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12月31日()

▼飛行機で妻の実家山口へ。
 山口では、来年「きらら博」という博覧会をやるらしく、空港から山口市内まで、そこら中にのぼりやら立て看板やらがある。で、きらら博って何。東京じゃ、きらら博なんて聞いたことすらないのだけど、こんなことで果たして人が集まるんだろうか。
12月30日(土)

▼年賀状を死ぬ気で書く。

▼今日は、年末恒例、今年の映画ベスト10。ただし、ビデオや名画座で見た映画は除く。

1.サウスパーク 無修正映画版
2.スリーピー・ホロウ
3.風雲 ストームライダーズ
4.アイアン・ジャイアント
5.チャーリーズ・エンジェル
6.遠い空の向こうに
7.Stir of Echoes
8.アメリカン・ビューティー
9.13F
10.マルコヴィッチの穴

 やっぱり今年は『サウスパーク』につきますね。オタク必見。『風雲 ストームライダーズ』はあんまり評判よくないようだけど、あの有無を言わせぬパワーは誰がなんと言おうと好きだ。"Stir of Echoes"はアイルランドで観た映画。リチャード・マシスン原作、ケヴィン・ベーコン主演、と決して地味な映画というわけではないのになぜか日本未公開。なぜ?
12月29日(金)

▼『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でも観ようかと有楽町に出たものの、劇場は長蛇の列で入れず。まさかラース・フォン・トリアーの作品が全国公開された上ににこんなに人が並ぶ日が来ようとは。がらがらの小さな映画館で『ヨーロッパ』を観たときには、こんな日が来るなんて想像すらしなかったよ。生涯一オタク監督かと思ってたのに。
 仕方なく代わりに観ることにしたのが、脳天気山岳映画『バーティカル・リミット』。次から次へと繰り出される危機が、あまりにもわざとらしくてげんなり。クレバスを爆破するために液体のニトログリセリンを持ってかなきゃいけない、という設定にはかなり無理があるし、いくらなんでも標高7000メートル以上のところであんなに飛んだり跳ねたりできるわけないと思うんだが。結末はハッピーエンドのように見せかけているが、3人遭難して6人で助けに行き、結局生還したのはわずか3人ってのは、誰がどう考えても失敗だろう。
 山岳ものの作品というと、夢枕獏や谷甲州など、自分との戦いとかストイシズムとかいった精神性がつきものだと思っていたんだけど、『クリフハンガー』といいこの映画といい、ハリウッド製山岳映画にはそんな精神性がみじんも感じられないのはどうしたわけか。
 そうそう、DS9のドクターが、イスラム教徒のポーター役で出てます(★★☆)。

▼有楽町へ行ったついでに、「東京ミレナリオ」なるものを見てきた。なんだかルミナリエのアナグラムみたいだが、その名の通り神戸のルミナリエの真似をして、東京で今年から始まった催しらしい(でも本当に来年もやるのか?)。イルミネーションで飾られた通りは一方通行になっていてかなりの混みよう。
 後ろを歩いていた女子高生は「チョーきれい」を連発していたが、ま、正直言ってまあまあきれいかな、というところか。わざわざ見にくるほどのものでもないような。
 「田舎のちょうちん祭り(何それ?)の方がきれい」(妻)、「土台が固定されてなくて不安定そうだけど、蹴飛ばしたらどうなるんだろう」「やっぱり、あんず飴屋とか焼きとうもろこし屋とかの出店がほしいところだよなあ」(私)などと、勝手な会話ばかりしていた私たちである。
12月28日(木)

▼仕事納め。

▼ローソンに、印刷を頼んであった年賀状を取りにいく。
 私が選んだ図柄は、宇宙の暗黒を背景に、手前に月面、その向こうに地球、太陽と一列に並んだ、要するにあからさまに『2001年宇宙の旅』の名場面のパクリめいたもの。なんかSFっぽいのでいいかな、と思って安易にこの図柄にしたのだけど、できあがったものを改めて見てびっくり。
 絵の上には、新年の挨拶文として、堂々とこう印刷してあったのだ。

WELL COME NEW CENTURY!!

 新世紀しょっぱなの挨拶が"WELL COME"。
 とほほ。
 ついでにいえば、「新世紀へようこそ」の意味なら"TO"を入れてほしいところ。
 どうやら、私はこれを恩師やら同僚の医者やらに出すことになるらしい。うひい。
 おまけに私は、伊藤典夫先生にも、年賀状を出さなければならないのである。安っぽい『2001年』のパロディめいた図柄に"WELL COME NEW CENTURY"。これを、あろうことか『2001年宇宙の旅』を訳した本人に出すのか。
 ……何かの罰ゲームのようだ。
 まあ、注文する前に確認しなかった私が悪いのだけれど。
12月27日(水)

ふぢーさん黒書刊行会、とあちこちで話題騒然、「21世紀SFのキイパースン」の梅原克文の項を書いた風野です。豪胆王と呼んでください。内容証明付郵便が送られてきたらどうしよう。ドキドキ(どこが豪胆だ)。
 でも、SFと袂をわかったとはいえ、かりにも年間ベストSFの1位を獲得したこともある作家を一切無視したとしたら、それも大人気ない態度だと思うなあ。それに、キイパースンに含まれてるからといって即SF呼ばわり、というわけでもないし。平野啓一郎とか、明らかに一般的にはSF作家じゃない人もけっこう含まれてるわけだしねえ……<見苦しい言い訳。

▼火浦功『大豪快。』(角川スニーカー文庫)、乙一『失踪HOLIDAY』(角川スニーカー文庫)(乙一は嫌いではないのだけど、「傷KIZ/KIDS」というタイトルのセンスは、なんだか「Cry -昏い-」みたいでどうかと思います)、藤原正彦『心は孤独な数学者』(新潮文庫)、黒岩比佐子『伝書鳩』(文春新書)、志村有弘編『怪奇・伝奇時代小説選集(15)』(春陽文庫)(←まだ続いてるよ……)購入。
12月26日(火)

▼本日当直。

▼医学業界には学会が山ほどある。地方会や研究会まで含めれば、その数なんと1年に約1600! 平均して毎日5つは学会が行われている勘定になる。当然ながら、すべてに出ることなんてとても不可能。精神医学界だけでも、日本精神神経学会を筆頭に、日本神経精神医学会、日本神経精神薬理学会、日本精神病理学会、日本社会精神医学会、日本産業精神保健学会などなど、その数46。全部に出ている精神科医はまずいないだろう。
 医学の世界はこれほどまでに細分化されていて、全体を見通すことなんて誰にもできやしない。
 そんな学会の情報が書かれた雑誌をながめていると、毎日のように聞いたこともないような学会が開かれていることがわかってなかなか楽しい。いや、わかったからといって別に何になるというわけでもないのだが。
 例えば、
日本味と匂学会第34回大会
乳房文化公開研究会
第36回熱測定討論会
第8回日本発汗学会総会
 味や匂い、熱測定や発汗の最前線のトピックを発表する学者たち。しかも「熱測定」なんて第36回である。歴史があるのだ。きっと、熱測定をめぐって幾多の熱い討論が繰り返されてきたに違いない。想像しただけで、なんとなくドキドキしてきたりしませんか? しない? しないならいいです。
 第10回日本サイトメトリー学会総会は、「サイコメトリー」とは関係なさそうだ。第16回日本Shock学会はなんで横文字なんだろうか。しかも頭大文字。第7回よりよい口唇口蓋裂治療を考える会は、例外的に実にわかりやすいネーミングである。
 第27回比較心電図研究会は、「対象動物は鳥、犬、カニクイザル、齧歯類で、心電図と心筋の活動電位を検討」するのだそうだ。第25回比較内分泌学会大会では「魚類におけるプロラクチンの分泌とその作用」「脳腸ペプチドは脳が先か腸が先か」などというシンポジウムがあるらしい。よくわからないけどなんだか聞いてみたい気もする。
 第27回日本股関節学会第27回日本肩関節学会なんてのもある。同じ関節でも、肩と腰では学会が分かれているのである。細かいですね。「日本中指第二関節学会」なんてあったら楽しそうだなあ(ありません)。
12月25日(月)

▼グレッグ・イーガン『祈りの海』(ハヤカワ文庫SF)読了。うーん、うなるしかないね、こういうのを読むと。イーガンは長編もいいけれど、短編のキレはまた格別。バカSFという言葉が似合う長編に対して、短編は触れたら切れそうな凄みがある。
 瀬名秀明の丁寧な解説にもあるとおり、すべての作品のテーマは「自分とは何か」というきわめて普遍的な問題。なのだけど、それが非常に現代的で、SFでしかできないやり方で語られているのですね。
 80年代のサイバーパンクは好んでコンピュータへのジャックインや人体改造をスタイリッシュに描いたけれど、そうしたテクノロジーによって、ほかならぬ「自分」がどんな変化を受けるか、という点はあんまり問題にされなかったように思う。たぶん、そこをねちねちと書いてしまうとスタイリッシュじゃなくなってしまうからだろう。サイバーパンクの登場人物たちは、人体の変容を当然のものとして受け入れ、適応している。そんな彼らの姿はとてもまぶしかったし、カッコよく見えたものだ。
 でも、本当にそうだろうか。自分の意識や感情といったものが単なる化学物質の作用だということがわかったとしたら、あるいはコンピュータ上に構築されたシミュレーションだったとしたら。自分とは、自由意志とはいったい何なのだろう。サイバーパンクがあっさりと切り捨てたこのテーマにあくまでこだわるのが、イーガンである。その筆致はサイバーパンクほど華麗ではないかもしれないけれど、鋭利で厳密だ。そしてこのテーマは、感情をつかさどる化学物質が明らかになり、性格と遺伝子の関係が解き明かされつつある現在、とても切実で現代的な問題だといえよう。だから、イーガンの作品はどれも切実で心にしみるのだ。
 ただ、私には、解説の瀬名さんがいうほど初期作品より後期作品のほうが優れているようには思えないのですね。私が最も気に入ったのは、「貸金庫」「ぼくになることを」「百光年ダイアリー」など初期の作品だし、通読した場合、進歩よりも、むしろ一貫性の方が目につく。特に「貸金庫」の最初と最後の三行には完全に打ちのめされました。
 新刊ではあるのだけれど、早くも「未来の古典」となることを運命づけられた短編集である。読め。

▼スピリッツ「20世紀少年」の突然の展開に驚く。なるほどそう来たか。新連載時冒頭のアレもミスディレクションだったわけね。やるなあ。

▼パトリシア・ハイスミス『生者たちのゲーム』(扶桑社ミステリー)、クリストファー・ファウラー『スパンキイ』(創元推理文庫)購入。
12月24日()

▼クリスマス・イヴ。妻は東山紀之ディナーショーに出かけ、私はひとりで夕食を食べ『祈りの海』を読む。一作目の「貸金庫」からアイディアの鮮烈さに感歎することしきり。

▼SFマガジン届く。私が書いたのは「21世紀SFのキイパースン」。ほかの執筆者たちの巧みな文章芸に比べ、私の書いた文は硬いなあ。反省。
12月23日(土)

▼ダン・シモンズ『エンディミオン』(早川書房)読了。読了、とはいうものの、全然終わってないじゃないか! ラストまで読んでも、問題は何一つ解決されていないし、伏線も放り投げられたまま。うーん、これはすぐに続きを読めってことなのかな。おもしろいからいいけど。
 ま、普通ならこんな終わり方をされたら怒るところなんだけど、この作品に限っては、終わってなくても無類におもしろいので許す。物語は、さまざまな惑星を巡るエンディミオンとアイネイアー一行の旅と、彼らを追うデ・ソヤ神父大佐を交互に描く、直球勝負の冒険SF。美少女は出てくるわ、いい味を出すキャラクター(宇宙船とかね)は出てくるわ、翻訳SFには珍しくリーダビリティの高い作品である。もともとシモンズはストーリーテリングのうまい作家なのだけど、これほど読みやすいのはこなれた訳文の力も大きいはず。酒井さんに感謝。
 アイディア、ストーリー、読みやすさと三拍子そろっていて、SF初心者の入門用にも最適な作品だと思うんだけど、まあ、この巻に進む前にこの前の2巻を読まないといけない上、続きまで読まなきゃならないのがつらいかな(単独でも十分おもしろいのだけど)。

▼軍艦島(をモデルにした島)を舞台にした恩田陸の中篇のタイトルは『puzzle』、そして同じく軍艦島を舞台にしたテレビドラマ「深く潜れ」の主題歌はtohkoの「PUZZLE」。偶然というのはおそろしいものである。しかし、こんなことに今ごろ気づく私も情けない。
12月22日(金)

東京新聞より、水道水フッ素化 歯科医師会が『地域合意』条件に容認。「水道水フッ素化をめぐっては歯の表面に斑(まだら)状のシミが生じる斑状歯(はんじょうし)問題など健康面に与える影響や、虫歯が減ることによる開業医への影響を懸念し、同医師会は態度を留保してきた」のだそうだ。「虫歯が減ることによる開業医への影響」って、確かにそりゃそうなのだが、いくらなんでも正直すぎるような。
 考えてみれば歯医者に限らず、医者というのは矛盾に満ちた商売である。盛んに病気の予防を呼びかけるくせに、誰もがそれを遵守して病気が少なくなれば商売上がったりになってしまうのである。ちょっとくらい予防したからって、病気なんてなくなるわけがない、とタカをくくっているのかもしれない。ひねくれてますね。

「馬鹿っ母」はなんと読むのか。「ばかっはは」は読みにくいし、「っは」というのは日本語にはない発音である(「バッハ」とか外来語は除く)。日本語には「意地っ張り」「開けっぴろげ」のように「っ」のあとは半濁点がつく、という規則があるので、そう考えると「ばかっぱは」になるが、「ぱは」はいかにも変だ。「ばかっぱぱ」は明らかに間違っているし、音読みにして「ばかっぼ」にしてもごろが悪い。いったいなんと読めばいいのだろうか。
12月21日(木)

▼新しいパソコンになってからどうも文章がうまく書けない。新しいパソコンのキーボードは、前のキーボードとはキータッチがかなり違うのだ。なんか調子が狂うんだよなあ。しかし、キーボードが替わっただけでこれほど書きにくくなるとは。「弘法は筆を選ばず」の境地は遠い。

▼今日は去年の7月29日と同じく鑑定業務。鑑定業務が何なのかはリンク先の日記を読んでください。
 今回も、3時過ぎまでまったく通報はなく、2階の待機室でただひたすら分厚い『エンディミオン』を読み続けていたのだけど(おかげでついに読み終わったよ。感想は明日にでも)、3時10分くらいに職員が上がってきて「通報がありました!」とのこと。
 二人で診察をして、ピンク色の用紙に診断内容を書き込む。「要措置」に○をつけたときにはちょっと緊張。私のこの○ひとつで、強制入院になるか否か、患者さんの運命が決まってしまうのだ。
 5時前に仕事は終わり、解散。
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