«前の日記(2010-09-25 [Sat]) 最新 編集
サイコドクターあばれぶらり旅
あばれあばれて七年余
あばれつかれて撃ち果てて
風の吹くままぶらり旅
嗚呼サイコドクター何処へゆく

2010-09-28 [Tue]

行ってみたい世界の精神病院さらに10選+1 Gg[ubN}[N

 好評だったので第2弾。見応えのある精神病院建築はまだまだあります。

 そして今回はちょっと精神医療の暗部に関わるエピソードも。

11. ベルビュー精神病院(アメリカ)

image  ニューヨークにある、1736年設立のアメリカ最古の公立病院。精神科部門がもっとも有名で、ニューヨークでは「ベルビュー」といえば精神病院を指すほど(東京人にとっての「松沢」みたいなものか)。サックス奏者のチャーリー・パーカー、女優のイーディ・セジウィック、作家のノーマン・メイラー、ジョン・レノンを殺害したマーク・チャップマンなど、ここに入院した有名人も多い。

12. ビーチワース・アサイラム(オーストラリア)

image  アサイラムはイギリス、アメリカに多いが、オーストラリアやニュージーランドなど、イギリスの植民地だった地域でも盛んに建設された。ビーチワース・アサイラムは、1867年、ヴィクトリア州ビーチワースに建てられたアサイラム。200エーカー(東京ドーム17個分)の広大な敷地に57の建物が建てられ、ピーク時には1200人の患者が入院していた。1995年に閉鎖された後は民間の会社が購入。現在は毎晩幽霊ツアーが行われている。

13.ギスラン精神病院(ベルギー)

image  ベルギーの古都ゲントにある精神病院。ギスランは19世紀の精神科医でベルギーで初めて精神医学の教科書を書いた人物。この病院はギスラン自らが設計して、1857年に建設されたもので、ベルギー初の近代的精神病院だった。建物の一部は今も精神病院として使用されているが、一部はギスラン博士博物館として公開されている。

14.ファーガス・フォールズ州立病院(アメリカ)

image  カークブライドのプランに基づいて全米に建てられたアサイラムのひとつで、Warren Dunnelの設計により1888年に建設が始まり1906年に完成した。ミネソタ州に作られた3つめのカークブライドスタイルの病院である(あとの2つは現存しない)。農作業や運動に使える広大な敷地と、中央に築かれた高い塔、そして大きく翼を広げたような左右対称の設計がカークブライド形式の特徴。1937年には2000人以上の患者が入院していた。

 現在は地域医療センターとして使われていて、薬物依存などの治療が行われている。

 アメリカのカークブライド形式のアサイラムについては日本ではあまり知られていないが、本国にはKirkbride Buildingsというファンサイトがあり、現存する建築物の美しい写真を見ることができる。

15.ハイロイズ病院(イギリス)

image  ヨークシャー州メンストンという人口5000人弱の小さな村に1888年に建設された病院で、当初は"West Riding Pauper Lunatic Asylum"と呼ばれていた。病院の中には図書館や診療所(内科の、ということだろう)、薬局のほか、肉屋、牛乳屋、パン屋、菓子屋、靴の修理屋、ダンスホールまであり、さらに近くの駅との間に線路まで引かれているなど、ひとつの街といっていいほどだったが、世界的な精神医療の脱施設化の流れに伴い患者は少なくなっていき。2003年に閉鎖。

 パトリック・マグラア原作の2005年のイギリス映画『アサイラム/閉鎖病棟』はこの病院で撮影された。また、カサビアンというロックバンドの"West Ryder Pauper Lunatic Asylum"というアルバムは、この病院の名前からとったもの。

 現在は公開されていないが、不動産屋が「ハイロイズ・ヴィレッジ」という名前の集合住宅として売り出そうとしているようである。

 イギリスのアサイラムについては、TheTimeChamberCounty Asylumsというサイトが写真も多くよくまとまっている。特に前者のサイトの空撮写真は圧巻。

16.カール・ボンヘッファー神経科クリニック(ドイツ)

image  ベルリン北部に17世紀からあった病院だが、現在の建物は1880年に完成したもの。精神障害者を治療するためではなく隔離するための施設で、18世紀には500人の精神障害者を収容していた。Dalldorf病院、Wittenauerクリニックなど何度も改名して現在に至っている。

 ヒトラー政権下では、病院スタッフはナチスのT4作戦(精神障害者安楽死計画)を忠実に実行し、1938年から1945年の間に4607人の患者が死亡した。ほとんどの患者は入院から20日以内に亡くなっている。

 1957年には戦時中の悪いイメージを払拭するためか、カール・ボンヘッファー神経科クリニックと改名(ベルリン市民がつけたあだ名はボニーズ・ランチ)。カール・ボンヘッファーはベルリン大学医学部教授でドイツ精神医学の重鎮なのだが、ナチス支配下で精神障害者の断種に積極的に関わったことが後に判明したことから(ちなみに息子のディートリッヒ・ボンヘッファーは神父で、ヒトラー暗殺計画に荷担してナチスに処刑された)、90年代にはまたもや改名の機運が盛り上がった。1998年には前年に亡くなった有名人の名を取ってレディ・ダイアナ・クリニックと改名する動きがあったが、定着はしなかったよう。だって、どう考えてもダイアナと関係ないし。

17. ピティエ・サルペトリエール病院(フランス)

image  精神医学を少しでも学んだ人でサルペトリエール病院を知らない人はモグリと断言していいほど有名な病院。設計は17世紀の建築家リベラル・ブリュアンで、もともとルイ13世の火薬庫だった建物を転用して作られた(サルペトルとは火薬の原料である硝酸カリウムのこと)。フランス革命前には10000人の精神障害者と300人の囚人、そして多数の娼婦を収容していた。

 19世紀にはヨーロッパの精神医学の中心地となり、神経学の父シャルコーの臨床講義を聞くため、外国からも聴講生が集まった。若き日のフロイトもそのうちの一人。

 現在はヨーロッパ有数の総合病院になっていて、アラン・ドロン、ミハエル・シューマッハ、シラク元大統領など多くの有名人がここで治療を受けた。ダイアナ妃が搬送されて亡くなったのもこの病院。

18.チェリイ・ノウル病院(イギリス)

image  これもヴィクトリア朝に建てられたイギリスのアサイラムの一つ。イングランド東北部にあるサンダーランド市郊外のライオープという小さな村にある病院である。1895年に建築家ジョージ・トマス・ハインの設計で建てられた。病院内にはチャペル、プール、体育館があり、中央棟を挟んで男子病棟と女子病棟が左右対称に建てられていた。

 現在では画像の通り、創建時の古い建物は廃墟と化しているが、驚いたことに、一部の建物は今なお精神病院として使用されている。2007年2月には、この病院に長期入院していたグレアム・バートンという患者が、もし病院での会議にケアワーカーが出席したら殺す、と医師に語ったあと帰宅を許可され、その2日後にケアワーカーをめった刺しにして逮捕されるという事件が起きている(ケアワーカーの女性は5リットルの血を失ったがかろうじて命を取り留めたという)。

 写真は廃墟となっている中央棟で、病院のほんの一部。航空写真を見れば、この病院がいかに巨大に広がっているかがわかるだろう。

19.グレイストーン・パーク精神病院(アメリカ)

image  1876年にニュージャージュー州2つめの精神病院として作られた病院。サミュエル・スローン設計の建物は第二帝政様式で、62,589平方メートルの広さ。当初は292名の患者が入院していたが、1914人には2412名、1953年には7674名に達した。ここまで患者が増えたのは、第二次大戦から帰還した兵士がPTSD治療のため大量に入院したためとのこと。2000年には病院の閉鎖が決まったが、そのときにもまだ500名の患者が入院していた。患者の転院計画は予定よりかなり遅れ、最後の患者が他の施設に移ったのは2008年のことである。一部の建物はすでに取り壊されており、その他の建物もこの先どうなるかは不透明とのこと。

 こうした千人規模の入院患者を抱える巨大な公立アサイラムは19世紀のアメリカ、イギリスで多く建設されたが、土地の狭い日本では建てられることはなかった。その代わりに小規模の私立精神病院が乱立したのが、70年代以降の世界的な精神病院縮小の流れから日本だけ取り残された原因の一つ。

20. マクリーン病院(アメリカ)

image  マクリーン病院はマサチューセッツ州にある精神病院で、もともとは1811年にチャールズタウンという街にアサイラムとして作られたもの。1895年に同じ州のベルモントに移転し、マクリーン・アサイラムからマクリーン病院へと改名。写真の建物も1895年にコロニアル・リバイバル様式で建てられたもの。

 マクリーン病院は、現在ではハーバード大学の付属病院となり、アメリカでも有数の精神科病院として知られている。写真の建物は統合失調症、双極性障害の患者の入院病棟で、一見古そうに見える建物だけど内部はこんな様子。日本の精神病院とのあまりの違いにはびっくり。もちろんお金のある患者さんしか入れないのだろうけれど。

 マクリーン病院で治療を受けた患者には、ノーベル賞を受賞した数学者のジョン・ナッシュ(映画『ビューティフル・マインド』で有名)、レイ・チャールズ、マリアンヌ・フェイスフル、シルヴィア・プラスなどがいる。映画『17歳のカルテ』も、原作者のこの病院での体験をもとにしたもの。

番外 ヘルシンゲル精神病院(デンマーク)

image  最後に新しい精神病院建築をひとつ。

 シェイクスピアの「ハムレット」の舞台になったクロンボー城のある港町ヘルシンゲルに2006年に建てられた、斬新なデザインの精神病院。設計したのは、1974年生まれのBjarke Ingelsのグループ。ガラスが多くて一見明るそうに見えるが、放射状の構造はベンサムのパノプティコンの現代版なのかも。

 世界の精神病院をいろいろ調べていて驚いたのは、19世紀にイギリス、アメリカで建てられたアサイラム建築の美しさと、精神医学史用語かと思っていた「アサイラム」が、ほんのつい最近まで現役の病院として使われていたということ(中には現在も使われている病院もある)。

 すでに閉鎖されているアサイラムも多いが、街外れの巨大な建物(しかもイメージの悪い精神病院だし)は再利用しにくいのか、廃墟と化している病院も多く、廃墟ファンにはたまらない物件になっているようだ。ただし廃墟を放置しておくと治安の悪化を招くため、結局取り壊されてしまった建物も多く、きちんと保存されている建物は少ないのが残念。

 19世紀のアサイラムについてのまとまった本は、日本ではまったく出ていないので(過去の暗い歴史みたいに触れた精神医学史の本は何冊かあるけど)、洋書を何冊か買ってみた。

Asylum: Inside the Closed World of State Mental Hospitals Asylum: Inside the Closed World of State Mental Hospitals
Oliver Sacks
The MIT Press
¥ 3,510
アメリカの現存するアサイラムの外観や、廃墟となった内部を撮った写真集。これはお薦め。写真が美しくて見応えあり。オリヴァー・サックスが序文を書いている。

The Architecture of Madness: Insane Asylums in the United States (Architecture, Landscape and Amer Culture) The Architecture of Madness: Insane Asylums in the United States (Architecture, Landscape and Amer Culture)
Carla Yanni
Univ of Minnesota Pr
¥ 2,909
アメリカのアサイラム建築についての本。モノクロの古い図版多数。これから読む(かも)。

The Victorian Asylum (Shire Library) The Victorian Asylum (Shire Library)
Sarah Rutherford
Shire
¥ 658
イギリスのアサイラムについて書かれた本。まだ届いてない。

Tags: 医療
本日のツッコミ(全4件) [ツッコミを入れる]
_ 0 (2011-12-27 [Tue] 22:46)

<br><br>素敵ー´Д`

_ デミアン (2012-10-20 [Sat] 04:31)

始めまして。<br>サイコドクターあばれ旅の日記を読みました。お聞きしたいことがあるのですが。どうにか連絡を取りたいと思いまして、こちらからの投稿となりました。届いているでしょうか?

_ プーマ スニーカー 激安 (2014-11-27 [Thu] 10:57)

Do you have a spam problem on this blog; I also am a blogger, and I was wondering your situation; many of us have created some nice methods and we are looking to swap techniques with others, be sure to shoot me an email if interested. <br>プーマ スニーカー 激安 http://www.xtszb.com/products-jp-218.html

_ アディダス ゴルフシューズ (2014-12-20 [Sat] 06:26)

Please let me know if you're looking for a author for your weblog. You have some really good articles and I think I would be a good asset. If you ever want to take some of the load off, I'd love to write some content for your blog in exchange for a link back to mine. Please shoot me an email if interested. Cheers! <br>アディダス ゴルフシューズ http://www.apomac.com/products-mainicishop-71.html

[]