▼ New Rose Hotel

　ヒロシです。タンパク質の合成してるとです。

　なんでいきなりまたヒロシかというと、ずっと前に買ったウィリアム・ギブスン原作の日本未公開映画"New Rose Hotel"のDVDが家の中から出てきたのである（引越ししたおかげだ）。というわけで、今日は映画"New Rose Hotel"(1998)の画像をちょっと紹介してみる。映画のストーリーなどについては、はるか昔の日記を参照。というか原作読め。

　オープニングのクレジット。名前と一緒に、意味不明のカタカナが流れる。これに「うん、わからないの。でも、なんでかわからないけど、すごく怖い」などと、変な女の子の声が日本語でかぶさってくるので、映画が始まった瞬間からすでに脱力。もちろんその声は映画本編とは何の関係もない。

　主役のウィレム・デフォーとヒロインのアーシア・アルジェント。ほとんどエロ親父だ。原作の「おれ」と「サンディー」である。

　われらが天野喜孝asヒロシ。台詞なし。画像の荒い隠しカメラ映像で出てくるだけ。

　坂本龍一asホサカの重役。むやみに豪華な配役である。左の人の胸の「ホ」のマークに注目。

　床に布団の敷かれた妙な風俗店？で遊ぶデフォーとクリストファー・ウォーケン（フォックス役）。ウォーケンは浴衣に王冠という間抜けな姿である。

　で、デフォーは布団に押し倒されるのである。

　日本の風景。これどこ？

　日本の風景その2。いつの時代だ。

▼ ミラーマスク

　ニール・ゲイマン脚本、9月30日米国で公開予定の映画『ミラーマスク』の予告編。Watch it now! (QuickTime)というところから見られるクリップが不気味で素敵。ヒロインもかわいい。

▼ 宇宙戦争の評判

（映画『宇宙戦争』のネタバレをしています。未見の方は注意）

　ネットで『宇宙戦争』の感想を見て回っているのだけれど、どうも評判がよくないようだ。そうかなあ、私は傑作だと思うんだけどなあ。

　特に評判が悪いのがあのオチなんだけれども、そりゃ宇宙戦争なんだからあれしかないだろう。だいたい原作を知らないという人があまりにも多いのに驚いた。読んでなくても結末自体は一般教養として知ってるものだと思ってたのだけれど（『インデペンデンス・デイ』だってそれを踏まえてあのオチなわけだし）。

　まあ私も原作を細部まで覚えているというわけではないので、映画を観たあとに原作を何十年かぶりに再読したのだけれども、スピルバーグは原作をそれほど大きく改変することなく、うまく生かして作っているのですね。たとえば小屋の中で息を殺して触手が去るのを待つ場面とか、ティム・ロビンスをアレするあたりとか、赤い草が生えてくるあたりとか、トライポッドが人間を捕獲して籠に入れるあたりとか、全部原作どおり。

　原作と大きく異なっているのが、映画ではトライポッドたちが空からではなく地中から出現するというところ。100万年ものあいだマシンが地中に埋まっていて、雷に乗って降りてきた宇宙人が乗り込む、という説明はかなり無理があるのだけれど、ここをあえて地下から出現することにしたのは、これはやはり怪獣映画を意識しているからなんじゃないだろうか（大阪では〜という台詞からもそのへんはうかがえる）。そもそも「100万年の眠りから覚めた」といえば怪獣ものの常套句ではないか。

　で、何が怪獣を目覚めさせたかといえば、それは911テロなんじゃないかなあ、と。『ゴジラ』にとっての太平洋戦争が、『宇宙戦争』のテロ、というのはそんなに的を外した考えでもないと思う。国土を蹂躙されたというトラウマが、どちらの映画でも通奏低音として流れているように思えるのである。

　考えてみれば、有限の命を持つ生物が、人類に対して神として振る舞うという物語は、これまでのハリウッド映画ではほとんど見られなかったもの。『GODZILLA』での怪獣は倒すべき敵でしかなく、神としての威厳はまったく感じられなかった。

　『宇宙戦争』は、おそらくハリウッド映画としては初めて「神」であり「災厄」である怪獣を描いた映画なんじゃないかと。怪獣＝トライポッドが、破壊神として完膚なきまでにアメリカを蹂躙し尽くす。これがこの映画のキモでしょう。

　『宇宙戦争』は、これまで、『GODZILLA』みたいなへなちょこな怪獣映画しか撮れなかったアメリカンが、911テロを経てついに本当の怪獣映画を撮れたという記念すべき映画なのである！

　あと、私が高く評価したいのは映画の結末。最後にトムはダコタを母親のもとに送り届け、一躍ヒーローとなるわけだけど、なぜかボストンの家も妻の家族も無傷で、別れた夫であるトムのことを微妙な表情で遠目から見守ってる。ダコタは母親のもとに走っていってしまうし、別れた妻のお腹には新しい夫の子供。せっかくがんばったのにトムにはどこにも居場所がない。トムのところに駆け寄るのは、途中で別れてなぜか生き延びた息子だけ。金持ちと結婚した妻は戻ってくることはないし、トムもおそらくこのあとコンテナ積みがうまい労働者に戻るだけ。

　家族の描き方が中途半端、という意見もあるようだけれど、私としてはこの場面だけで語り尽くされているように思うのですね。それほど大きく人生は変わるわけじゃないけれど、ちょっとはいいこともある。息子とわかりあえた（気がする）。

　理由もわからないまま終結していた戦争ともあいまって、このあたりの非情なまでの現実性がとても21世紀的で、私はスピルバーグをけっこう見直した。最近のスピルバーグの映画の中では、いや最近のSF映画の中でも傑作の部類だと思うので、ぜひぜひ劇場で観ましょう。まあ、私と違う感想を持っても保証はしませんが。

▼ サーティーガール

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　購入。わずか8ヶ月前に双葉社から『30GIRL.COM』が出たばかりだが、どんな事情があったものか、今度は白泉社で出し直し。作者のクレジットも変わって岩崎つばさ、カワイシンゴの連名になっている（旧版でも奥付にはカワイシンゴの名前があり、原作・脚本そして本文デザインを担当していると書いてあった。新版では役割分担の表記なし）。アートワークが魅力の大きな部分を占めている作品なので、連名になったのも当然というべきか。マゼンダを基調にしたカラーページの色遣い、フォントの使い方を含め、本全体のデザインが実にすばらしくて、眺めているだけで楽しい楽しい。こんなマンガはめったにあるもんじゃない。

　出し直しだから新しい白泉社版だけを買えばいいのかといえばさにあらず、豊富なカラーイラストは旧版にしか収録されていないので、ファンならば両方買いましょう。今ならまだ旧版も入手できます。白泉社版のつづきは、本家30girl.comのサイトで。

30GIRL.com
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▼ コンピュータ言語で話そうゼ（via Hanzi Smatter）

　話そうゼって言われても。

　"Talk Nerdy To Me"のニュアンスがよくわからない（「オタクな話をしよう」という感じか）のだが、どう考えても日本語とは一致していない。"Talk Nerdy To Me"は、向こうでは決まり文句のようなものらしく、同じメッセージ入りTシャツがけっこう売られている。

　まあ、それよりも着てる女の子がやたらかわいいのが気になるのだが。イメージ検索でも、このメッセージ入りTシャツを着ているのは女の子ばかりだ。

　話は変わるが、"Talk Nerdy To Me"を検索してる途中で見つけたサイト。Geek Fantasies。「オタクのファンタジー」（ホントか？）という設定の動画が見られる。"created by geeks for geeks"と書いてあるが、まあたぶんギャグなんだろう。全部ワンパターンなのだが、実にバカバカしい上にやっつけ仕事感が漂っていてよい（個人的には2にツボを突かれました）。

▼ 荒川

　先週は、雨や飲み会などのため全然自転車通勤ができなかったので、今日は朝から久々に荒川へ。やはり川沿いは広々としていて開放感がある。

　河川敷には、釣り人がいたり、上半身裸で寝転がっているおじさんがいたり、本を読んでいる女性がいたり、犬の散歩をしている老人がいたり、謎の機械からアンテナを立てて何かしている人もいたりする。もちろん自転車乗りも多数。公園だとまだ日常のルールの延長みたいなところがあるけれども、河川敷という場所は、公園とはまた違って、何をしていても許されるような、また何があっても不思議はないようなアナーキーさがある。そういえば川は古来から異界の入り口でもあった。

　ただ、雨上がりのサイクリングロードは水たまりばかりだし、野球少年たちが道いっぱいに広がってランニングをしていたり、果ては路上でキャッチボールを始める親子連れまでいる始末。とても快適走行は望めないので、しばらく走って途中で引き返す。走行距離は30キロくらい。

　写真は朝霞の公園通り。すべての道にこんなふうに独立した自転車レーンがあればいいのに。

▼ （いわゆる）モヒカン族にあこがれて

　「モヒカン族」という言葉が流行っているようだけれど、プログラマーを中心とする技術原理主義者と一般人の諍いなんてものは、10数年近く前のASCII netのjunk.testあたりから見てきているので、なにを今さらという感じもする。それに、こうした諍いが大きな問題になったのは、junk.testの頃や、パソ通出身者が大量にネットに流入した頃であって、今やいわゆる「モヒカン族」の勢力はかなり衰えてきている。今になってそんな現象を掘り起こし、わざわざそんな自虐的な名前をつけたのは、やはり「最後」をどこかで予感しているからなんだろうか。

　確かにキャッチーな名前がついたのは慶賀すべきことかもしれないが、ネイティヴ・アメリカンの実在の部族名をジョークとして使うのはあまり趣味がいいとは思えない（ネーミングの由来が実際のモヒカン族とは関係ない『北斗の拳』だからなおさらだ）。そこで当日記では彼らのことを「いわゆる『モヒカン族』」と表記することにする。もちろんこの表記は、いわゆる「モヒカン族」がかつてよく使っていた「いわゆる全角」を意識している。

　さて私自身はというと、いわゆる「モヒカン族」にあこがれつつも、そうなれなかった者だ。私が最初に「ネット文化」とでもいうべきものに触れたのは、ASCII net PCSだったから、junk.testの流儀がネットの流儀だった。初心者の質問を一言の元に切り捨てるvoid_no.2氏の芸風は痛快だったし、そうした乾いたコミュニケーションが憧れだった。当時はそうしたいわゆる「モヒカン族」的なふるまいを新時代のコミュニケーションみたいに感じていて、ネットの流儀を自分も身につけようと一生懸命だった。

　それに、間違った質問の仕方には厳しいが、正しい質問をすれば必ず答えてくれる、というコミュニケーションには、一般社会の関係（いわゆる「モヒカン族」の用語でいえば「ムラ社会」）にはない率直さと、厳しさの中の温かさといおうか、自分が受け入れられているという安心感があった。結局私は彼らのようにはなれなかったのだけれど、ネットの世界を知るきっかけを作ってくれた彼らには感謝しているのである。だからいまだに、私は（いわゆる）全角英数字や（いわゆる）半角カナはなるべく使わないようにしている。それが、いわゆる「モヒカン族」になれなかった者の、せめてものこだわりなのである。

▼ Super #1 Robot

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▼ 米国発　広がる「ブッククロッシング」

　うーんどっかで聞いたことが、と思ったら、3年前の日記で取り上げたことがありました。順調に続いていたのですね。「世界を図書館に」というイメージの広がりはすばらしい。

▼ パッヘルベル「シャコンヌ　ヘ短調」

　もうすっかり下火になったMusical Batonだけれど、あれの回答でひとつだけ悔やまれてならないことがある。「よく聞く、または特別な思い入れのある5曲」という質問で、曲のタイトルを挙げるだけですませ、その曲のどういうところが好きなのか説明を省略してしまったのである。曲のタイトルだけですませるというのは、考えてみれば非常に安直な行為ではないか。そんな、その曲をたまたま聴いたことがある人にしか伝わらないような記述に何の意味があるのか。事実、他人のMusical Batonを読んでも、知らないアーティストや曲のタイトルだけが挙げられていると、まったくイメージが湧かず目が滑っていくばかりである。

　ではなぜ説明を省略したかといえば、それは言葉での表現を逃げてしまったのである。

　CDはけっこう持っている方だし、音楽もかなり聴くほうだと思うのだけれど、これまでこの日記では音楽についてほとんど書いてこなかった。これはどうしてかというと、自分には音楽について語る言葉がないからだ。小説（特にSF）であれば、ある程度自分の好悪を別にして作品を評価できるつもりでいるけれど、音楽についてはこれは好き嫌いでしか判断できない。まあ個人の感想なのだから好き嫌いでいっこうに構わないわけだし、私も映画の感想ではわざと好き嫌いを前面に出しているわけだけれど、映画の場合はどこが好きで、どこが嫌いかをしっかり書くようにしている。しかし、音楽だと、どこが好きか、どのように好きかを語れといわれると、はたと行き詰まってしまう。私は演奏をしたこともなく聴くだけの人間で、さらに音楽用語も全然知らない。聴いたことのない人に対して、その音楽の魅力を言葉で表現してみせることができるかどうか。私にはとても自信がないのだ。

　そんなことは考えず、とにかくこの曲が好きなんだ、わかるひとだけわかればいい、という書き方をすれば楽なのだけれど、それでは単なるモノに託した自分語りだし、芸のないあからさまな自分語りをためらうくらいには私も屈折している。

　ということで、うまく言葉で伝えることができるかどうかは心許ないが、しばらく、自分の気にいった音楽について語ってみることにする。私の好む音楽はほとんどがヒットチャートとは無縁なので、必然的に語るのはあまり人口には膾炙していない曲になる。たぶん紹介する曲を聴いたことのある人はほとんどいないはずだ。

　ではまず、今回はパッヘルベルのオルガン曲「シャコンヌ　ヘ短調」から。パッヘルベルはバロック時代の作曲家兼オルガン奏者で、J.S.バッハより35歳年上。パッヘルベルといえばなんといっても「パッヘルベルのカノン」が有名だけど、それに負けず劣らずの美しさでありながら、なぜか知名度が低いのがこの曲である。私としては、カノンよりもこちらの方が名曲なんじゃないかと思っている。

　長さにして8分から9分程度。静かに始まった曲が変奏を繰り返しながら徐々に複雑さを増し、最期には宇宙的な高みにまで上り詰めるという、スケールの大きな曲である。パイプオルガンの曲というのは、それだけで荘厳に聞こえるものだけれど、この曲はまた格別の美しさがある。

　この曲を最初に聴いたのは、盲目の大オルガニスト、ヘルムート・ヴァルヒャによる『バッハ以前のオルガンの巨匠たち〜ドイツ・バロック・オルガン作品集』という3枚組のCDなのだけれど、どうやらこれは廃盤のよう。そのほかWerner Jacobという人が演奏した盤を持っているが、これはなんだか薄ぼんやりとこもった感じの演奏で今ひとつ。できればヴァルヒャの格調高い演奏を聴いてもらいたいのだけれど、3枚組なのと廃盤なのがネックか。

　そのほか、ネット上では、Patrick Batemanさん（なんだか夜は殺人鬼になりそうなハンドルですな）という方が作成したMIDIデータが入手できるのだけれど、これがなかなかの名演奏。興味のある方はまずこれを聴くのがいちばんてっとりばやいかな（と、結局言葉だけで伝えるのを抛棄してしまった）。

▼ 記号のみで構成された小説

　中国は山西省の作家が、わずか14の文章記号から成り、5つの章から成る小説を発表。この作家Hu Wenliangによれば、この14の記号が感動的なラブストーリーを表しているのだとか。

：？

：！

“‘……’”

（、）・《，》

；――

　タイトルは「。」。作者によれば、これは起伏があり完璧な筋を持つ感動的なラブストーリーであり、執筆には1年を費やしたという。

　Huは山西作家協会のメンバーで、これまで小説、散文、論文など8冊の本で、合計約300万語を執筆。彼は現在、山西省の石炭地質局公報課の課長として働いている。

　Huは、この小説に隠された物語を解読した者に、14万元（日本円で約190万円）の賞金を出すと申し出ている。これまで20人が訪れたが、Huを満足させた者はひとりもいなかった。Huによれば、回答はすべて、彼が考えたストーリーとは遥かに遠かったとか。

　Huによれば「自分の答えはあります。漢字約100文字で表せる。解読は、人物描写と物語のプロットを含んでいなければならず、隠された物語を80%正しく推測できた人がいれば、賞金は進呈します」とのこと。

　さて解読できますか？　とりあえず、元の記事には記号14個とあるんだけど、いったいどういう数え方なのかが気になった。“”とかはひとつと数えるのかな。

▼ 完全脱獄

　連休中はSF大会で企画に出たり、実家に帰ったりしてたわけですが。

　その実家の本棚で、こんなマンガを発見した。桑田次郎の『完全脱獄』。

　タイトルは「完全脱獄」で、なんだかジャック・フィニイみたいだけど、「名探偵シンキングマシン」と副題がついている通り、これはフットレルの「13号独房の問題」のマンガ化。原作が短篇なので語り口にも余裕があり、遊びの部分と原作通りの部分のバランスがうまくとれていておもしろいです。併録は「余分な指」。昭和53年刊だから、たぶん私が小学3、4年生の頃に買ったもののはず。

　これは主婦の友社から出ていたTOMOコミックス名作ミステリーというシリーズで、実家にはこの本のほか、石森プロ画・スティーヴンソン原作の『自殺クラブ』がありました。全ラインナップはこちらにリストがありますが、原作、マンガ家ともになかなか豪華な作家陣が揃ってます。エーヴェルスの『蜘蛛』とか、クリスピンの『オモチャ屋殺人事件』（『消えた玩具屋』）とか、原作のセレクションもなかなか通好み。この手のラインナップなら必ず入りそうなホームズものやクリスティ、カーをあえて？外しているあたりも渋い。フィリップ・バーン・ホーン『悪魔のアイドル』とかP・デービス『怪異を積む船』とか、聞いたこともないような作家の作品も入っている。誰だそれ（『怪異を積む船』は戦前の新青年に載った長篇らしい）。

　全体にミステリ、ホラー中心のラインナップなのに、いきなりハミルトンの『銀河大戦』なんてのが入ってるのも謎。

　ちなみに、この『完全脱獄』、同じ桑田次郎による『マラコット深海』と合本になって近々復刊されるそうな。

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▼ パトリック・マグラア『閉鎖病棟』映画化

　日本にはいつ来るかな。

▼ 臨床心理士及び医療心理師法案要綱骨子に対する（社）日本精神神経科診療所協会の見解(pdf)

　via Anno Job Log

　ものすごい勢いで臨床心理士を批判しまくってます。なにがそこまでお前を駆り立てるのか、と問いたくなるほどの勢い。

　でも、ここまでくるとほとんど自らの首を絞めてるも同然のような気も。精神科医だって人間の心理についての教育は受けてない（少なくとも義務ではない）わけだし、精神科医がやれば保険点数がとれる「通院精神療法」や「標準型精神分析療法」の科学的有効性について問い返されたら、いったいどう答えるつもりなんだろう。

▼ キリストが殺されて、クリスマスは生まれた。

　昨年のクリスマスシーズンに日本で発売されたDVD『パッション』。恵比寿駅に張り出されていたこの映画のポスターを紹介していたサイトが、今になって超人気サイトboing boingに捕捉され、これがあちこちのブログで話題になるという事態になっております。

　このポスター、十字架を背負うキリストと、日本の浮かれたクリスマス風景を対比したもので、まあインパクトはあるものの日本人にとっては何のことはないポスターなのだけれど、キリスト教文化圏の人間にとっては、これが"crazy"で"bizzare"らしいのですね。 　

　たとえば、boing boingでのコメントからいくつか抜き出してみる（訳は超適当）。

ポスターには日本語で『キリストが殺されて、クリスマスは生まれた』と書いてあるようだ。日曜学校で教えられたこととはちょっと違うようだね

この広告がバカバカしく見えるとしたら、それは日本人を知らないからだよ。この広告は日本でのクリスマスの意味と、本来の意味とを対比させたものなんだ。コピーを適当に訳すと『キリストの死が、クリスマスを生んだ。さあ、知られざる真実を学ぼう』になる。

キリストの物語は、日本ではまったく知られていない。宗教的人物の暴力的で悲劇的な死と、フライドチキンとかわいい飾りつけとラブホテルでのセックスを結びつける国で、ほかにどうやってDVDを売れと？　まあ、ありがちなクリスマス映画だと思って誰かが『パッション』を借りていくことを想像してみてくれよ。

クリスマスはキリストが生まれた日だろ？　で、復活したのがイースター。ポスターのコピーライターは、クリスマスはキリストが死んだ日を祝ってると思ってるように見えるんだが（もちろん歴史上のキリストの誕生日はクリスマスじゃないことは知ってるよ）。　

妹が日本の製薬会社で働いてるんだけど、日本人はクリスマスをケンタッキーフライドチキンを食べて祝うんだそうだよ。カーネル・サンダースとサンタクロースが似てるから、彼らはサンタがフライドチキンを持って煙突を降りてくると思ってるんだ。ああ、君たち白人だって同じだけどね。

日本人がクリスマスにKFCに行くのは、カーネル・サンダースがサンタに似ているからじゃないよ。1970年、KFCが初めて日本に上陸したとき、アメリカ人はみんなクリスマスにはケンタッキーを食べるという宣伝を打ったので、クリスマス休暇というアイディア自体が目新しかった日本ではそれが伝統になったのさ。

　 　日本人はクリスマスにケンタッキーを食べるという話はウケたのか、ほかのサイトでもたびたび引用されている。

　次に、他のサイトの感想から。

Lacivious Polyphony

この狂気を私に伝えてくれたboing boingに感謝を。この奇妙な日本の広告の左側を理解するのは少々難しい。仕事の手を止めて30分間この写真を見つめていたが、これが何を意味しているのかまったく理解できなかった。

Deliriumsrealm.com Blog

明らかに、広告会社の誰一人としてクリスチャンではないね。コピーを訳すと『キリストの死が、クリスマスを生んだ。さあ、知られざる真実を学ぼう』となるそうだ。実に奇妙だ」

To Japan and back again

一般に日本人は、100万人に1人のクリスチャンででもなければ、イースターのことなどまったく聞いたこともない。それから、日本のクリスマス・ケーキは、イギリスのものとは違っている（アメリカのことはよく知らないが）。家庭のクリスマスケーキといえば濃厚なフルーツケーキで、食べる前に1、2年は熟成させるものだけど、日本のクリスマスケーキはまったく逆で、柔らかいスポンジでできてて、クリームとイチゴできれいに飾られてるんだ。1、2日でダメになるので早く食べなければいけない。クリスマスケーキの寿命は短いので、29歳くらいを超えた未婚女性は“クリスマスケーキ”と呼ばれている。なぜなら、彼女らは賞味期限を過ぎているから。

　1、2年って本当ですか。1，2ヶ月前から作り始めるという話はよく聞くんだけど。

.::a hazel war::.

我々は、日本人がまったく手がかりすらつかんでないものを発見した。『キリスト教』だ。教会は真剣に都市エリアでの宣教を考えた方がいいと思う。私は別に東洋の宗教に詳しい神学者ではないが、中国人が真剣に祖先を敬い、死んだ先祖に祈ることを知っている。中国の新年が2月（たぶん9日）だということも知っている。日本人はイースターがキリストの誕生を祝う日ではないと知るべきだ！！！！！　そして日本化されたキリストは……哀れでありほとんど滑稽だ。

i=bored

明らかに日本人はキリスト教をまったく理解してないね。おもしろい！

　長々といろんな人のコメント引用してしまったのだけど、愉快なのは、明らかにほとんどの人は日本のクリスマス事情というものをわかってないということ。まあ日本人がキリスト教を理解してないのは確かにそのとおりなんだけど。

　そのへんに誤解があるから、「キリストが殺されて、クリスマスが生まれた。日本が知らなかった真実が、そこにある」というコピーも変に誤解されてしまうのですね。クリスマスはキリストが死んだ日である、とまでは、いくら日本人でもさすがに思ってないでしょう。このコピーはつまり、「キリストが殺されたことをきっかけに、キリスト教は世界宗教になり、そしてクリスマスが祝われるようになったんだよ」てな意味でしょう。日本人が唯一知っているキリスト教の行事であるクリスマスと、キリストの生涯を描いた映画の内容を結びつけた印象的なコピーなわけだけど、彼らはなまじキリストの生涯なんてものは「知られざる真実」じゃなくて常識だと思い込んでいるから、「え、知られざる真実？　どういうこと？　キリストが殺されたのがクリスマス？」ということになってしまう。

　あと、「クリスチャンは誰もチェックしなかったのかよ！」みたいな感想も見かけたのだけれど、たとえば日本のキリスト教雑誌いのちのことばでは、このポスターを「デザイナーもコピーライターもクリスチャンではない。彼らは「これは決してパロディではなく、現代のクリスマスが本来の意味を失っていることを問題提起したい」と語って、このポスターを作ったという。（中略）クリスチャンよりも、この映画の本質を観ている姿には驚かされる」と、好意的にとらえているのですね。このへんも文化の差異というか。

▼ 荒川（埼玉）サイクリング

　今日も今日とてぶらり旅。

　今日は自転車で荒川の上流に向かってみましたよ。

　大泉学園近辺にて。いったい何を教えてくれるのか。

　こちらのページの情報が正しければ、ベテラン作画監督である進藤満尾氏のプロダクションなのかな。確かに進藤氏は格闘技もやっているようだし。

　住宅街を走ると、眼下に荒川と幸魂大橋が見えてくる。

　朝霞水門あたりから見た荒川。ここから上流へと走ったわけだけど、埼玉の荒川沿いは道が複雑で迷いやすく（一般道に出なければならない箇所がかなり多い）、しかもサイクリングロードは川から遠く離れたところを走っていたりして、川沿いをまっすぐ走れる東京に比べると今ひとつ開放感に欠ける。ただ、人の多い東京に比べ、圧倒的に人が少ないという利点はあるのだけど。

　ヤコブの梯子。

　妙に時代がかった看板。どうしてそこを赤く強調するのか、とか「従」にふりがな振るより、もっとほかに振るところがあるだろう、とかツッコミを入れたくなる。

　パラシュートで降りてくる人がいた。どこに降りるんだろう。

　治水橋で左岸に渡り、上江橋をちょっと越えたあたりの土手で牛に出会った。しばらく牛と見つめ合って、このへんで引き返す。走行距離は約60km。

▼ 洪水を起こしかねない位の大雨

　Bloglinesの日本語はときどき変だ。火曜と水曜にはものすごいことが起こりそう。

▼ 精神医学に燃える

「精神医学に燃える」なんてのは馬鹿もいいところで、大人になりきっていない青くさい証拠としか言いようがない。といって精神科医が「自分の仕事はどうでもよいつまらないものだ」と思っても人命にかかわる。精神医学的面接をやっている精神科医でもっとも頼りになる態度の人間は、どんな人間だと思う？　単純な話だ。「自分の日々の糧を自分で稼がなければならない」ことがわかっていて、そのために働いている人間だ。

H.S.サリヴァン　中井久夫他訳『精神医学的面接』（みすず書房）

　では「精神医学に萌える」のは？

　まあ、それはさておき、精神科医である私は、サリヴァンのこの言葉にとても共感を覚えるのだけれど、患者の側としてはどうだろう。もしかすると「燃える」精神科医を求めている患者は少なくないのではないか。たとえば『ブラックジャックによろしく』には「燃える精神科研修医」が登場する。彼の行動はきわめてはた迷惑なものだが、もしそれが読者に共感を持って読まれているのだとしたら、そこには、そうした「燃える精神科医」に対するニーズがあるからなのかも。医者側と患者側の精神科医観にギャップがあるとしたら、そこを埋めるにはどうしたらいいんだろうか。

　だいたいにおいて、精神科医というのは、「燃えて」見せることがことさらに嫌いな人種である。これは自分のことも含めて書くのだけれど、精神科医はものごとに対して斜に構えた態度をとりがちである。自分も含め、サイト持ちの精神科医にはわりと、精神分析用語でいう「防衛が強い」人が多いような気がする。仕事上でたとえどんなに腹を立てても、あるいはショックなことがあったとしても、それをそのままの形では書くことをいさぎよしとはせず、あえてネットで拾った面白ニュースについて書いてみたりするとか。この点では、むしろ他科の医者のブログの方が素直、というか悪く言えば無防備なんじゃないか（で、そういうところに読者は共感したりするんだ、これが）。

　以前、ウェブで患者を中傷していた女医さんが新聞ダネになったことがあるけれど、そんな生々しい感情をウェブに叩きつけるだなんて、防衛の強い私にはとてもできそうにないですよ。

　ところで、上でリンクしたアマゾンの『精神医学的面接』の内容紹介はマクルーハンの『メディア論』と入れ替わってますね。

▼ バイアン

　フィル・モロン『フロイトと作られた記憶』（岩波書店）という本を読んだ。内容についてはまあ大したものではなかったのだが、この本の中でひとつ気になった部分があった。

イギリスの有名な精神分析家ウィルフレッド・バイアン

　という、仕掛人みたいな名前の人物が登場するのである。

　バイアンの綴りは"Bion"。日本では、この精神分析家の名前は「ビオン」と表記するのが普通だ。いや、別に訳者の不勉強を責めたいわけではない。綴りが"Bion"なんだから、英語として素直に読めばバイアンかバイオンあたりが妥当なところなんじゃなかろうか。それなのに、なんでまた日本では「ビオン」という表記が定着したのかが気になるのである。本人が、俺の名前は「ビオン」と読め、とでも言ったんだろうか。

　ちなみにビオンの理論はおそろしく難解で、私にはさっぱり理解できません。イギリスのラカンといってもいいかも。

▼ 楽しみにしている

　精神医学の本の話題が出たついでにもうひとつ。

　内海健『精神科臨床とは何か―日々新たなる経験のために』（星和書店）という本を読んでいるのだけれど、この本には、日本の精神医学界の大御所のひとりである土居健郎（『「甘え」の構造』で有名なひとである）が、帯文を寄せている。

本気で臨床に打ち込まない精神科医があまりに多過ぎはしないか。本書の著者が『精神科臨床とは何か』で一体何を語ろうとするのか、私は読むのを楽しみにしている。

　まだ読んでないってことを、帯でそんな率直に言わなくても。

▼ 生まれたばかりの息子のおへそにキスして6ヶ月収監

　ノース・キャロライナ州ローリーで、昨年8月に児童虐待の容疑で告発された夫婦が無罪となり、子供と一緒に暮らすことになった。

　告発されていたのは、チャーベルとテレサのハマティ夫妻。チャーベルは生まれたばかりの息子への性的虐待の容疑で告発され、妻テレサは性的な写真を撮った容疑で逮捕されていた。

　その写真というのは、チャーベルが裸の赤ちゃんのおへそにキスをしているというもの。この写真を見た警察は夫婦を逮捕し、クリストフという名前の赤ちゃん（現在1歳4ヶ月）は施設に保護され、異父姉のヴィクトリアは実の父のもとで育てられることになってしまった。テレサは保釈金を払って釈放されたものの、子供と会うことは許されなかった。

　チャーベルが6ヶ月間を刑務所で過ごしたあと、ようやく写真には犯罪的な意図はなかったことが認められ、告発は取り消されて家族は一緒に暮らせるようになった。

▼ ビオン

　きのう話題にしたウィルフレッド・ビオンについていろいろ調べてみた。ビオンの経歴は知らなかったのだけど、なかなか面白い人物である。

・インドのパンジャブ地方生まれ。インド人とイギリス人のハーフ。父親は土木技師。

・少年ビオンは腰をくねくね動かすマスターベーション（「ウィグリング」と呼んでいた）のとりことなっていた。

・第1次大戦では英国戦車部隊にて戦い、レジオン・ドヌール勲章を受ける。

・高校教師時代、男子生徒と友達のようにつき合っていたら、性的誘惑を受けているとして生徒の母親からいきなり訴えられ、結局学校を辞める。

・33歳で医師資格取得。

・作家サミュエル・ベケットを治療。

・40歳で結婚するまで性体験がなかった。

・若い女優Betty Jardineと結婚。長女誕生の3日後に妻死亡。

・50歳で精神分析家資格を取得。

（『ビオンとの対話』訳者あとがき、Psycho-Booksなどより）

　ちょっとヘンな人だったみたいです。

　まあ、精神分析業界は、自らペニスを切り落として死んだ人だの、生命エネルギー蓄積装置を作った人だの、ナポレオンの子孫にしてギリシャ王弟妃だの、ニーチェとリルケを手玉に取った女だの、婚約者を殺した人だの、クセのある人材には事欠きませんが。

　結局、なんで「バイオン」じゃなくて「ビオン」なのかはわからずじまい。

▼ "DOOM"予告編

　映画になったのか。予告編を見る限り、ごくありきたりなB級SFアクションホラー、というか『DOOM』なんだから、それ以外になりようがないよなあ。監督は『ロメオ・マスト・ダイ』の人。

▼ アイランド

　凄い主人公力（しゅじんこうぢから）だ！

　ちなみに「主人公力」とは、激しい銃撃戦や激突など、普通なら死ぬようなどんな場面をもくぐり抜けて生き延びる力をいうのだ。なぜ彼らは死なないのか。それは彼らの主人公力が高いからなのだ。この映画の主人公力はむやみやたらと高く、相手の撃った銃弾は決して当たらないくらいは序の口。車の側面からトレーラーに衝突されエアバッグが開かなくても無傷だし、70階建てのビルから落ちても死なない。たぶんこれは「君は特別だ……」というイメージトレーニングの成果ですね。さあ、あなたも主人公力を高めて無敵になろう。

　まあ、そういう映画である。

　ただ、『アルマゲドン』『パール・ハーバー』のマイケル・ベイ監督と聞いて予想したよりは面白かったですよ。クローンを扱ってるにしては、おそろしく深みのない話ではあるのだけど、それはマイケル・ベイだからしょうがない。でもクローンと社会の軋轢を描くこのあとがおもしろいとこなのに、なんでここで終わりにするかなあ。SFってのはこの映画の結末から始まるものなのに。

　あと、思わせぶりに出てきたオリジナルの子供とか、伏線が回収されてないのも気になる。私は、あの子供のためにスカーレット・ヨハンセンが自分の役割を全うすることを決意してユアンに別れを告げ、その後母子が抱き合っているところをユアンが見届けて一人静かに立ち去る、という泣かせる展開の伏線だとばかり思って観てましたよ。こっちの方がいいと思うんだけどなあ。

　そういうところも含め、主人公の行動はあまりにも単純で脳がないが、まあ頭が3歳児じゃしょうがないか。でも、3歳児がセックスを覚えたら、もう仲間たちの救出なんてどうでもよくなって3日3晩やりまくってると思うんだが。

　Xboxにmsnサーチと、マイクロソフト製品が出てきているのがアップル人気のハリウッド映画としては珍しいところ。ただ、いい人はアップル製品を使って、悪の組織が使ってるのがマイクロソフトという原則は守られている。

　それから、スタトレのニーリックス役のイーサン・フィリップスが出てる（もちろん素顔で）のでスタトレファンな方も注目（★★☆）。

▼ My Twinn

　そっくりだけど違う、違うけど平気。まさにそっくり人形展覧会。

　人形に双子というホラーの二大テーマを兼ね備えた逸品。日本のそっくり人形みたいにカリカチュアライズしていないところがかえって不気味。お祓いでもしなければ捨てられそうにない。

　さらにこちらの人形（人形なのだ）になると、もう不気味だと笑うことすらできなくて、これを買い求める人の心を思うと言葉を失ってしまう。

▼ こびと -Virtual Brownies-

　海外のブログをみていたら、"Kobito: Virtual Brownies"というヴァーチャル・リアリティ・システムが話題になっていて、なんじゃこりゃと思ったら、東京工業大学の学生が作ったものだった。去年、森山さんがレポートしたものですね。今度はSIGGRAPH 2005で展示されるらしい。

　子供が遊んでいる動画をみると楽しそうなんだけど、箱を押すことしかアクションがないのならすぐに飽きてしまいそう。こびとなら靴を直すくらいのことはしてほしいなあ。

　そういえば"Kobito"と"Hobbit"は似ているね。

▼ 姑獲鳥の夏

　そんなふくよかな傷痍軍人はいない（挨拶）。

　さて、ストーリーとしては意外なほどに原作通りなのだけれど、余韻も何もあったものじゃなく、あまりにもテンポが早いので、原作を読んでいない者にはわかりにくいことこの上ない。それにやっぱり監督はミステリーというものを根本的にわかってないんじゃないかなあ。どうも伏線が伏線として機能していない部分が多いように思えるのだ。たとえば原作では神経を病んだ関口の語り、榎木津の特異な能力などが真相をカムフラージュして読者を幻惑する役割を果たしていたのだけれど、映画では榎木津のエキセントリックさがあまり強調されていないので、目くらましとして機能していないきらいがある。

　実相寺監督は、映画の中でも繰り返し語られる「眩暈」を観客にも起こさせることを企んでいるようで、ほとんどの場面で斜めのカメラアングルを使っていていかにも不安定だし、子供が観たらてんかんを起こしそうな点滅もあれば、画面がぐるぐると回るシーンも多い。さらに神経を逆なでするのが、チーンという鐘の音と「キョキョキョキョキョキョキョ……」という（そう聞こえるのだ）効果音の繰り返しである。おかげで、もとから少し調子悪かった私は、すっかり気分が悪くなりましたよ。

　役者は誰が演じてもファンからは文句が出るだろうけれど、まあうまく演じていた方では。ただ、前述したように、榎木津の阿部寛はもっとはじけてもよかったかな。

　ところで、アイキャッチのようにところどころでその日の月齢データが差し挟まれるのだけれど、その中に毎回公転周期があるのが気になった。月の公転周期はいつだって27.32日で変わるわけがないではないか（★★）。