トップ    映画  精神医学  話題別インデックス  日記目次  掲示板  メール



←前の日記次の日記→
11月20日(水)

▼どうやら今週で終わってしまうようなので、『プロフェシー』を観に行く。プロフェシー、と呼べばなんとなくかっこいいが原題は"Mothman Prophecies"。直訳すれば「蛾男の予言」という情けないタイトルである。原作はジョン・A・キールの『モスマンの黙示』というB級オカルトノンフィクション。昔、国書刊行会の「超科学シリーズ」という箱入りの叢書で出ていた知る人ぞ知る奇書である(映画化に合わせてソニー・マガジンズから文庫で復刊されましたね)。
 MIBやらプロジェクト・ブルーブックやらトンデモ系のネタ満載だった原作とはだいぶ離れ、映画はシリアスで落ち着いた雰囲気の静かなホラー。地味だけどなかなかの秀作です。繰り返される目のアップとか、あちこちに登場する似かよった模様とか、一瞬だけ映る歪んだ顔とか、不気味さをかきたてる映像のマジックがうまいなあと思ったら、この監督MTV出身なのか、どうりで。
 『サイン』でも『ザ・リング』でも、だいたいホラーに登場する超常現象は何者かの善意やら悪意やらの現れだったりするものなのだけれど、この映画のモスマンというのは、「予言をするなどして人間界に干渉してくるのだけれど、人間的な善悪では量ることができず、人間にはその意図の理解しえない存在」という、ほとんどソラリスの海にも似た存在なのですね。これみよがしの悪魔よりも、むしろこっちの方が不気味かもしれない(★★★☆)

11月19日(火)

▼11月は毎年恒例、『SFが読みたい!』の年間ベストSFを選ばなきゃならない季節。今年もハヤカワから2002年に出版されたSFのリストが送られてきたのだけれど、このリストには書名、発行日、値段などのデータのほかに「備考」として、その本のジャンルが記されているのですね(たぶん、星敬氏がつけたものなんじゃないかな)。
 「SFアクション」「伝奇時代小説」など、納得のいくジャンルも多いのだけれど、中にはちょっと首をひねってしまうジャンル分けもあったりする。『マーブル騒動記』が「アニマル・パニックSF」というのは、確かにそうなんだけれどこのジャンルに当てはまる小説はそうはないような気がするし、『航路』が「臨死体験サスペンス」ってのも確かに正しいのだけれど……それってジャンルなんですか? あと、『平成三十年』が「近未来ディストピアSF」には笑いました。そうか、ディストピアSFだったのか。
 ちなみに、「本格SF」の認定を受けた日本作品は、『レスレクティオ』『どーなつ』『傀儡后』『太陽の簒奪者』『微睡みのセフィロト』『海を見る人』『妻の帝国』の7作。私としては、この中では唯一未読の沖方丁『微睡みのセフィロト』が気になるところです。

11月18日(月)

瀬川ことび『7』(角川ホラー文庫)読了。防府市にある飛座石船(Googleしてみたが見つからず。実在しない?)や熊本にある謎のトンネル遺跡トンカラリンなど山口・九州の遺跡を舞台にした伝奇ホラー。伝奇もののルーチンをきちんとなぞってはいるものの、枚数が短い上に、ネタが今一つ地味で、この手の小説のキモであるぶっとび具合が足りないので、かなり物足りない印象の作品。
 ただし、こういう伝奇ものだと、「女性=非理性=ケガレ=神秘性=巫女」といったステレオタイプなジェンダー観が何の疑問もなくまかりとおっている作品が多い中、後半でヒロインが伝統的な役割を演じることを拒否してキレまくるあたりがなかなか新鮮でした。ただ、その主人公も、不承不承ながらも結局は役割を受け入れてしまい、伝統に対して叛旗をひるがえすところまではいかなかったのが残念。ジェンダーによる役割なんかくそくらえ、とすべてを放り投げてしまったら、伝奇ホラーの前提をゆるがす大異色作になってたかもしれないのに。

11月17日()

▼きのうの項を参照のこと。

11月16日(土)

▼14日の『イリーガル・エイリアン』の感想の中で、最初の方に出てくるレポーターの「マイルズ・オブライエン」はスタトレのキャラにちなんだネーミング、と書いたのだけれど、なんと、これは実在するCNNの科学レポーターの名前なのだそうだ。これがCNNのマイルズ・オブライエン。で、スタトレのマイルズ・オブライエンはこちら。まったくの同姓同名。まあ、ソウヤーさんとしては、両方を意識して登場させたんでしょうけど。

▼ゲスト参加者の付き添いで、初めて京フェスに参加する。前夜はほとんど寝てなかったので眠いのなんの。意識を失うことが多かったので、企画の感想はパスしたいのだけれど、SFセミナーに比べてよくも悪くもこぢんまりとしていて仲間内の集まりという色彩が濃かったような(たとえばセミナーだったら、吉川良太郎さんに対して「猫耳についてどう思うか」という質問は飛ばないだろう)。
 眠い上に合宿になってからは鼻炎がひどくなって始終鼻をかみつづけ、見かねたとりこさんからティッシュを戴く始末。早めに寝てしまおうかとも思ったのだけれど、当日参加者には寝部屋の割り当てはなく、セミナーとは違ってちゃんと寝部屋の前に名前が張り出されているので、勝手に人の部屋で寝るわけにもいかない(まあ、それが普通なんだが)。仕方がないので企画が終わるまで待ち、終わると同時に企画部屋に敷かれた布団に入り即座に眠りに落ちる。
 翌日は「しょうざん」という着物関係の人には有名らしいスポットで紅葉狩りをしたり、京都名物だとかいうにしんそばを食べたり、金閣寺を見たり(どう見ても最近作られたとおぼしき雨どいがご丁寧に金色に塗られていて、しかも屋根からにょっきりと長く突き出しているのが妙でした)、風邪を引いたり。さっぱり体力のない私である。

11月15日(金)

私の日記にリンクしていたある日記サイトに、次のような記述を見つけた。
ここの日記、自分が中学生だった時からなんとなく閲覧してるんだよな…何故だろう(謎)。
 中学生の頃からみてますか。で、どうやらサイトオーナーは現在大学生らしい。当サイトを開設したのは1997年だから、もう5年。5年あれば、中学生が大学生になっても不思議はない。不思議はない、とはいえ……なんかめっきり歳をとったような気がするのは気のせいか。

11月14日(木)

ロバート・J・ソウヤー『イリーガル・エイリアン』(ハヤカワ文庫SF)読了。スター・トレックネタ多すぎ。「スポックの父親」みたいにわかりやすいところ以外にも、たとえばはじめの方に出てくる「マイルズ・オブライエン」という名前はエンタープライズの転送主任(のちにDS9のエンジニア)から借りたネーミングだし、中盤に出てくる「ラチナム」はDS9に出てくる貴金属の名前。さらには翻訳機で異星人と簡単に意志の疎通ができるとか、「宇宙連邦」を暗示した箇所とか、楽観的かつ良識的かつきわめてアメリカ中心的な宇宙観がスタトレ(特にTNGあたりね)そっくり。さすがソウヤー、スタトレの大ファンだけのことはあります。
 ただ、スタトレが物語としてはおもしろくとも、SFとしては今ひとつ物足りないように、この作品も確かにおもしろくすいすいと読んだのだけれど、SFとしてはあまりに世間の良識におもねりすぎているようで、どこか物足りないものを感じてしまうのも確かなのである。

11月13日(水)

マレー・ラインスター『地の果てから来た怪物』(創元SF文庫)読了。いやあ、面白かった。これはまさに50年代SFホラー映画の世界そのまんまじゃないですか。『原子怪獣現わる』とか『地球の静止する日』とか、そして何よりも『遊星よりの物体X』とか。南極に近い孤島の基地に出没する怪物、という設定はどう考えても『物体X』の北極を南極に変えただけだし、"The Monster from Earth's End"というタイトルも、いかにも50年代SFホラー映画っぽい(あの頃の映画には「なんとかフロムなんとかかんとか」というのがやたら多いのだ)。鳴り響く雷鳴。大げさに悲鳴を上げるヒロイン。映像にするなら絶対にモノクロ。登場する怪物も、CGなんかじゃなくてギクシャクと動くちゃちな作り物が似合いそうだ。
 訳はいささか古くて読みにくいところもあるのだけれど(ルイス・キャロルの「怪獣狩り」というのは「スナーク狩り」のことなんだろうな)、SF映画が好きな人には強くお薦めします。ついでに、閉ざされた孤島を舞台にした心理ホラーとしてもお薦め。それにしても、今だったらこの作品、SFじゃなくてホラーに分類されるだろうなあ。

11月12日(火)

▼で(きのうの続き)、続いてスタトレの新シリーズ「エンタープライズ」が始まったのだった。このシリーズ、時代設定は22世紀、最新シリーズではあるものの、ヴォイジャーやディープスペース・ナインからはぐっと時代をさかのぼって、カーク船長よりも前の時代の話ですね。光子魚雷やらレプリケーターやらスタトレでおなじみのガジェットはまだ発明されてないし、異星人とのあいだで当然のように言葉が通じたりもしない。転送も生物以外には使えるけど、人間に使うのはまだまだ……という段階。
 初回を見た感想としては、いまのところまだあんまりクルーの個性もはっきりしない感じですね。今までのシリーズには必ずいた、スポック−データ−オドー−ドクター(その後セブン)タイプの「人間以外なのだけれど実はいちばん人間的」なキャラがいなくなっているのが残念なところ。クルーの中で唯一のヴァルカン人がお色気担当ってのもどうかと思うし。
 まあ、いまのところはとりあえずホシ・サトウ萌えかな。

11月11日(月)

▼そういえばきのうはスーパーチャンネルで、スタートレックまるごと12時間(去年までは24時間だったのになあ)が放送されまして、DS9がついに最終回を迎えたのでありました。TNGやVOYといった他のシリーズとはまったく違った大河ドラマ風のエンディングはなかなか感動もの。これは、これまで長いことこのシリーズを見続けてきた人にしか味わえない感動に違いない。
 まあ、細かいところを言えば不満は数限りなくて、可変種ってもっと凄みがあるくらい強くて、クリンゴンやロミュランの上層部に紛れ込むくらい朝飯前だったはずなのに、いつのまにこんなに弱くなったんだ、とか(登場時は異様に強かったボーグもがあとになればなるほど弱くなっていったのと同じか)、初回からの「預言者」がらみのストーリーが、ドミニオンの話とどう絡み合うのかと思っていたら、結局最後までかみあわないままですか、とか(だいたい、「選ばれし者」シスコの仕事ってあれだけですか。たったあれだけのために、わざわざシスコの生まれる前から準備してきたんですか)。
 中でも最大の不満は、ジャッジア・ダックス役の役者さんが第6シーズンで降板してしまったことですね。ジャッジアの死はあまりにも唐突であっけなかったし、後を引き継いだエズリ・ダックスもかわいいんだけど、たった1シーズンではキャラクターを深めるには短すぎたように思えます。


←前の日記次の日記→
home