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「精神分裂病」から「統合失調症」への名称変更は日本精神神経学会主導だったのに対して、「痴呆」は厚生労働省主導なのね。
医療関係者にアンケートをとったところ、緊急調査:「痴呆」に替わる言葉、「認知」「記憶」「脳機能」含む用語が上位に(MedWave)などという記事もありましたが、厚生労働省としては、
認知症
もの忘れ症
認知障害
記憶症
記憶障害
アルツハイマー
の6つに候補を絞ったらしい。
まず、不思議に思ったのは、「痴呆」の名称を変更したとして、それを誰が使うのか、ということ。まあ言い出しっぺの厚生労働省は当然使うだろうから公文書からは「痴呆」の文字が消えるのだろうけれど、医学用語としての「痴呆」はどうなるのか。たとえば「アルツハイマー型老年痴呆」という病名があるのだけれど、「痴呆→アルツハイマー」と名称が変更された場合、「アルツハイマー型老年アルツハイマー」というわけのわからん病名になってしまうのか。
また、「痴呆」はすでに日常語になっているのだけれど、今さら言葉を変えたとして、本当にそれが一般に浸透するのか。お役所主体の名称変更というと、「E電」「実年」という単語が頭をよぎるのだけど……。
6つの候補を見ても、なんだかどれも今ひとつ。包含関係に混乱を生じているネーミングが多いのだ。
まず「アルツハイマー」は、さっきも書いたように、痴呆の一部がアルツハイマー型であるにすぎない。老年痴呆は大きく分けて「アルツハイマー型痴呆」と「血管性痴呆」に分けられるし、それ以外にもクロイツフェルト・ヤコブ病による痴呆や、梅毒やエイズによる痴呆もあるわけで、痴呆全体を「アルツハイマー」と呼ぶのはどうもヘンだ。
「記憶障害」「認知障害」は、「アルツハイマー」とは逆に、言葉の指し示す範囲が広すぎる。記憶喪失だって記憶障害だし、シンナー吸ってラリってる状態だって認知障害。痴呆はあくまで「記憶障害」「認知障害」のサブジャンルなのだから、認知障害=痴呆にしてしまうと混乱が広がるだけのような気がする。
あと、「物忘れ症」ってのも、重度の痴呆患者の実態を考えるとあまりに軽すぎるので却下。親しみやすくすればいいってもんじゃない。「記憶症」はなんだかわからないし、いちばんましなのは「認知症」かなあ。これも微妙だけれども。
医者の側としては、最近の映画の邦題方式で、英語をそのまんまカタカナにしただけの「ディメンチア」でお茶を濁すのがいちばん楽でいいんだけど、これはどう考えても一般には浸透しそうにないのでダメでしょう。
まあ、何という名前になるにせよ、アリスにさえならなければなんでもいいや。
東大野球部より弱いチームがあったのか……。
『栄光なき天才たち』、『BRAINS〜コンピュータに賭けた男たち〜』の原作者、伊藤智義氏が千葉大学工学部教授になってたのには驚きました。『栄光なき天才たち』、好きだったんだけど、全巻まとめて復刊されないかなあ。
UNDER17「くじびきアンバランス」購入。
カップリングの「かがやきサイリューム」という曲に、「オシロスコープ あこがれた光速船」という歌詞があるのだけれど、光速船にあこがれるって、モモーイ歳いくつよ(光速船は、1982年に発売された超高価でバカでかいモニター一体型ベクタースキャンゲーム機)。
こういう歌詞をさらりと書いてしまうところにモモーイの底知れぬ才能を感じます。
新聞を読んでいたら、社会面に「不気味登校の生徒」という見出しがあった。不気味登校。いったいどんな登校なのだろうか。ぬらぬらと体をくねらせ地を這うように登校するとか、手足をぴくりとも動かさず空中をすべるように登校するとか、そんな感じなんだろうか。いろいろと想像をふくらませて記事を読んだのだけれど、どんな登校なのか記事にはまったく書いていない。よくよく見返してみたら、見出しには「不登校気味」とあった。
これも、一瞬、ソニーの米子支社かと思いました。
来年公開予定の映画。大学SF研を舞台にした時間SFコメディらしい。監督は本広克行、ヒロインは上野樹里。もともとは京都の劇団ヨーロッパ企画の芝居だそうな。
LOTRのサムことショーン・アスティンと、昔スタトレのウェスリー今やオタクブロガーのウィル・ウィートンが出ていた「トイ・ソルジャー」などという映画を思い出したりしたのだけれど、現実はそううまくいくはずもなく、最悪の展開に。
「武装メンバーは何度も『政府はお前たちを必要としていない。モスクワ劇場占拠事件(02年10月)のように必ず突入作戦をする』と私たちを脅し続けた」
などという証言をみると、治安部隊にわざと強行突入させて大量の犠牲者を出し、プーチン政権への不信感を植えつけることこそが目的だった可能性もありますね。だとすればこのテロは成功してしまったことになる。
「ボクの目の前で撃ち殺した」…7歳少年、恐怖の証言
「そばにいたおじさんが、自動小銃で撃たれて死んじゃった」と言って、表情をこわばらせて黙り込む。「そのおじさんは、なぜ撃たれたの」と聞くと、「大きな声で叫んで、ヤツらをイライラさせたから」とつぶやいた。
7歳の子にこんなインタビューする記者は死んでしまえ。子供たちが受けた心的外傷がとても心配です。
そういえば映画の日に観たんだった。うーんこれといって感想はないのだけれど、予想していたほど知的な映画ではなく、ベタで情に訴えかける映画だったのにはげんなり。前半の陰謀論は根拠薄弱だし、後半でイラク戦争で亡くなった兵士のお母さんがホワイトハウスを訪れるところを映すなんて、あまりにもあざとすぎる。
まあ、そういうふうに作ったのもムーア監督の戦略で、メインターゲットをアメリカの中流以下の層に絞り、ブッシュの再選を阻止するというただそれだけを目標に作られた映画なんだろう。ただ、そういう作りにしてしまったおかげで、富裕層や共和党支持者にはまったく訴えかけるものがないし、もとからブッシュだめだめじゃん、と思っている私ら外国人が見ても、そんなに感心はしないのだった。
ブッシュは金持ち白人のことしか考えてないよ、貧乏人は捨て駒にされるだけだよ、と映画はそういうのだけれど、たとえ貧乏人のこと考えるようになっても、アメリカがアメリカのことしか考えないんだったらどっちにしろ同じことだよなあ、と外国人としては思うのである。
乳首。
えー、いちおう物語の中心に大きな謎があった前作に比べてストーリーは単調だし、細かいカット割りに頼ったアクションシーンは今ひとつ。なんでアリスが都合よく教会に助けに来たんだとか、アンブレラ社が何をしようとしてるのかさっぱりわからないなど疑問も多いのだけれど、まあ乳首に免じて許す。ミラ・ジョボビッチの乳首がそんなにありがたがるようなものかどうかという根本的な疑問もあるのだけれど。
おお。
ワールドコン日記は、ドンブラコン日記、のだなのだ、アヴァロンの水辺Blog(ニール・ゲイマンと肩組んでますよ)でも更新中。
ついでに、コリー・ドクトロウ氏によるワールドコン写真集。
シルヴァーバーグとオールディスというのはすごいツーショット。チャールズ・ストロスは怖そうだ。ケリー・リンクはこんな眼鏡の人だったのか。なんだかわからんが、仲良さそうでいいなあ。
エロ折り紙指南書。著者は"Master Sugoi"だそうな。誰ですか、それは。
本を買わなくても、Origami Undergroundというサイトで、折り方が解説されています。ビル&モニカの折り方とか。
室蘭のやきとりは豚肉と玉ネギを洋がらしで食べるのが特徴
どういうことなのか混乱したのだけれど、室蘭では本当に豚肉の串焼きを「やきとり」というらしい。へえ。
大阪市中央区の大阪城公園で5日午後6時ごろ、人気歌手グループの「w-inds.」(ウィンズ)のコンサートに来ていた高校1年の少女(15)=大阪市住吉区=と同級生の少女(16)=同西区=が、6人組の女に暴行を受け、現金計約6万円を奪われた。
事件はともかく、気になるのはこの記載。
6人組はいずれも18歳前後とみられ、うち2人はハムスターやカンガルーのぬいぐるみ付きの帽子をかぶっていたという。
「ハムスターやカンガルーのぬいぐるみ付き帽子」……。どんなんだ。
こんな感じの帽子なんでしょうか。こんな帽子かぶって暴行というのも間抜けな気がする。そういえば「レッサーパンダ男」なんてのもいたな。
こういう記事が出ると、「キチガイを世に放つなんて、坂口厚相はろくなこと考えねえな」などという反応を示す人がいて、それはわからなくはないのだけれど、精神障害者の社会復帰の問題と犯罪の問題とは別個の話であり、いっしょくたにすべきではないでしょう。精神障害者がすべて犯罪者予備軍ではないし、実際、犯罪など起こすことはまずないというのに、引き取り手がないとか、行き場がないというだけの理由で長年(何十年も)入院しているという患者がたくさんいるのだ。病床を削減するというのはつまり、そういう病状の安定した慢性患者を地域社会でケアできるようにしようということであって、重症で犯罪を起こす可能性のある患者まで退院させようということではない。
ただ、精神障害者の早期の社会復帰自体は進めていくべきだと思うのだけれども、病床削減自体が目標になってしまうのはどこかおかしいと思うのですね。必要なのは、退院した患者たち(長期入院により生活能力が極端に低い人が多い)を地域で受け入れる受け皿だ。
受け皿がきちんと整備されないままに病床削減だけが行われた場合どうなるかは、アメリカの例をみればよくわかる。アメリカでは、1963年にケネディ大統領が、今後精神障害者は施設ケアに代わって地域ケアによって治療されると宣言。病床削減政策により、州および郡の精神病院の患者数が、1955年の55万9千人から、1970年には33万8千人に、さらに1988年には10万7千人へと、80%以上も低下したのだけれど、どうも当時のアメリカ政府は、長期入院患者を退院させさえすれば地域に溶け込んで生活していけるという非現実的なまでに楽観的な見通しを抱いていたらしく、地域でのケア体制はまったく整っていなかった。その結果起きたのは、
・ほとんどの患者が服薬遵守ができず、各種の精神療法、リハビリテーション治療も受けられない状態で暮らしている。
・自分が病気であることを否認している。
・慢性重症精神障害者でありながら特別の援助を受けられず、一般社会の中で健康人のメンタルヘルス・システムの中に入り込んでいる。
・ほとんどの患者が、原発の精神疾患以外にアルコール薬物乱用などの状態を併発していて、複数の精神障害を抱えている。
・慢性重症精神障害者の大多数が、ホームレスや刑務所の囚人となっている。
という事態。なんでもアメリカではホームレスの3分の1が、まともな生活を送れず、庇護や仕事を見いだせない精神病者であり、郡の監獄の収容者の14%が以前に精神科治療を受けたことがあったとか。
社会復帰政策が比較的成功したといわれているイギリスでも、オイルショックのあおりやサッチャー政権での社会福祉への予算締め付けにより地域ケア計画が遅々として進まない中、精神病床の削減だけは計画通り継続されたおかげで、精神障害者のホームレス化は避けられなかった。
社会復帰には、その前に受け皿となる社会復帰施設を充実させないといけないし、デイケアや訪問看護、病状悪化時の救急診療体制など、まだまだ不十分なサービスはたくさんある。数値目標を決めるなら、病床削減数なんかじゃなく、そっちの目標を掲げるべきでしょう。でも、実際には、厚労省:精神障害者の社会復帰施設新設 補助、6割しか認めず−−財政難理由にの記事のように、なんだかちぐはぐなことになってしまっているのだけれど……。社会復帰施設に予算を充分に回さなければ、アメリカやイギリスの二の舞になるのがオチだろうけれど、この不況下に潤沢な予算を回すことができるのかなあ。
おとといのハムスターやカンガルーのぬいぐるみ付き帽子については私もどんなものなのかいろいろ想像してはみたのだけれども、私の想像をはるかに超えた情報を掲示板でいただきました。着ぐるみギャル。これじゃないのか、というのですね。なんでも渋谷で流行っているらしいのだけど……ほんとにこんなのが流行ってるんですか。そしてこの季節に暑くはないのか。しかし、この着ぐるみを「ぬいぐるみ付き帽子」と表現するのは、いまさら食玩を「おまけつきお菓子」と表現するようなものだと思うのだけれど。
しかし、着ぐるみが流行っているということは、類家明日香は、時代に一歩先んじていたということでしょうか。
『ザ・グリード』が海洋モンスター映画の佳作だったので、その後のスティーヴン・ソマーズ監督作品はいちおう追いかけているのだけれど(といっても『ハムナプトラ』2作しかないが)、『ザ・グリード』で見せた才気はどこへやら、作品を重ねるごとにどんどん凡庸なファミリー向けアクション映画になっていくのが哀しいかぎり。そして、この作品もやっぱり下がりきった期待値を裏切らない出来の映画。
だいたい、人物造形が『ハムナプトラ』シリーズそのまんまというのはどうかと思う。ヴァン・ヘルシングは凄腕のモンスターハンターのわりには情けないほどに手際が悪く、体力だけが売り物という『ハムナプトラ』のブレンダン・フレイザーとそっくりの役だし、勝ち気なアナ王女もレイチェル・ワイズの役に瓜二つ。コミック・リリーフのカール(演じるは、ファラミアの中の人デヴィッド・ウェンハム)は、ジョン・ハナの役の縮小再生産。
オープニングで往年のユニヴァーサル・モンスター映画に敬意を表しているあたりはいいのだけれど、いくらアクション映画だからといって整合性を無視して勢いだけで押していく作劇にはなじめないし(吸血鬼の親が死んだら子も全部死ぬってどういうことですか。それじゃ子孫残す意味がないのでは)、クライマックスがCGモンスター同士の大決闘ってのは正直どうかと思います。
あと字幕で、"werewolf"を「ウルフマン」と訳すのはやめてほしかった。「人狼」せめて「狼男」と訳してほしいところ。あと、せっかくドラキュラが"All Hallow's Eve"と言ってるんだから、ここは「ハロウィーン」じゃなくて「万霊節の夜」と格調高く訳してほしかったのだけれど……これは無理か。
どうでもいいが、観てる間中、ドラキュラが斉木しげるに見えて仕方ありませんでしたよ。
あと、微妙にネタが小林泰三『ネフィリム 超吸血幻想譚』とかぶっている気がしました。
まあ、精神病院で当直をやってると、自分や家族が119に電話して、救急車で運び込まれてくる人もけっこういるのだけれど、だいたいは安定剤の筋肉注射を打つか、なにもせずに少し横になって落ち着くのを待てば帰れるようになる患者さんが大半だ。救急車で病院についたとたんにけろっとしてしまい元気そうに見える人だっている。それはいってみればこの記事で言う「昨年は生命に危険がない軽症者と中等症者が全体の9割以上を占めた」の部類に入るようなケースではあるのだけれども、それが緊急性がなかった、とは私にはとても断言できない。生命に危険があるなしに関わらず、患者さんにとってはそれは確かに緊急だったに違いないのだ(搬送してきた救急隊の人が所定の用紙を持っているので、患者を診察した医者は「軽症で入院の必要がない」「生命の危険はないが入院が必要」など、いくつかの選択肢の中からひとつ選んで丸をつけるようになっている。この「9割以上」という数字もそこから算出したのだろう)。
「都は、緊急度が高くない利用については、利用者に負担を求める「一部有料化」の導入可否について、今後、検討せざるを得ないとしている」というが、緊急度が高いか高くないかなんてのは、当の本人以外に判断のしようがないわけで、こちらからみれば「なんでこんなことで救急車を呼ぶんだ」と腹が立つようなことがあったとしても、それが切実なエマージェンシーコールであるということは珍しくはない。精神科では生命の危険と緊急度は、必ずしも一致しないのである。だいたい、生命の危険があるような患者は救急車など呼ばない。重症か軽症かだけで切って単純に有料化などしないよう切に願う次第である。頼みますよ、医療や福祉に冷たい石原都知事。
6日に書いた、「精神病床7万床削減へ、早期の社会復帰を促す…厚労省」についても、けっこう長い文章を書いていたのだけれど、書いてる途中に全部消えてしまってショック。
参考に、表だけ載せておきます。日本の精神病床数がいかに多いかがわかるはず。日本の全病床の約2割が精神病床なのだ。
年 | 日本 | 米国 | 英国 | 旧西ドイツ |
---|---|---|---|---|
1960 | 10.1 | 40 | 9.6 | |
1965 | 17.6 | 35.5 | 30 | 19.5 |
1970 | 23.8 | 25.9 | 25.6 | 20.4 |
1975 | 24.8 | 15.6 | 21.2 | 20.3 |
1980 | 26.2 | 9.4 | 18.6 | 19.7 |
1985 | 27.7 | 7.2 | 16.1 | 19.7 |
1990 | 29 | 6.4 | 13.2 | 16.5 |
『オーディション』『漂流街』『カタクリ家の幸福』の3本をセットにした海外版DVDなのだけれど、高橋みいけって誰ですか。その字は違うって誰か教えてやらなかったのか。
100歳。まだ存命だったとは驚き。
とにかく細密なタッチで妖艶な剣士の絵を描く画家なのだけれど、伊藤一刀斎の末裔ってのが凄い。ウェブにはあんまり大きな絵がないのだけれど、こういう絵を描く方です。いずれ弥生美術館で開かれるだろう追悼展に期待。