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更新日: 2004/10/06


2004年 7月中旬

2004年7月14日(水)

[読書]山本弘『トンデモ本? 違う、SFだ!』(洋泉社)
トンデモ本?違う、SFだ! トンデモ本?違う、SFだ!』 単行本
洋泉社
著者:山本 弘(著)
発売日:2004/07, 価格:\1,575, サイズ:19 cm

 と学会会長にして筋金入りのSFマニアでもある著者によるSF紹介本。とはいっても、並大抵の紹介本とは訳が違う。アシモフ、クラークみたいな大家の作品は一編も紹介されていないし、レムやバラード、ディレイニーなど文学的評価の高い作家も一切無視。紹介されているのはジャック・ウィリアムスン「火星ノンストップ」、レイモンド・F・ジョーンズ「騒音レベル」、ジョン・E・スティス『マンハッタン強奪』などなど、普通の紹介本ではまず取り上げられないようなマニアックな作品ばかり。つまりは、唖然とするようなバカなアイディアに満ちた作品ばっかりなのだ。だいたい、マレイ・ラインスターに一章を割いてしまうようなSF紹介本が今まであったろうか?
 もうむちゃくちゃ偏っているのだけれど、これは明らかに確信犯。著者の価値観に疑問を呈する向きもあるようだけれど、どうも的はずれな意見にしか思えません。SFの人が好んで言う「SFとは○○だ」ってのは、つまりは決意表明なのですね。俺はこういうSFが好きなんだぁ、と叫んでるだけなのだ。別にそれ以外のものをSFから排除しようなんてことは誰も思ってない。あまたあるSF作品をひとつのものさしで測ろうなんてことはしていないし、できるわけがない。そりゃ某サイファイ作家のように「バラードは万死に値する」とまで言って、自分の嫌いなSFとダメなSFを混同しちゃうのは偏狭にすぎるけれども、山本弘は別にそうは言ってないでしょう。この本は、「俺の大好きなSFはこんなにものすごいんだぜ、読めや」というアジテートの書なのだ。
 「読めや」と言ってるわりには、絶版だろうが品切れだろうが全然配慮してないあたりも実に小気味よい。書店で手に入る本しか紹介しないなんていう、ぬるい態度はいけませんよ。しかも、著者の筆致がまた熱気にあふれていて、ついつい読んでみたくなってしまうのだ(紹介文の方が実物よりおもしろい作品もありそうだけど)。これは、古本マニアを増やそうという陰謀とみた。
 SF界において、こういう愛にあふれたアジテーターの存在は貴重であります。私も、石川喬司の『IFの世界』や野田昌宏の『SF英雄群像』を読んで古本屋めぐりにはまった口だからよくわかる。総花的な解説本や投票による年間ベスト本よりも、個人が書いた熱い紹介本の方がずっと読書欲をそそるのだ。日本SF作家クラブ編のオフィシャルな『SF入門』と本書を比べてみて、本当にSFが読みたくなってくるのはどっちだろうか?

 99年のSFオンラインのインタビュー(インタビュアーは堺三保さん)を読むと、山本さん、ここでもラインスターの『宇宙震』やジャック・ウィリアムスンの「火星ノンストップ」を熱く語っております。この2作って、山本氏にとって魂の作品なのだろうなあ。

韓国SF映画

 『ナチュラル・シティ』が気になったので調べてみたのだけれど、まとめて紹介しているページ(英語)がありました。日本でも公開された『ロスト・メモリーズ』のほか、以前、掲示板でDJ.Hanさんが紹介してくれたCGアニメ『ワンダフル・デイズ』、韓国版Xファイルみたいな『イエスタデイ』、電脳SF『マッチ売り少女の再臨』(これは日本公開予定があるらしい)などなど。けっこうあるんですね。でも、今ひとつどれもいい評価じゃないのが……。どうやら韓国SF映画は、映像はきれいだけれどストーリーがダメ、というパターンが多いみたい。
 コメント欄では、なぜか"Save The Green Planet"という映画がSFかどうか、という話題で盛り上がっていて気になったのだけれども、どうやらこういう作品らしい。日本語での紹介はこちら。ストーリーとしては、これがいちばん面白そうかな。この映画は、去年、日本でも映画祭で上映されているようだ。

"blog"とはSFファンが考案したカクテルの名前だった

 1950年代、ピーター・ハミルトンというリバプールのSFファンがブログ(マーク1)というカクテルのレシピを考案。ブランデーとエッグフリップをベースに、ブラックカラントのピューレとアルカ・セルツァー、ビーチャムス・パウダーを加えたものだとか。アルカ・セルツァーなんていうとんでもないものが入ってるので当然泡立つ。なんだかわからんが、ものすごくまずそうだ。続いて1955年のイースターコンにおいてホテルのバーマンが半パイントの林檎酒にラムを加えたブログ・マーク2を創作。こっちはけっこうおいしく飲めそうだ。

The Japan Hierarchy

 誰か日本語に訳して下さい。日本人であるだけで序列の最上位!(笑)
 Geek Hierarchyってのもあります。SF作家がいちばん偉くて、SF小説オタクはその次、アニメオタクやゲームオタクはその下なんですか。

2004年7月16日(金)

言い間違い

 そういう間違いをする人がいるということは知っていたけれど、昼休みの雑談の折りに、見目麗しい同僚の女医さんが「ダンコンの世代っていうと、何歳くらいですか?」と口にしたときには、指摘していいものかどうか、どきどきしました。あまりに何度も繰り返すので「ダンカイ……」と小さな声で訂正してみたのだけれど、なんだか私の方が悪いことをしたような気がして、いたたまれない気持ちになったのでした。

土星に2つの顔持つ月 探査機撮影、地表に黒っぽい物質

 土星の衛星イアペトゥスの話。うーん、まだボイジャー2号の写真の方がクリアに見えます。カッシーニは300万キロ、ボイジャーは110万キロのところから撮った写真だから仕方ないのかも。
 そうそう、イアペトゥスといえば、『サターン・デッドヒート』(リンク先はこじまさんの感想)ですよ。痛快きわまりない冒険活劇ハードSFの傑作なので、未読の方はぜひ。ああ、久しぶりに読み返したくなってきた。
 しかし、「イアペトス」でぐぐってみてトップに来るのがモダン仏壇のページだったのにはびっくり。フォボス(火星)にビアンカ(天王星)、イアペトス(土星)、アドラステア(木星)、イオ(木星)、ミランダ(天王星)、コーデリア(天王星)と衛星の名前づくしだ。しかしフォボスとイオ以外はマイナーな衛星の名前ばっかりってのはなぜなんだろうか。あと、「ベータ」ってのがよくわからないのだけど、なんだろう。

2004年7月17日(土)

青山ブックセンター閉店

 有名書店の閉店は残念には思うのだけれども、実を言うと、私としては青山ブックセンターには、それほど思い入れはありません。だいたい、私の行動範囲内に青山ブックセンターはなかったし、たまに行ってもほしい本がないことの方が多かったし。なんというか、かゆいところに手が届かないのですね。置いてある本は確かにある基準で厳選されてるし、並べ方にもポリシーが感じられるんだけれど、その基準が私の基準と異なっているので、なんだか押しつけがましさばかりが感じられて性に合わないのだった。池袋のリブロとかジュンク堂みたいに、もうとにかくなんでも置いてあります! 勝手に選んで! 的な本屋の方が好み(同じ理由でヴィレッジ・バンガードも嫌いだ)。

フランスのエイズ予防ポスター

 よく許可が下りましたね。

[読書]桐生祐狩『物魂』(ハルキ・ホラー文庫)
物魂 物魂』 文庫
角川春樹事務所(ハルキ・ホラー文庫 き 1-1)
著者:桐生 祐狩(著)
発売日:2004/07, 価格:\588, サイズ:16 cm

 実に悪趣味で下らない話。いかにも桐生祐狩らしいといえばらしい作品なのだけれど、装丁に騙されて普通の人形ホラーだと思って買った人はきっと腹が立つだろうなあ。
 スズキトモユさんは、「桐生祐狩初心者向けかも」なんて書いてるけれど、いやいや、これはどう考えても上級者向けでしょう。今までの作品では、少なくとも最初の方では普通のホラー小説を装ってたけど、この作品ではもう最初から飛ばしまくり。ヒロインはお人形さんとお話しする上に、いきなり盗撮男を家に泊めて鍵を渡したり、無造作にお金渡してパソコン買ってきてもらったりする始末。まずたいていの人はここでついていけなくなるよ。
 それに、出てくる中年オタクたちが、少女小説の本を出していて帽子がトレードマークの評論家に、女占い師に、科学雑誌の編集者って……。これは、少なくとも桐生祐狩が「と学会」会員であることとか、伊藤(バカ)君事件とか、そのあたりのことを知ってないと充分楽しめないんじゃないだろうか。
 しかし、頭が悪くて世間知らずな女とか、イタくてうっとうしいオタクとか、そういうのを描写させたら天下一品ですな、この作者は。そんなもので天下一品になってどうする、という気もするのだけれど。

2004年7月18日(日)

The Japan Hierarchy(日本語版)

 以前紹介した、The Japan Hierarchyですが、突撃実験室のくぬぎざさんが日本語訳を作ってくれました。しかし、私もくぬぎざさんも、いちばん下の「コスプレしながら日本のデパートをうろつき……」がどういう情景だか想像がつかなかったのでした。まあ、イタい光景だというのはわかるのだけれど……。
 くぬぎざさん、どうもありがとうございます。

日本の幻獣展

 川崎市民ミュージアムで開かれている「日本の幻獣展」を見にいってきました。今日は京極夏彦と小松和彦のトークショーもやっていたのだけれど、申し込みをしてなかったので入れず。がっかり。
 展示そのものは、妖怪研究家として名高い湯本豪一が学芸員を務めているだけあって非常に充実してます。江戸時代に目撃された幻獣たちの絵を眺めているだけでも楽しいのだけれど、全国各地のお寺に伝わる河童や鬼、人魚や龍、雷獣のミイラまで展示されているのがすばらしい。雷獣のミイラの発送作業については、新潟県の西生寺の住職の奥さんの日記(6/29)に詳しく書かれてますね。しかし、お寺のサイトに日記ページがあるとは驚き。
 どうやら、宇宙人の目撃者と同じく、幻獣の目撃者も絵心がない人が多かったようで、とうてい生物とは思えないようなすっとんきょうな姿の絵もちらほら。本当のところはアザラシか何かだったのに、目撃者の絵が下手だったせいで謎の幻獣になってしまった例もけっこうあったんじゃなかろうか。「アマビエ」なんてほとんど落書きですよ。
 売店では「ありえ」と「あまびこ」の携帯ストラップが売られていたのだけれども、どうやら大人気らしく、どちらも売り切れていてがっかり。仕方がないのでちょっと高かったが、「あまびこ」フィギュアを買ってしまう。さすがに幻獣フィギュアを買う人はいないだろうなぁ……などと言われているけれど、ええ、買いましたともさ。これが「あまびこ」です。よりにもよって、展示されている幻獣図の中で最もいいかげんな絵の「アマビエ」をそのまんま立体化しております。木箱入りでしたツラがガッツ星人みたいで微妙にキモいなどといわれている「あまびこ」ですが、むう、言われてみれば似てるような気も
 この「あまびこ」、熊本県の海岸に出現して豊作と疫病を予言し、自分の姿を拝めば疫病にかからない、と告げたのだとか。今日から我が家の守り神として大事にしますよ。とりあえずケニー君の隣にでも置いとくか。


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Written by Haruki Kazano