った物語であり、この物語により世界を変えてしまった、ということなんだろうか。そう考えると、この物語の記述(たとえば、ピュセルが「正しく、善い」という記述とか)が正しい保証はいったいどこにあるのだろうか……。などと、いろいろ深読みができる小説であります。ぜひ、作者の言語SF短編集『楽園の知恵 あるいはヒステリーの歴史』との併読をお薦めします。
のアクセス数がものすごい勢いで伸びております。なぜに今頃? と思ったら、唐沢俊一さんの日記(12/16)で紹介されたのが、あちこちのニュースサイトで取り上げられたためらしい。
これをきっかけに、しばらくぶりにギャラリーを更新してみようか、とも思ったんだけど、さすがに古い雑誌の広告はそろそろネタ切れ。新しい雑誌の広告ならまだいくつかあるんだけど、最近の精神科薬の広告は、ニコニコ笑ってる家族とか動物とかばっかりであんまりおもしろくないのよ。
最近の広告じゃ、精神科薬じゃないけれど、抗生物質のファロムっていう薬の広告が凄かったなあ。製薬会社の人がくれたパンフレットの表紙には、ヒロイックファンタジーに出てくるような、剣を構えた半裸の美女のイラストがでかでかと。パンフレットがどっかにあれば紹介するんだけど、なくしてしまったのが残念。
自分が何をしたいのかわからない若者が、過去のできごとを解決することによって未来に歩き出す、という前向きなファンタジー。誰か芸能人(柴咲コウあたりとか)がほめれば、瞬く間にベストセラーになりそうなタイプの話ではあるのだけれど、私はこういう前向きファンタジーがとても苦手。同じ青春ファンタジーなら、こういう自己がない主人公の話より、過剰な自己をかかえてがんじがらめになってしまった主人公を描く森見登美彦『太陽の塔』の方が好み。まあ、あくまで好みの問題だし、どっちが売れそうかといえば、まちがいなく『10センチの空』の方なのだろうけれど。
だいたい、石器時代人たちが空を飛んで翼竜を狩りはじめる、というプロローグでまずひっかかってしまいました。空を飛ぶのはいいとして、翼竜はちょっとどうかと。『恐竜100万年』ですか。あえて、どう考えてもおかしい「翼竜」の描写を頭に持ってきたのは、おそらく性格のひねた読者をはじいて、素直に読んでくれる読者だけを残すためのフィルターみたいなものなんでしょうけれど、言うまでもなく私はひねた性格なので最後まで物語に乗れませんでした。