2006-04-19 [Wed]
▼ 天軍
ひとことで言えば韓国版『戦国自衛隊』。
2000年の南北首脳会談以来、密かに韓国と北朝鮮は新型核兵器を共同開発していたのだが、2005年に至ってそれが米国の知るところとなり、核兵器は米国に移譲されることになる。それに不満を抱いた北朝鮮の将校は女性核物理学者を拉致し、核兵器を奪ってボートで鴨緑江を下る。彼らを追う韓国軍将校らとの激しい銃撃戦が展開していたちょうどそのとき、上空を433年ぶりに巨大彗星が通過。彗星のエネルギーにより(?)、彼らは1572年にタイムスリップしてしまう。
彼らが出現したのは女真族と朝鮮族の戦闘が繰り広げられている辺境の小村。そこで彼らは若き日の李舜臣と遭遇。李舜臣といえば、のちに豊臣秀吉の水軍を撃退する韓国の偉大な英雄。しかし彼らが出会った李舜臣は、武科試験に落ちてやけになっており、盗みを働き、朝鮮人参の密売をするやさぐれ者だった。このままでは李舜臣は将軍にならず、朝鮮半島は秀吉に侵略されて日本の植民地になってしまう!
最初はコメディタッチだった物語は、徐々にシリアスさを増し、さらには血しぶきの量も増し、最後は国威発揚映画に。このところ日本は右傾化しているとか言われるが、右傾化の度合いでは韓国には到底かないませんな。『ロスト・メモリーズ』も安重根の伊藤博文暗殺が失敗して日本に植民地化されてしまう話だったが、韓国でタイムトラベル映画が作られると、どうしていつもこういう話になってしまうのか。いがみ合っていた北朝鮮将校と韓国将校が、李舜臣の旗のもとで共に戦う場面とか、ラストは13隻の亀甲船で300隻の日本水軍を迎え撃つ場面で終わるあたりとか、なんというか非常にわかりやすく男らしい映画である。
SF的にはいい加減の極地で、まあ彗星エネルギーでタイムスリップするのはいいとしよう(これを認めないと始まらないし)。しかし、彗星の接近で月面上のアメリカ国旗がはためいて飛ばされるという描写はどうか。さらに核兵器には10分後に爆発するタイマーがセットしてあるのだが、タイムスリップ後は1分進むのに1日かかるという説明はさっぱり理解できない。彗星接近に伴い、進むスピードが早くなるというのも謎。さらには、この手の映画ではどこの国の映画でも同じとはいえ、タイムパラドックスにはまったく留意してません。近代兵器使いまくり。
コン・ヒョジンという女優が核物理学者を演じているのだけれど、どうみても物理学者にはみえない。こんなに無茶な核物理学者役のキャスティングは、『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』のデニス・リチャーズ以来である。まあ、でもこういうバカバカしい映画も嫌いじゃないんので星3つ半(★★★☆)。
>どうみても物理学者にはみえない<br>同意しつつも新たな萌えの可能性を見た…。<br>しかし、日韓ともこういう国威発揚モノブームはいい加減食傷だぁ。どうにかしてほしい。