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更新日: 2004/11/14


2004年 10月上旬

2004年10月5日(火)

5秒ルール

 掲示板で狩野宏樹さんから教えて頂いたのですが、昨年9月7日の日記で紹介したシカゴの高校生ジリアン・クラーク嬢が、イグ・ノーベル賞公衆衛生賞を受賞したそうです。なんでも最年少受賞だとか。
 ジリアン嬢が研究したのは「5秒ルールの科学的有効性」。「5秒ルール」というのは「床に落ちた食べ物でも落として5秒以内ならきれいなので食べられる」という根拠不明のルールのこと。日本では3秒が一般的だけど、アメリカじゃ5秒ルールらしい。
 ジリアン嬢の萌え写真がどこかにないかと探したら、ありました。一見、ごく普通の黒人の女の子であります。
 ジリアン・クラーク嬢は今では高校を卒業し、ワシントンにあるハワード大学1年生。10月2日には、マサチューセッツ工科大学(MIT)で、この研究について講義をしたのだという。いったいどんな講義だったんだろう。

[読書]大石圭『オールド・ボーイ』(角川ホラー文庫)
オールド・ボーイ オールド・ボーイ』 文庫
角川書店(角川ホラー文庫)
著者:大石 圭(著)
発売日:2004/09, 価格:\620, サイズ:15 cm

--出版社/著者からの内容紹介--
タランティーノ絶賛! 本年度カンヌ映画祭グランプリ受賞作を完全小説化!
1988年のある日、ごく平凡な人生を送っている男、オ・デスは、妻とかわいい娘と暮らす家の目の前で誘拐された。。。15年にわたり監禁された男の命を賭けた復讐劇!!

 カンヌでグランプリを受賞した韓国映画のノヴェライズ。ではあるのだけれども、これはすっかり大石圭の小説になってます。絶望的なまでに孤独ではあるけれども自虐に走らず強い意思を持ったキャラクターを描くのは、作者の得意とするところだし、特に主人公を15年間も監禁するイ・ウジンのキャラクターなんて『自由殺人』の黒幕の金持ちそっくり。物語の展開にしても、まるで大石圭のオリジナル作品であるかのよう。
 まあ、海の向こうのジョン・ソールと同じく(最近はソールも違った傾向の話を書くようになったようだけど)同じような話ばかり書き続けている金太郎飴作家ではあるのだけれど、大石圭作品の持つ、おぞましさとすがすがしさがないまぜになった不思議な読後感には捨てがたいものがあります。

2004年10月6日(水)

[映画]ヘルボーイ

 世界を触手天国にしようと企むくねくね団と戦う全身真っ赤な地獄小僧のお話。触手パラダイスと化した世界の風景を幻視するシーンがうっとりするほど素敵です。それ以外にも地獄の猟犬から深宇宙から召還された邪神に至るまで触手キャラが大活躍するので、触手マニアは必見の映画であります。
 映画としてもかなりしっかりとした作りになっていて、最近のアメコミ原作ものの中では『スパイダーマン2』に次ぐ出来。見かけからしてあまりにも異形で最初のうちは馬鹿馬鹿しく見えてしまうヘルボーイなのだけれども、性格や日常の描写がしっかりしているのですぐに気にならなくなるし、短いシーンの中で脇役に至るまでのキャラクターをきちんと立てているあたりの脚本もうまい。
 ロン・パールマンはこれ以上ないほどのはまり役だし、じっとりと暗い目をしたセルマ・ブレアも自然発火少女にぴったり。やっぱりアメコミ映画は原作のファンに撮らせるに限りますな。

[読書]谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』(角川スニーカー文庫)
涼宮ハルヒの憂鬱 涼宮ハルヒの憂鬱』 文庫
角川書店(角川スニーカー文庫)
著者:谷川 流(著),いとう のいぢ(イラスト)
発売日:2003/06, 価格:\540, サイズ:15 x 11 cm

--出版社/著者からの内容紹介--
第8回スニーカー大賞〈大賞〉受賞作、登場!

校内一の変人・涼宮ハルヒが結成したSOS団(世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団)。ただ者でない団員を従えた彼女には、本人も知らない重大な秘密があった!?第8回スニーカー大賞〈大賞〉受賞作登場!


 『トンデモ本? 違う、SFだ!』で山本弘が紹介していたので読んでみたのだけれど、なるほどこれは面白い。
 「どうしてこの世界はこんなに平凡なの? どうして宇宙人も超能力者も謎の転校生もいないの?」という、SFファンなら実によく共感できる憤りからはじまって、あれよあれよというまに話が転がっていき、人間原理や5分前宇宙創造説まで持ち出してしまう風呂敷の広げっぷりがすばらしい。ライトノベル版グレッグ・イーガンとでもいいましょうか。
 長さの割りにはかなり密度の濃い話で、クライマックスはいささか唐突にも思えるのだけれど、主人公とハルヒは互いに響き合う存在であることがプロローグですでに示されているわけで、これはこれでいいのでしょう。
 『ハイペリオン』がわりと重要な小道具として登場するあたりとか(最後まで『ハイペリオン』というタイトルは出てこないのだけど判る人には判る仕掛けになっている)、「でっかい透明なエンドウ豆のサヤに入れられている少女」などの比喩表現だの、SFファン向けのくすぐりもいろいろ(語り手が特にSFファンではないという設定からすると、こういう表現が頻発するのは変なのだけど)。
 しかし、この作品のラストで物語としてはすでに完結してしまっているわけで、今後いったいどういうふうに続けていくのやら。単なるキャラクター小説としてならいくらでも続きは書けると思うのだけれども、そういうふうになってしまうのなら、あんまり読む気がせんなあ。

[読書]谷川流『涼宮ハルヒの溜息』(角川スニーカー文庫)
涼宮ハルヒの溜息 涼宮ハルヒの溜息』 文庫
角川書店(角川スニーカー文庫)
著者:谷川 流(著),いとう のいぢ(イラスト)
発売日:2003/09, 価格:\540, サイズ:15 x 11 cm

--出版社/著者からの内容紹介--
スニーカー大賞〈大賞〉受賞作、早くも第2弾登場!!

季節は文化祭のシーズン。ありきたりな"お祭り"では飽き足りない涼宮ハルヒはSOS団の面々を使いまくり、自主映画の制作を開始する。当然のごとく、ハルヒの暴走はとどまることをしらず……。超話題作の第2弾!!

爆進中!NO.1 第ベストセラー第2弾!!


 というわけで、前作読了時の悪い予感が当たった第2巻。
 前作同様、「無自覚な宇宙の特異点」たる涼宮ハルヒをめぐるドタバタ劇、ではあるのだけれど、これでは前作を縮小再生産しただけではないですか。今回は文化祭向けの映画を撮る話なのだけれども、映画だなんて、前作では宇宙人や未来人にしか興味がないと傲然と言い放っていたハルヒ様とも思えない。肝心の映画作りの結末にしても、尻すぼみの感は否めません。
 SF的にも見所は少なくて、陣営によってハルヒ現象のとらえ方が違っていて、その上宇宙観自体も違っているらしい、という、イーガンの「ルミナス」みたいなネタがさらりと出てきたときには「おお」と思ったものの、本当にさらりと触れられただけで終わってしまったし。前作では多かったSF小ネタも今回は少なめ(「カエアン製の衣装かと思ったほどだ」などというマニアックなネタはあったが)。次巻は短篇集だそうだけれど、読むかどうか思案中。

2004年10月8日(金)

[読書]谷川流『涼宮ハルヒの退屈』(角川スニーカー文庫)
涼宮ハルヒの退屈 涼宮ハルヒの退屈』 文庫
角川書店(角川スニーカー文庫)
著者:谷川 流(著),いとう のいぢ(イラスト)
発売日:2003/12, 価格:\540, サイズ:15 x 11 cm

--出版社/著者からの内容紹介--
No1ヒット爆進中! 「涼宮ハルヒ」シリーズ、第3弾登場!!

涼宮ハルヒの「退屈」の一言で、野球チームを結成し、七夕祭りに盛り上がり、行方不明者捜索に駆り出され……ついに殺人事件に巻き込まれた俺には、退屈なんて言い出すヒマも無いさ――。大人気シリーズ第3弾登場!!


 2巻が今ひとつだったので続きはどうしようかなあ、と思っていたのだけれど、掲示板でも薦められ、おまけに山岸真さんにまでメールで強く薦められてしまったので読むことにしました。ちなみに山岸さんも『涼宮ハルヒの憂鬱』はライトノベル版グレッグ・イーガンだという私の意見に同意だそうです。
 さて3巻は、シリーズ初の短篇集なのだけれどもこれまた2巻同様今ひとつ。涼宮ハルヒが退屈すると世界がとんでもないことになってしまうので、周囲の人々は退屈をまぎらわさなければならない、という関係は、暴君シャーリヤール王と語り部シェヘラザードの関係にもちょっと似ている。
 千一夜物語で物語を終わらせたのがシェヘラザードの王への愛であったように(なんせ結末ではいつのまにか子供が3人もできているのだ)、このシリーズでも物語の鍵となるのが主人公のハルヒへの愛であることは、すでに1巻の終わりで示されている。それにもかかわらず、2巻3巻とラヴ要素にまったく進展がないどころか、1巻終わりの時点から後退しているように見えるのがどうも釈然としないところである。
 どうでもいいが、ハルヒという名を見るたびに相曽晴日と『はるひワンダー愛』(辻真先)を、みくるという名を見るたびに某SF翻訳家を思い出します。

[読書]谷川流『涼宮ハルヒの消失』(角川スニーカー文庫)
涼宮ハルヒの消失 涼宮ハルヒの消失』 文庫
角川書店(角川スニーカー文庫)
著者:谷川 流(著),いとう のいぢ(イラスト)
発売日:2004/07, 価格:\540, サイズ:15 x 11 cm

--出版社/著者からの内容紹介--
人気NO.1! ハルヒシリーズ絶好調第4弾!!
クリスマス目前の、あの日の朝、何かがおかしい感じがしたんだ。いつもの教室、いつもの席。だけど俺の後ろの席にハルヒはいなかった。ビミョーに非日常系学園ストーリー、衝撃の第4巻! キョンの苦難は続く!!

 前作までの不満を一気に解消する傑作。1巻目とはまた違ったスタイルのSFの大ネタをみごとに駆使しております。
 いわば、うる星やつらの「君去りし後」にあたる巻で、ベタといえばベタなんだけど、これまでの巻での出来事(特に3巻の短篇)がきちんと伏線として機能しているのが巧い(どこまで最初から考えていたのかはわからないが)。初期の巻にあった、一般性の薄いマニアックなSF小ネタが影を潜めたかわりに、ストーリーそのもののSF度がぐんと上がってきているのもうれしい。
 ラヴ要素もきっちりと進展して、2巻3巻ではいささか迷走していたシリーズの方向性が固まってきたような印象があります。最後には、ついに主人公が「宇宙で唯一ハルヒを制御できる存在」という己の存在意義を自覚してしまってるし。

[読書]谷川流『涼宮ハルヒの暴走』(角川スニーカー文庫)
涼宮ハルヒの暴走 涼宮ハルヒの暴走』 文庫
角川書店(角川スニーカー文庫)
著者:谷川 流(著),いとう のいぢ(イラスト)
発売日:2004/09/28, 価格:\540, サイズ:15 cm

--出版社/著者からの内容紹介--
「涼宮ハルヒ」シリーズ、絶好調の第5巻!
思えばハルヒに振り回された一年間だったわけだが、遊びすぎな夏休み、パソコン部の逆襲、そして命懸けの冬休みまで味わった俺は、来年の苦労を思うと封印した言葉が出そうになるよ……。絶好調シリーズ第5弾!

 またもや短篇集だけれども、2巻に比べて安定した出来。SF度の高さも前作に引き続き持続中。時系列がきちんと設定されていて、どの作品にも細かい伏線があってストーリーが少しずつ進んでいるところにもSF心がくすぐられます。
 「エンドレスエイト」はバカSFだし、「射手座の日」は『消失』の前日譚、「雪山症候群」は、伏線のカタマリのような作品で、これを読む限りまだまだシリーズは続きそう。古泉の語る仮想現実話なんて、実にこれがまたイーガンっぽくて、作者は相当のSF好きとみた。ハルヒとキョンが二人で屋敷を探索している場面のように、いつもわがままなハルヒの本音がぽつりと語られるエピソードもいいですね。
 3巻あたりまではみくるが萌えキャラとして前面に出ていたけれど、このあたりになるとすっかり有希がメインになり、むしろみくるの役立たずっぷりが強調されてますな。1巻の頃はもっとまともだったのに。その役立たずな萌えキャラであることにも実は意図が隠されている、ということが3巻あたりの古泉の台詞でほのめかされていたけれど、作者はいったいどこまで計算しているのやら。

[読書]栗本薫『ノスフェラスへの道』(ハヤカワ文庫JA)
ノスフェラスへの道―グイン・サーガ 97 ノスフェラスへの道―グイン・サーガ 97』 文庫
早川書房(ハヤカワ文庫 JA (769))
著者:栗本 薫(著)
発売日:2004/10, 価格:\567, サイズ:16 cm

 マリウスとシルヴィアという2大困ったちゃんについて協議するお話。とにかく最初から最後まで長台詞が続く巻ではあるのだけれど、オクタヴィアの独白がいくらなんでも長すぎ。同じような繰り言ばかり延々と繰り返すのはどうかと思いますよ。
 タイトルには偽りあり。最後の最後に、ようやくノスフェラスに向けて出発するだけです。

2004年10月10日(日)

[映画]デビルマン

問1.あなたは同級生の女の子の家に居候しています。あるとき、彼女のお父さんと一緒に稲刈りしていたら、あなたが実は悪魔であるという証拠を見られてしまいました。それでも彼女のお父さんはあなたを信じると言ってくれています。あなたは何と答えますか?

問2.家の周りを暴徒の群れが取り囲んでいて、部屋の中には夫とふたりきり。暴徒が今にも窓ガラスを破って襲いかかってきそうなとき、夫とともにここで死ぬ覚悟を決めたあなたは、夫に何と声をかけますか?

問3.あなたは高校生の女の子。2階の部屋で一人隠れています。あなた一人を逃がしてくれた両親が、階下で暴徒の群れに立ち向かい、おそらくは殺されようとしているまさにそのとき。あなたなら何と呟きますか?

 この映画で彼らが口にしたのは、私の予想をはるかに超える台詞なのだった。

答1.「お父さん!」
答2.「あなた、浮気したことある?」
答3.「明くん」

 とにかく脚本もダメだし演出もダメ。役者の演技はもっとダメ(その中では、ミーコ役の渋谷飛鳥はまあまあ悪くない)。舞台といえば学校とショッピングモールと牧村家のご近所くらいのもので、世界情勢は台詞で説明されるだけ。最終戦争もCGサタンとデビルマンのどつきあい。なんともスケールの小さい映画ですね!
 「お前たちこそ悪魔だ!」という重要な台詞を、明ではなくミーコが叫ぶ(しかも、そのあと、デーモンの力ではなくユマ・サーマンもどきの日本刀さばきで悪魔特捜隊を叩き切る)という改変にはいったい何の意味があるのか。原作最大の名シーンであるヒロインのあれは一応あるにはあるのだが、明の人間に対する深い絶望が描かれないので、まったく意味をなさないものになってしまっている。
 ……この映画はなかったことにして、誰かもう一度まともな監督と脚本で作り直してくれませんか。


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Written by Haruki Kazano