▼16日に書いた、月曜ドラマスペシャル「宗像教授の伝奇考」を見ました。白鳥伝説、たたら製鉄、ヤマトタケルなど、意外にも原作の要素はきちんと入っていたのには驚き。もちろん、温泉サービスシーン(高橋英樹の尻がサービスとよべるのならば、だが)とか、大げさな効果音とか、「私がやったんです」と泣き崩れる女とか、2時間ドラマならではのクリシェも山ほどあってげんなりするのだけれど。これってシリーズ化するんだろうか。
▼ホンダ 人間型ロボット「ASIMO」を開発、より高度な動作を。ずいぶんちっちゃくなったなあ。それにしても、このネーミングは……。なんだか突然「ヴォミーサ!」とか叫び出しそう。公式には「ASIMOはAdvanced Step in Innovative Mobilityの略」なんだそうだけど。
▼以前、冬樹さんの日記でもネタにされていたが、20日ほど前に(10/29)、うちにこんなメールが来た。
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突然のクイズ失礼いたします。このメールは掲示板等に
書き込みされた方にお送りしています。誰だこいつ!
気持ち悪いなぁとお思いでしょうが、お気になさらず。
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では、早速クイズです。
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Q:人間の体の中で一番大きい細胞は何の細胞でしょう?
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なぞなぞではありません。オチもありません。
知ってそうで知らない!
理系出身の方は簡単すぎてゴメンナサイ!
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A:答えは後日メールでお送りいたします。
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後日お送りする答えのメール以降、さらにこちらからメール
をお送りすることは一切ございませんが、
答えも知りたくない!二度とメール送ってくるなと言う方は
こちらへ http://xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx
アドレスを削除させていただきます。
以上です。失礼いたしました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━ from:一般常識研究家.
スパムメールなのは間違いないんだけど、差出人の目的がまったく不明なのが謎である。いきなり「突然のクイズ失礼いたします」はないよなあ。単にメールアドレスを入力させて、生きているアドレスを確かめるためだけの目的かもしれないとも思うが、だとすれば、後日の答えを期待させるのは逆効果ではなかろうか。
クイズ自体もけっこうあいまいで謎。正解、というより出題者が想定している答えが何なのかが気になる。「卵細胞」というのがクイズではありがちな答えだが、これは女性の場合にしか当てはまらない。
こないだのソウヤー歓迎会で瀬名秀明さんにお会いしたのだけれど、なんと、瀬名さんのところにもこのメールが来たそうだ。瀬名さんもこの解答が気になるようで、「脊髄の神経細胞でしょうか」と首を傾げていた。確かに、長さでいえばそうかもしれないなあ(軸索の長さは1メートルくらいあることもあるからね)。
いったい出題者の想定する答えは何なのだろうか。あれから20日近くたつのに、「後日お送りする」というメールは全然来ない。どうした一般常識研究家。つまんない答えでもなんでもいいから、ちゃんと責任を持って解答編を送ってくれ。
▼今日は精神保健指定医として隔離拘束の指示をしなければならないので休日出勤。暴力患者の診察をしたり、自傷患者の説得をしたり。
▼「死亡」診断の25分後に65歳男性、生き返る。昔なら、「不思議なこともあるものだ」といった調子で綺譚として語られたような話だが、今じゃ「同署は診断に問題がなかったか調べている」だもんなあ。せちがらい世の中になったものである。
▼ファーマーの『リバーワールド』TV化。製作総指揮は『ダーク・シティ』のアレックス・プロヤス。
▼なんだか最近すっかりネットウォッチ日記になってしまったような。
▼早瀬優香子会見記。おお、早瀬優香子は生きていた! 写真入りの、実に感動的な会見記です。
といっても早瀬優香子のことなんか知ってる人少ないだろうなあ。15年くらい前に「サルトルで眠れない」とか歌ってた人です。1989年のアルバム『薔薇のしっぽ』を最後に姿を消してました。入院説、死亡説などが飛び交っていたのだけど、この会見記で10年ぶりに無事が確認されたことになります。ああ、ネットやっててよかった。
ところで、戸川純は今どうしているんでしょうか。
▼某誌の原稿を書く。ほいほいと引き受けたものの、いやはや作家紹介というものがこんなにたいへんとは。月末までは苦労が続きそう。
▼広末涼子サイン入り『アルジャーノンに花束を』が35万8000円で落札。広末ですら35万ですよ。やっぱり300万ってのは無理があるんじゃ、平井先生。
▼森総理、「電気がなければiモードを使えばいいじゃないか」発言。お前はマリー・アントワネットか、と誰もが思ったろうなあ。それになぜ首相たるものが国際会議で一企業のサービスを礼賛する?
これはもう、失言防止スーツを使うしかないのだろうか。
▼今ごろ梅原克文『ソリトンの悪魔』(ソノラマノベルス)読了。
評価の高いこの作品だけど、やっぱりこの作者の書くものは私には合わないや。ぎっしりと詰め込まれたガジェットの数々、バカSF的奇想、アクションに次ぐアクション、と一気に読ませるパワーは確かにすばらしいと思うのだけど、人物描写と文体がそれを台無しにしているように思えてしまう。
登場人物たちは揃いも揃って、最初から最後まで叫んだり怒鳴りあったり泣き喚いたりしているばかりで、理性的な人物がひとりもいないし(特に主人公の元妻など、とても科学者とは思えないヒステリーぶりである)、彼らの間の人間関係は常にぎすぎすしている。人間的に好感の持てる人物がひとりもいないのだ。私は、この小説の登場人物とは誰とも友達になりたくありません(タイタンボールは別として)。
さらに、奇をてらった妙な比喩が多く、文体が軽いのも難点。作者はまだ、壮大な物語を語るにふさわしい文体を獲得できていないんじゃないだろうか。
そういうところを気にせずに物語に没入できれば、これは最高におもしろいSFアクションなんだろうけど、私はどうも気になってしまうんだよなあ。これは不幸なことなのかも。
▼書店で『ザ・スタンド』上巻を発見。ちょっと読みたいような気もするが、ものすごい分厚さと重さにげんなり。しかし、帯の文句はどういう意味なんでしょうね。
この傑作、この名訳をみなさんに読んでいただくために……
定価(本体3000円+税)!!
なぜ「!!」がこんなところについているんだろう。3000円は破格の安値ですよ、といいたいんだろうか。高いと思うんだけど。
▼テレビ雑誌を見ていたら、意外な番組を発見。
20日(月)21:00
月曜ドラマスペシャル秋の旅情サスペンス(3)
「歴史ミステリー 宗像教授の伝奇考」
星野之宣原作 土屋斗紀雄脚本
まさか、星野之宣が2時間ドラマになるとは思いませんでしたよ。「宗像教授の伝奇考」とタイトルが微妙に変わっているのが謎。ちなみに、こんな話らしい。
大学で民族学を教える宗像教授(高橋英樹)は大の甘党。悩みや心配事がある時は大福を食べると解消するという、ユニークな性格だ。
宗像がトルコの研究旅行から帰国すると、ルポライターの友人が殺されたことを知らされる。宗像は、彼から時効寸前の殺人事件を追い続けた手記を、発表する前に読んでほしいと頼まれていた。だが、研究旅行と重なっていたため、キャンセルしていたのだ。警察の調べによると、彼は取材で訪れた島根県出雲で殺害されたという。
そこへ、出雲のある山で発見された七星剣という剣を学生が持ち込んでくる。その出土場所が友人が殺された場所と近いことに気がついた宗像は、助手の亮一(植草克秀)と、すぐさま出雲へ飛ぶ。(ザ・テレビジョンより)
トルコから帰国、七星剣というあたりからすると、原作は第一集巻頭の「白き翼 鉄の星」のようなのだが……。白鳥伝説は出てくるのだろうか。しかし、大福……。
ちなみに、番宣ページはこちら。
▼宇宙ステーション「ミール」、来年2月に太平洋に落下へ(ロイター)。「恐怖の大王だ」とかいって騒ぐ人はもういないのかな。
▼平井和正秘蔵品オークション、未だ入札者ゼロ。このオークション、目的は「ポーリング博士のビタミンC健康法」の電子ブック化なのだそうな。この本って、平凡社ライブラリーで出てたよね。今入手困難なのかな? bk1では「お取り寄せ」になってるけど。
平井和正秘蔵品オークション。『幻魔の標的』300万円の値段に、誰がそんな値を、と吃驚したのだが、入札件数は0件(15日23:55現在)。つまり開始価格が300万ってこと? そりゃムチャというものではないのですか、平井先生。
なお、ヒライストの妻によれば「30万までなら出したのに」とのこと。私にはわからん価値観の世界である。
ZAKZAKより「自分のわいせつ画像販売した“勘違い女”」という記事。「CD−ROM1枚6000円、ネットアイドルと錯覚か」とあるのだが、何度読んでもこれがよくわからない。錯覚も何も、この女性は立派なネットアイドルそのものとしか読めないのだ。そもそも「ネットアイドル」という存在自体、錯覚と思い込みで成り立っているものなのではないのか。「ネットアイドル」と「自分をネットアイドルと錯覚した女性」の違いは、いったいどこにあるのだろうか。
この式の変形ってそんなに難しいの?。「月をなめるな」はいくらなんでもフィクションなんじゃないかなあ、と内心思っていたのだが、どうやらそうではなさそうだ。ううむ。
きのうの薬の話の続きになるが、医者が薬を間違える原因のひとつとして、同じ成分の薬でも、いろんな製薬会社が別々の名前で作っている、ということがあります。病院によってどこの会社の製品を採用しているのかが違うので、複数の病院でパートをしているときなど、混乱してしまうのですね。
たとえばきのうの抗精神病薬セレネースは大日本製薬の商品名。一般名はハロペリドールで、ほかにもハロステン、リントン、ケセラン、コスミナール、セポンスク、ヨウペリドール、スイロリン、レモナミン、ヘルパロールなどという商品名で出している会社があるらしい。これが全部同じ薬の別名なんて、誰がわかるよ(私が実際使ったことのあるのは最初の3つだけ)。あと、サイレースというなんとなく静かそうな語感の名前を持った睡眠薬は、別の会社ではビビットエースなる目が醒めそうな名前で出ている。
有名なハルシオンと同じ成分の睡眠薬には、ミンザインという人をなめたような名前のものもある。私は使ったことがないけれど。
藤水名子(最初の変換は「不死身な子」。すばらしい)『王昭君』(講談社文庫)、平山夢明『メルキオールの惨劇』(ハルキ・ホラー文庫)、森奈津子『あんただけ死なない』(ハルキ・ホラー文庫)購入。
川崎の薬局で、皮膚炎の薬と抗精神病薬が間違えて処方されてしまい、皮膚病の子供たちに手足のしびれとか呂律が回らないとかいった症状が出ているとか。かわいそうに。
そういえば、ちょっと前には医師が胃潰瘍の薬と抗癌剤を間違えて処方してしまい、しかもそれが何週間も気づかれなかったので重い副作用が出てしまった、という事件もあった。これも怖い話だ。
実はこの二つの事件には共通点がある。
皮膚科の薬は、セルテクト。
抗精神病薬は、セレネース。
胃の薬は、アルサルミン。
抗癌剤は、アルケラン。
名前が似てるのだ。
医者や薬剤師だって人間である。人間ってのは単純なミスをするものだ。そりゃもちろん、アルサルミンとアルケランなんて、理性のある医者が手書きで処方箋を書いていたら普通間違えるわけがないのだが、コンピュータによるオーダリングシステムが導入されてから事情が変わってしまった。画面上では薬の名前は五十音順に並んでいるので、ちょっとクリック位置を間違えただけで胃薬が抗癌剤になってしまうのだ。ま、ワープロを導入したら「内蔵」と「内臓」のミスが増えたみたいなもんですね。
薬局のケースでは、散剤の容器が隣同士に並んでいたのを、何かの拍子に間違えてしまったんでしょう。散剤はたいがい真っ白だし(中には色つきの薬もあるが)、容器だって似たり寄ったりだから、外から見ただけじゃわかりません。
薬の処方は私だってときどき間違えるし(幸い、不審な処方があった場合は薬局から連絡がくるのだけど)、看護婦さんの与薬ミスがない病院なんて皆無だと思う(たいがいの薬は、1回間違えたくらいでは人体に大した影響はないのだ)。だから、テレビなどでときどき見かける「医者や薬剤師などがそんな単純なミスをするとはけしからん」というような論調はあんまり生産的とは思えない。医者も薬剤師も関係ない。人間ってのは単純なミスをするものなのだ。
人間はミスをする、という前提の上で、命に関わることになる前に、どっかで気づくようなチェックシステムを作りましょう、ということなら話はわかるんだけど。コンピュータの場合だったら、間違えたらえらいことになる薬の前後にはちょっと広めのスペースを入れといてクリックミスを防ぐようにするとか、薬局だったら劇薬は目立つ色の容器に入れとくとかね。単純なミスを防ぐ方法もまた、単純なことなのだ。
でも、どんなに万全な体制を作っても、ミスというのは起こるときには起こるものなんだよなあ。
以前、東京新聞に高橋龍太郎という精神科医が、「キレる子供たち」というタイトルでコラムを書いていた。この中で高橋医師が「“暴走”を防ぐための5項目」として挙げている項目は、次のとおり。
「(1)よくしかる。よく褒める。(2)外で遊ばせ、けんかをさせること。(3)テレビやテレビゲームを制限し、本を読ませること。(4)あいさつをしっかり。(5)夜更かしをさせない」
確かに真実は当たり前なことの中にあるのかもしれないが、これはちょっと当たり前すぎるのでは。私など、あまりにも古臭い主張なんで唖然としてしまったのだけど。
これは、典型的な懐旧論者の主張ですね。この項目通りに育てられた子供は、おそらく周囲から浮き上がり、いじめの対象になるんじゃないかな。
ほら、最近の凶悪事件ってのは、たいがい地方で起きているじゃないですか。懐旧論者がいうことが本当ならば、凶悪な事件は、家庭の崩壊がより進んだ都会で多く起きるはずでは。そうではない、ということは、自然の中で育てば子供はのびのびと育つ、というよく言われる主張は、明らかに間違っている。子供たちにとって逃げ場がなく息苦しい環境は、むしろ旧来の共同体がまだ機能している地方の方なのである。
「ご近所の目」のネットワークを復活させ、近所の子供をよく見るようにすれば犯罪は減らせるのでは、と説く人もいるが、それは逆効果だろう。子供たちは、明らかにそうした監視の目から逃がれたがっている。
いくら育て方を昔に戻したとしても、子供の心は昔通りには戻らない。それどころか、旧来のやり方と、現代的な感性の間のきしみの中で、子供たちのフラストレーションはたまっていくんじゃないだろうか。
むしろ、旧来の家族観が完全に崩壊してしまったあとに、新しい平衡状態が生まれてくるような気がする。
篠田節子『百年の恋』購入。
ホーキング博士、暴行を受けた可能性。「ホーキング博士は、腕や手首の骨折、顔の切り傷、目のまわりのあざなどの不可解なけがで、数度にわたり病院の治療を受けた。同博士はけがの理由を説明したがらないという」のだそうだ。なんだかいろいろ邪推の余地のある記事である。
小川一水『こちら郵政省特配課』(ソノラマ文庫)読了。現場で仕事をする人々を描くのがうまいですね、この作者は。プロフェッショナル、それもあまり表には出ない裏方の責任感や矜持といったものを実に気持ちよく描いてくれる。この作品でも郵政省の役人という、普通のヤングアダルト小説にはとても出てこなさそうキャラクターを主役に持ってきて、見事に物語をつくっている。
ただし、この作品では、そうした地に足の着いた部分と現実離れした部分のバランスが悪いのが難点。たとえば、郵政省の一部門がはしご車や新幹線まで持ってたり(富豪刑事かいな)、公務員が平気でスピード違反したり、あげくのはてに警察官と格闘したりってのは、いくらなんでもムチャというものでしょう。
作者はこの作品の1年後、同じように現場の裏方を主役に据えた『回転翼の天使』を発表しているが、こちらではロマンと現実味のバランスをうまくとることに成功してます。作者はまだ24歳、今後も成長が期待される作家といえるでしょう。
池上永一を2冊読了。
まず『バガージマヌパナス』(文春文庫)は、ファンタジーノベル大賞受賞作。飛び交う沖縄語、破天荒なキャラクターはとても魅力的なのだが、ストーリーといえるものはほとんどなく、ただ綾乃とオージャーガンマーのキャラクターだけで引っ張っていく物語である。後半の展開は泣けることは泣けるんだけど、かなりステレオタイプだし、全体として、沖縄の楽園としての一面しか描いていないという不満も残る。と、不満ばかり感じてしまうのは、やはり『レキオス』というとんでもない作品のあとに読んでしまったからかも。その後の『風車祭』『レキオス』といった沖縄ものの大作への習作、といったところかな。
続いて短篇集『復活、へび女』(実業之日本社)。著者の沖縄ものではない作品が読めるのは今のところこの本だけ。この著者の書くものは、「神様やお告げなどが平然として日常と同居する沖縄」という道具立ての魅力に依存しているような気がしていたのだが、どうしてどうして、沖縄を舞台にしていない作品もなかなか完成度が高い。沖縄もの以外でも、異界と日常があっけらかんと同居する独特の世界観は健在だった。特に「木になる花」の美しいラストは絶品。
しかし、「8つの都市伝説」という副題はどうかなあ。都市伝説の話なんてほとんどないではないか。
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