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サイコドクターあばれぶらり旅
あばれあばれて七年余
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風の吹くままぶらり旅
嗚呼サイコドクター何処へゆく

2006-03-12 [Sun]

短篇「二つの道」を翻刻 Gg[ubN}[N

 さて島清ファンサイトなのだけど、本人の書いた小説作品がないのは淋しいので、「二つの道」という短篇を翻刻してみた。作者本人をモデルにした思想家北輝男と、丘という旧友の対話が軸になっていて、島田の社会問題への関心を反映した作品である。

 丘という人物のモデルは、後に「島田清次郎君の発狂」を書いた中山啓で、二作を読み比べてみると島清がいかに自分を美化し、都合の悪いところは書いてないかがわかってなかなか面白い。

 たとえば、中学時代の柔道について中山啓は

中学は同じ金沢の第二中学で、僕が四年の時に彼は一年生で、よく柔道をもんでやつたものであつた。その時分は全く小さな子供であつたが、きかぬ気の男で、やたらに負けるのが嫌で、投げると武者ぶりついて来る男であつた。

 と書いているのに対し、島田の小説では、丘にこう語らせている。

『――僕、丘です、あの柔道をやつた丘直太郎です。……何年位会はないだらう。六年にもなるかしら、僕はおぼえてゐる。級仕合に君に負けた口惜しさから君をあの桜の並木で袋たゝきにしたことをおぼえてゐる。うん、あれから、もう君は学校へ出なかつたが、あれから――どうしてゐたか?』

 島田清次郎は『地上』が出る前後、住む場所にも困って一時中山啓の家にいたそうだが、中山啓は当時の島田についてこう書いている。

 僕の家に来た時は乞食のやうな、なりをして居り、体から乞食のやうな臭気を発するので、それをすつかり洗濯をし、僕の衣物なんかを着せて、どうにか不自由のないまでにしたのである。

 いよいよ『地上』が出て、名声があがると、島田式と云ふ高慢が芽を現はして来たので、家に居ると僕や妹や僕の両親を、全く奴隷視する様になり、『お前の家に居てやるのを光栄とおぼえろ』とか、何とか云ふ変な事を云ひ出したのである。

 両親からも抗議が出、妹からは手を握るの、何のと云ふ抗議が出、何だつたかつかの機会に、余り乱暴な事を云ふので、僕も堪忍袋の緒をきつて、家の外へ投げ出してしまつたのである。彼は衣物の泥を払ひもせず、おぼえて居ろと立ち去つて、車屋に荷物を取りに寄させて、ドコかへ移つてしまつた。

 まあこうしたことがあって島田も中山啓に腹を立てていたせいか、小説の中の中山をモデルにした丘の描写はひどいもの。

額は狭く、低く、偏狭だが頭蓋の中央は高く、石塊のやうにもれ上り、短い太い眉毛の下の窪んだ瞳はどうかすると三角形になるほど引きしまつて病的に輝き、下顎は角ばり、歯の出た、熱情が固く岩のやうに凝結してしまつた顔容である。熱情家の自己感の強い男が、世間に苦しめられ、裏切られて、偏屈者にこりかたまつたといふ感じだ。どうかするとたしかに人を殺せる男になつたな、この丘君は、と彼は考へた。

 いくらなんでもこれはないんじゃないか。

 さらに、島田が手を握ったという中山の妹は「二つの道」では売春婦として登場。実際どうだったかは知らないが、これも事実ではないんじゃないかと思う。

 しかも、物語の最後に、丘(中山)は、「僕の代りに、せめて君だけでも偉くなつてくれ、たのむよ、たのむよ」と手を合わせて北(島田)に哀願するのである。ある意味、小説という形をした復讐ともいえるかもしれない作品である。

 

 今回の島清様語録。

でも、人類と云ふ生物全体が、同情すべき生物ではないのかしら。

僕は永久の強者で僕は永久の勝利者なんだから、僕の仲間入りするところは常に月桂冠が輝やくのだ。

僕は君達より生じて、君達を超越したもの、君達は憎むのが役目で、憎まなくてはならない。しかし、僕は憎まなくともよいのですよ。僕にはそんな必要がないのだからね。

 なんか、仮面ライダーカブトの「天の道を往き、総てを司る男」天道総司みたいだ。

Tags: 島清
本日のツッコミ(全5件) [ツッコミを入れる]
_ (2006-03-13 [Mon] 18:33)

初めまして <br>いつもblog見てます <br>よろしくお願いします☆<br>http://d.hatena.ne.jp/houseki2/

_ satoseijun (2006-03-13 [Mon] 22:31)

初めまして。いつも面白く拝見しております。<br>天道総司みたいだと私も思っていたので、なんだか嬉しいです(笑)島清のことはこちらで初めて知りましたが、いちいちかっこいいですね。

_ gill de la touret (2006-03-13 [Mon] 23:54)

医学生です。いま流行のアスペルガー大人版で確定診断。

_ ホッタ (2006-03-16 [Thu] 15:45)

「二つの道」を読みました。<br>苦笑、失笑の連続で充分楽しめました。<br>とにかく物書きらしい主人公のやみくもに偉そうな思考描写が素晴らしいです。あきらかに丘君を見下していながら、彼らに同情してるフリをする偽善者ぶりがイカすなぁ。今後の作品復刻を期待します。

_ Cialis (2007-07-23 [Mon] 18:58)

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