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10月9日(水)

▼しばらくのあいだ更新さぼり中なんですが、なんか今日に限って妙にアクセスが増えていたのでとりあえずひとこといっておきます。

 ここには竹野内豊はいません。マンガの『サイコドクター』とも関係ありません。以上。

9月25日(水)

飛浩隆『グラン・ヴァカンス』(早川書房)読了。『ヴァーミリオン・サンズ』、「さようなら、ロビンソン・クルーソー」などなど、「リゾートSF」の系譜というのがあるとすれば、確実にそこに連なる作品。確かに目新しさはないんだけれど、どことなく「懐かしいSF」の香りがするのがいいじゃないですか。人間の訪問が絶えてから千年、AIたちだけが暮らしている仮想リゾート、というのは実に魅力的な設定で、この設定を思いついたことだけでも最大級の拍手を送りたい。ただ、永遠に続く夏、浜辺、繊細な少年と奔放な少女、歴史のあるホテル……と、魅力的なアイテムがそろっているにも関わらず、それほどページ数の進まぬうちに、いきなり区界の大半が消滅→ホテル攻防戦という展開になってしまうのは、いささかタメが足りないようにも思えました。もうちょっと終わらない夏の風景をじっくりと味わわせてくれてもよかったんじゃないだろうか。
 ただ、やっぱりこの作品、設定自体にかなり無理があるように思えるのですね。
 このヴァーチャルな世界〈夏の区界〉では、どの家庭にも母親、父親など空白になっているロールがあって、人間のゲストはそのロールを買って家族の一員としてそこにやってくる、という。
 どうやら〈夏の区界〉は、性的倒錯者向けの区界らしいのだけれど、それがどうしてこんなのどかな南欧風の田舎町である必要があるんだろうか。私なら南欧の田舎町でゆったりとヴァカンス気分を味わいたくとも、別にそんなとこまできて倒錯行為にふけろうとは思わないのだけれど。まあ、人は好き好きだから、そういう需要もあるのかもしれないが。
 しかし、それなら他のゲストと顔を合わせかねないシステムはどうかと思うし(白昼の街中でAI相手にSMプレイしてる最中に他のゲストとすれ違ったら、いくら素性は知られないとはいえものすごく気まずいと思うんだけど)、さらにアマゾネスとか三婆とか親父とか、やたらとマニアックなキャラばっかりで、美女も美形もほとんどいないのはどうかと。
 さらに、モノにするためにはフラグをたてる必要があるキャラクターがいるのだけれど、とあるゲストが、そのフラグになっている生き物を殺してしまうのですね。それ以降その生き物が登場しないところをみると、どうやら死んだ生き物はそのままらしいのだけれど、これは営業的にまずいんじゃないだろうか。フラグが立てられなくなってしまったら、ゲストからの苦情殺到だと思うのだが。
 それから、倒錯者相手のAIとなれば、人体損壊や、さらには殺されることすら覚悟しとかないといけない。AIたちは中途半端に過去のゲストの記憶を持っているように思えるのだけれど、ゲストが去ったら肉体の傷も記憶もさっぱりリセットした方が合理的だと思うんだけど。私には、AIたちが連続した記憶を持ち続けなければならない理由がよくわかりません。
 だいたい、そもそもSMマニアというものは、人間とは似て非なるAIたちを責めさいなむことに関心を持つものだろうか。倒錯者というのは、相手が自分と同じ人間だからこそ興奮するのではなかろうか。なぜなら、倒錯というのはひとつの愛のかたちであるのだから。

9月24日(火)

▼飛浩隆『グラン・ヴァカンス』の感想はまたあとで書くとして、とりあえずひとこと。
 「グラン・ヴァカンス、そこはお乳なの」(林家木久蔵)というのはどうか。
 いや、どうかと言われても困るだろうけど。

9月23日(月)

神林長平『ラーゼフォン 時間調律師』(徳間デュアル文庫)読了。実は私はアニメの『ラーゼフォン』を最初の数回しか見ていないのだけれど、えーと、こんな話じゃなかったような気がするんですが。アニメと似た名前の人物は登場するものの、キャラの配置も役割も全然違うし、だいたい主人公からして全然違う。神林長平の名前なんて全然知らないアニメ版のファンが読んだらどう思うのか、激しく不安であります。
 まあ、神林長平の読者が読めば、いつもどおりの神林節の、現実とそれを認識する主体をめぐる物語なのだけれど。登場人物は「フムン」と相槌うつし。
 作家には、さまざまな作品を器用に書き分けるタイプと、愚直なまでに同じスタイルを守り続ける作家がいるけれど、神林長平は明らかに後者。アニメのノヴェライズ(?)でも、やっぱり神林長平は神林長平なのだった。

9月22日()

▼宣伝です。
 花風社という出版社から、ランディ・スター『俺、死刑になるべきだった?』という本が出たのですが、この本の解説を書かせていただきました。翻訳は、うちの掲示板にもときどき書き込んでくださっているニキ・リンコさん。本屋で見かけたらぜひ手に取ってみてください。
 内容はというと、これが酒とドラッグに溺れたあげく母親を殺してしまい、「精神異常のため無罪」("Not Guilty by Reason of Insanity" これが原題)の判決を受けた男の手記。彼は重警備の州立病院で治療を受け、驚いたことにみごとに立ち直り、現在は司法医療施設でかつての自分と同じような人たちを救うために働き、幸せな生活を送っている、というわけなのだ。つまり彼の存在自体が、「精神異常者は野放しにするな」といった論調に対するアンチテーゼになっているのである。
 断章のよせあつめみたいな感じでいささかまとまりのない本ではあるし、あくまで個人の手記なんで系統だった議論はないのだけど、触法精神障害者の処遇の問題は日本でもタイムリーな話題だけに、今翻訳される価値は充分にある本かと。

9月21日(土)

▼私のアイルランド旅行記を読んでくださった方が書いた旅行記を発見。読んでいるうちにアイルランドにまた行きたくなってきました。しかし、日数はほとんど変わらないのに名所を効率よくめぐっているのはうらやましいなあ。私が行きたかったのに涙を飲んだ名所をほとんど訪れてるじゃないですか。行ってないところといえば北部のジャイアンツ・コーズウェイとかスライゴーくらいのもの? ツアー旅行ってのもいいもんですね(もちろん個人旅行は個人旅行のよさがあるのだけれど。イヤな奴と旅の間中顔を突き合せなくてすむとか。リンク先の方もそれでだいぶ不快な思いをされているようですが)。
 あと、
 食後、周りに数軒だけある土産物屋を見物。アラン諸島のお土産といえば、勿論、アランセーターに尽きる。もっとも、私は今回、セーターを買うつもりはなかった。あんな分厚くてごわごわしたセーター、近年とみに温暖化が進む日本の関東地方で、着る機会なんてないだろうと。
 というあたり、実に先見の明がありますね(結局買ってしまってるのだけど)。
 私は、アイルランドで13000円も出して買ってきた分厚いアランセーターなのに、この2年間ほとんど袖を通してませんよ。だいたい、アランセーターってのは防寒用なので、厳冬に外を歩くときにはちょうどよくても、室内に入ったり電車に乗ったりすると暑くてたまらないのです。セーターなので脱ぎ着も簡単にはできないし、東京ではほとんど無用の長物であります。


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