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更新日: 2004/10/06


2003年 11月下旬

2003年11月21日(金)

ビルゲイツの面接試験

 なんでもない数学パズルのつもりでいたのだけれど、意外な波紋を呼んでおります。今日はこんなメールが。

マイクロソフトの入社試験の件ですが、始めの「東に1キロ」の意味でも「歩く」と言っている以上、何者かが地上か氷上で「南へ1キロ、東へ1キロ、北へ1キロ歩く」ことが出来る箇所で、地球を楕円体と仮定していない以上、凸凹のジオイド面における方向であり、一歩一歩微妙に真北方向自体が変化し、数学的に解けないし、実際にも調べようが無いというのが測量をかじったことのあるものの解答ですが、どうですか?

 えーとジオイドって何だっけ。
 と思ったので調べてみました。なるほど。「ジオイド面」について正確に理解した自信はないのだけれど、つまりこれは、日々の憂鬱で書かれていた

たとえば、問題文のどこにも「地球は完全な球体であると考え、山や谷などの凹凸は無視すること」とは書かれていないが、当然そのような条件は暗黙のうちに示されているものと考えなければならない。

 とだいたい同じ意味合いだと思っていいのでしょうか(「ジオイド面」と「山や谷などの凹凸」は正確には違うのだろうが)。
 つまりこのような試験問題を出されたとき、回答者は、どこまでが暗黙の前提であり、どのような答えが期待されているのかを一瞬のうちに判断しなければならないわけだ。私のおとといの解答なんてのは、まさにその期待に沿った優等生的な解答にすぎなかったわけでしょう。発想の柔軟さを試されるパズルといえども、いやパズルであるからこそ、脱常識的な発想ではなく、何が前提になっているかを「常識的に考えて」判断しなきゃいけないわけですね。なんとも皮肉なことに。

アメリカ版とイギリス版

 日本でも山形浩生訳でおなじみの経済学者ポール・クルーグマン教授の新刊は、アメリカ版イギリス版では、表紙がちょっと違うらしい。

飲んだら乗るな

 目をそらさずに見るべきものだけれど、やはり食事時はよした方がいいです。

2003年11月22日(土)

[読書]神田橋條治 滝口俊子『不確かさの中を 私の心理療法を求めて』(創元社)

 神田橋條治は精神科医、滝口俊子は臨床心理士と立場は違うものの、どちらも精神分析にバックボーンを置く60代の精神療法家二人の対談集。神田橋條治というのは『精神科診断面接のコツ』などの名著を書いた精神科医でありまして、私は直接会ったことはないのだけれどすぐれた臨床家だと聞いております。
 特に一つのテーマがあるわけでもなく、現代の社会問題に触れるわけでもなく、なんとなくのほほんとしていて浮世離れした感のある本です。一見脈絡のない雑談の中からにじみ出てくる「何か」こそが、精神療法的なのかもしれないのだけれど。また、二人の知り合いらしい人の固有名詞がぼんぼん出てくるのだけれど、別に注釈も何もないので、誰のことだかさっぱりわからないのも難点。さらに対談者二人が対等ではなく、滝口氏も司会者も、神田橋先生をカリスマとして崇め奉るかのような態度なのが、読者としてどうも気持ちの悪いところ。
 この神田橋先生、何年か前に出した『精神科養生のコツ』という本ではO-リングテストを礼賛していて驚いたのだけれど、この本ではさらに占い師の領域にまで達していて、患者を前にしてその人を樹木として見ると、左上の空間に未来の雰囲気が出現し、右側には過去の雰囲気が出現する、というのですね。実際司会者相手に「未来にたくさん実がなっている」とか「幹に傷がある」とか言ってます。
 確かにすぐれた臨床家なんだろうけれど、ちょっとついていけないところも多いなあ。いや、もちろんいいこともたくさん言っているのですが。

中井久夫エピソード

 その本の中に出てきた、精神科の大御所中井久夫先生のエピソードがまたおもしろい。
 中井久夫は、大きな本棚に本を全部裏返しにして入れていたというのですね。なぜかというと、「本棚の本の背表紙が見えると、あの本にああいうことが書いてあったとかこうだったとか、いろいろと浮かんできてうるさくてしょうがないから」。「本を探すときどうするんですか」と聞いたら、「シミとか厚さとか紙の色とかがあるから、探すのにはそんなに困らない」と答えたとか。
 また、初めて同僚の先生とヨーロッパに行ったとき、「ああ、ヨーロッパってやっぱり実在したんですね。今まで本の中でしか知らなかったけれど、やっぱりあったんだ」と言ったとか。ここまではまだありがちなのだけれど、オランダの町を歩いていたとき、「あの橋から3軒目に古本屋がありますよ」と言うので行ってみると本当にあったという。「一度も来たことがないのにどうしてわかるんですか」と同僚の先生が訊いたら、「カフカの小説にそういうシーンが出てきた。カフカは作り話が下手な人だからきっと事実じゃないかと思った」とか。
 とにかくものすごい記憶力の人らしい。

2003年11月23日(日)

[映画]ラスト・サムライ

 えっと、笑うところはどこですか?
 日本ネタのハリウッド映画といえば笑いどころを探すものだと思っていたのだけれど、この映画は意外なほどツッコミどころが少なくてびっくり(皇居が小高い丘の上にあるところとか、勝元の村が地理的にどこにあるのかさっぱりわからないところなど、細かく見ればヘンなところは確かにあるのだけれど)。トムの日本語も最初はどうかと思っていたのだけれど、ルーシー・リューより違和感ないです。日本人が見てもそれほど違和感なく、素直に感動できる映画です。これはハリウッド映画としては画期的なことではあるまいか。いや、確かに忍者はちょっとどうかと思ったけど。
 渡辺謙演じる勝元は、西南の役の西郷隆盛あたりのイメージなんでしょうか(年代もだいたいそのあたりだし)。なぜ反乱を起こしたのか、なぜ鉄道を襲うのか、理由づけがあいまいであることなど、歴史ものとしてみれば不満も多いのだけれど、日本の大河ドラマみたいに細々とした史実に縛られないところがこの映画のよさですね。日本人が作ったら、幕末から維新にかけての歴史の説明に長々とした台詞を費やすところを、そういった煩雑な説明は最低限におさえ、おまけに史実も大胆に改変して、「侍の滅びの美学」というメンタルな部分だけに的を絞った単純で骨太なストーリーを作り上げてます。こういう映画は日本人には作れない。
 しかし、こういうシリアスな話の中でも、サムライ、ニンジャ、ハラキリ、フジヤマ、ゲイシャと外国人のイメージする日本的な要素をきちんと入れているあたりはさすがハリウッド(★★★☆)。

[ゲーム]新世紀エヴァンゲリオン2

 とりあえずファーストプレイ終了。シナリオ途中でアスカは死亡、映画版の展開通りネルフは自衛隊の攻撃を受け、初号機は復活した量産型9機にぼこぼこにされ、人類がひとつになって終了。続いてミサトで始めてみたものの、第7使徒あたりでエヴァが2機とも破壊され、使徒がネルフに侵入、アダムと使徒の接触でサードインパクトが起きて終了。むう。
 まあ、私が戦闘が下手なのはともかくとしても、日常の場面で伝達内容の一切欠落した空虚な「会話」を延々と繰り返さなければならないのはいささか骨が折れる。この「会話」がだんだんと「作業」としか感じられなくなってしまう私には、このゲームはあまり向いていないのかもしれない。
 このゲーム、オリジナル版の「世界の中心で愛を叫んだケモノ」にならってか、各話のサブタイトルには海外SFのモジリがいくつかありますね。私が確認したのは「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」(ハーラン・エリスン)、「血は異ならず」(ゼナ・ヘンダースン)だけだけれど、ネット情報によると、そのほか「そして目覚めると、私は寒い丘にいた」(ジェイムズ・ティプトリーJr.「そして目覚めると、わたしはこの肌寒い丘にいた」より)、「溢れよ涙、と警官は言った」(フィリップ・K・ディック「流れよわが涙、と警官は言った」より)、「見込みのない種子」(アントニイ・バージェス)などがあるようだ。ただ、問題なのは、これらのタイトルがシナリオの内容とはまったく関係のないこと。

2003年11月28日(金)

[DVD]未来世紀ブラジル

 『まぼろしの市街戦』のDVDを買いに行ったのだけれどもどこにも見つからず、仕方なく『未来世紀ブラジル』だけを買って帰る。2枚組のスペシャル・エディションだというのだけれど、できれば3枚組のクライテリオン版と同じにしてほしかった。ハッピーエンドの米国版も見たかったのに。

[ゲーム]くまうた

 発売からしばらくのあいだは、回収騒動とかがあったようで入手できなかったのだけれど、ようやく店に並んでいたのを発見したので購入。
 今のところ、わが弟子飯島ベア男は、デビュー4年目でランキングは最高8位。しかし、これはゲームというよりむしろ、シュール演歌自動作成ツールですね。昔私が自分で作った俳句作成ソフト風流にも似てます。
 ベア男の代表曲はこんなの。

「居住すればゴキブリ」(テーマ:四畳半)
 
ボロ畳でも キノコが生えた
居間のゴキブリは やるせなさそう
汚い食器 ガスが止まらず
いのち尽きるまで 例の残り火
ひとり暮らしの 煎餅布団
天井見上げて とにかく死んで
「うなじも特殊だぜ」(テーマ:乙女)
 
きっと乳房が 大きいかもね
彼女が歩く かわいい仕草
ワンピースでも 体操服も
細い体を 夢想してくれ
萌えたくなるから アイドルなんだ

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Written by Haruki Kazano