2、3日前のことだ。駅前のバス停のところにワープロ打ちの看板が出ていた。
アルバイト大至急募集中
超多忙につき大至急宜しくお願いします。
高給 時給2千円+能力給プラス
仕事の内容:年賀状宛名書き
(残り数名毎月継続して仕事があります)
連絡先
TEL XX-XXXX-XXXX
FAX XX-XXXX-XXXX
大至急FAXにて履歴書を送付して下さい
東大総長蓮実重彦総長とは友人です。
ノーベル物理学賞江崎レオナ先生とも友人です。
(秘)にします。
ナンバーワンインターナショナルパーフェクト研究所
日本支社本部USA他(ボランティアもしています)
パソコン(IBM)+ソフト+プリンター1台あります
確かに「大至急」なんだろうなあ。今ごろになって「年賀状宛名書き」を募集してるんだから。でも、いったい「残り数名」ってのは何から何を引いた残りなのか。「日本支社本部USA他(ボランティアもしています)」ってのはいったいどういう意味なのか。唐突に「東大総長蓮実重彦総長」やら江崎レオナやらを引き合いに出して権威づけしてるのも謎。友人なら江崎玲於奈の名前くらいちゃんと書いてほしいものである(「蓮實」もね)。どうもこれを書いた人は日本語に不自由な人らしい。
しかし、最大の見所といえば、勤務先の名前だろう。ナンバーワンインターナショナルパーフェクト研究所。ここまで怪しい名前の研究所というのもなかなかあるものではない。いったい何を研究しているのか。そしていったいなんでまた、今ごろになって、バイトを雇ってまで年賀状を書かねばならないのか(別に手書きってわけでもないようなのになあ)。
思わず「赤毛連盟」を思い出してしまった私である。バイトに出ている間に家の下に穴でも掘られていたりして。
今日駅に行ったところ、看板はすでになくなっていた。まあ怪しさ大爆発ではあるものの、時給はかなりいいからなあ。すでにバイトが集まったということなんだろう。さてバイトに応募した人の運命やいかに。
今日は朝帰りで、昼間はずっと寝ていたので妻は少々おかんむり(死語)。
さてきのうも森太郎さんに感想を訊かれたシェンムー。私はもうすっかり飽きてしまったのだが、妻は私のセーブデータから一生懸命進めていて現在DISC3まで来たところ。私はこのゲーム、どこがおもしろいのかさっぱりわからないので「そんなにおもしろい?」と尋ねてみたら「おもしろくない」ときっぱりとした返答。私が呆れて「つまらないのならなぜやっているのか」と訊いたところ、妻はこう答えた。
「このゲーム、1回クリアしたら絶対全キャラクターと戦えるようになるはず。『最近疲れ気味なんだよねえ』って言ってる人とか原崎とかと戦ってみたいじゃない。私はそれを楽しみにやっているの」。妻によれば、トゥナイトか何かで「シェンムーでは街中の全員と戦うことができる」と言っていたのを確かに聞いたことがあるという。
妻の考えるシェンムーの二周目はこうなるらしい。
街でおばさんに声をかけて、「あら、涼ちゃん」などと言われたら「戦いますか? はい いいえ」のウィンドウが出て「はい」を選ぶといきなりストリートバトル開始。「何するの、涼ちゃん」などと言われながらもファイト! そして次々と街の人々をぼこぼこにして所持金を奪い、香港行きの旅費を手に入れるのである。
「最近疲れ気味なんだよねぇ」などと抜かすおじさんとも、「お兄ちゃん、プロレスごっこしようよ」などと言ってくるガキとも当然バトル可能。通行人と戦えばアパートの鍵が手に入って、いつもは入れない留守宅にも入れるようになる(で、部屋をあさって通帳や現金を入手するのだ)。ロシヤのおばあちゃんは意外に強そうだし、クリスマスにしか現れないサンタクロースもきっと強くて「メリー・クリスマス!」と叫びながら技を繰り出してくるに違いない。「三刀」のメンバーは全員中国拳法の達人だろう。ネコのところにいるゆかりちゃんも意外に強敵で、必殺技ネコ投げは防御不可能。そして最強の敵はイネさんで、実は親父に拳法を教えたのはイネさんだった、というオチに違いない、とまで言い切る。
「だってバーチャファイターの作者が作ったんでしょ、それなら当然全員と戦えなきゃ嘘でしょ」と妻はいう。
なんだか妻の考えるシェンムーはとてもおもしろそうだ。
その点、私の予想したシェンムーのオチなどまだまだである。街のそこら中に公衆電話があるので、実はシェンムー世界はコンピュータによって作られた仮想世界で、公衆電話で特別な番号に電話をしたら「本当の世界」に戻れるんじゃないかな、などと思ったのだけど。ゲームなら、バレット・タイム的な効果も簡単に出せるだろうし。バレット・タイムを最初に使う3D格闘ゲームは何だろうか(それとも、もうある?)。
久しぶりに古本屋を回り、『怪奇幻想の文学VI 啓示と奇蹟』(新人物往来社)を入手。この本、何ヶ所か書き込みがあるのだが、冒頭の由良君美のエッセイの扉には「このエッセイは興味深かった。特にS・Fとの関連、私自身の進路も含めて、精読必」と書いてある。この人がいったいどういう進路に進んだのか、今どうしているのか気になる。その後、BOOK OFFにてムーア&カットナー『たそがれの地球の砦』(ハヤカワ文庫SF)、E・E・スミス『火星航路SOS』(ハヤカワ文庫SF)、マイケル・ギルバート『十二夜殺人事件』(集英社文庫)、アンドルー・クロフツ『英国プリンス誘拐』(ハヤカワ文庫NV)購入。最後のは、まだ結婚前のチャールズ皇太子が誘拐され、誘拐犯の唯一の目撃者である女優が未来の英国王妃の座を狙うという話らしい。あんまり面白くなさそう(だったら買うなよ)。
夕方からは池袋で「命懸けで遊ぶのださんを見守る会(仮称)」に合流。ほとんど飛び入り参加になってしまいすいませんでした。鬼気迫る(笑)日記からはいったいどうなっていることかと思っていたのだが、のださんはけっこう元気そうであった。途中の芳林堂でばったり出会った藤元直樹さんがそのまま参加したり、突然大森望さんが登場したり。
飲み会では、ジョニィ高橋さんに「ミステリ」と「ミステリー」と「ミステリィ」についての話を聞く。「ミステリ」と「ミステリー」の区別は、本格と非本格ともまた違うらしい。私は自分ではけっこうミステリー読みだと思っていたのだけど、この区別はいまだにわかりません。田中さんは、SF研究会のことをエス研って略しますよね、と周り中に聞きまくっていたけど、普通略さないよなあ。さらに、田中世界に新事実が発覚。私と藤元さんはほぼ同い年なのだそうだ。
それからパセラで朝までカラオケ。ジョニィさんがなぜジェニィと呼ばれるのかを理解する。しかし、戸川純とか筋少とかをみんなで合唱する光景ってのもすごいものがありますね(といいつつも『ロリータ108号』とか『香菜、頭をよくしてあげよう』とか精神科医にあるまじき歌ばかり歌っていた私である)。
中井拓志『quarter mo@n』(角川ホラー文庫)読了。これは傑作。特にネットにどっぷり浸かってる人は必読でしょう。
新興住宅地の中学生たちの間で連続する自殺と殺人。その謎を追う刑事たちは、市内に引かれた光オンラインのネットワークの存在につきあたる。実はこの市内では、政府のプロジェクトにより各戸にパソコンが支給され、ローカルなネットワークが構築されているのである。そのネットワークの上で、中学生たちは「月の帝国」という独自のネットワーク社会を築きあげていた。
もちろんネットワークだから匿名性が原則。匿名のコミュニケーションが思いも寄らぬ方向に暴走しがちなのは、ネット経験者なら誰もが知っている通り。もともとは善意によって作られた「帝国」も、いつしかページ制作者の意図を超え、参加者たち個人個人の(現実世界での)意志すらこえて暴走し、現実世界を浸蝕していくのである。そして暴走の果て、ネット内のリアルと現実界のリアルがぶつかりあった先に見えてくる異様な世界。
ネットの世界を取り入れたホラーやミステリは数多いけど、これほどにリアリティのある怖さを描ききった作品は今までなかった。この作品の怖さを本当に味わえるのは、おそらくネット世界の住人である私たちだろう。とにかく読むべし。
精神医学関係の描写にリアリティが感じられないのが難点だけど、これは私の職業柄そう感じるだけで、一般の読者は特に違和感は感じないと思う。また、ところどころ日本語に気になる点もあるけど、作品の圧倒的な迫力の前には、それほどの傷にはなっていない。
……ところで、なんでタイトルは「クォーター・ムーン」なんだろう。
ヤクルトの石井選手が木佐彩子アナと結婚へ、だそうなのだが、野球にはまったく疎い私は石井選手というのが誰だかさっぱりわからない。石井ねえ、イシイイシイ。確か、岡村孝子と結婚したのが石井だったよなあ。また結婚するのか。でも、そうすると岡村孝子とは離婚したのかな? いつの間に? そういや、石井といえば神田うのとつきあってたような気もするなあ。試合を見に来たりしてたよね。破局したんだっけ? 破局してから岡村孝子と結婚したの? 違う? あ、今思い出したけど、石井って瀬能あづさと結婚したって話も聞いたことがあるぞ。岡村孝子じゃなくて瀬能あづさと結婚したんだっけ。瀬能あづさ。元CoCo。懐かしいなあ。恋をした女の子ははんぶん不思議。宮前真樹。三浦理恵子。今何やってるんだろ。いやそうじゃなくて。石井だった。で、誰と結婚したんだっけ?
ここまで読んで私がわざとボケて見せていると思った人もいるかもしれないが、そういうわけではなく、本当にわからなかったのだ。一生懸命検索して、ようやく、今回木佐彩子と結婚する石井は、岡村孝子と結婚した石井とも瀬能あづさと結婚した石井とも別人であることを知った(神田うのとつきあっていた石井とは同一人物だったようだ)。石井は3人もいたのか。
しかし、なんでまた野球界には石井が多いのか。そしてなぜみんな芸能人と結婚するのか。スケート界に黒沼が多いようなものだろうか。嬬恋村みたいに、石井姓の多いどっかの村にでっかい野球場でもあるのか。そしてその村には、芸能人との結婚の仕方を教える教室でもあるんだろうか。
夕べビデオに撮った『ブギーポップは笑わない』を見ていたら、突然塩澤編集長@SFマガジンから電話。新年早々仕事の依頼とはありがたいことである。
さて、アニメ化されたブギーはまるで『lain』みたいに淡彩で暗い雰囲気。確かに重い話ではあるのだけど、ここまで暗くすることはないんじゃないかなあ。ブギーに似合うのは、『lain』的な暗さより、からりと明るくしかしずっしりと重い雰囲気だろう(難しいけど)。これじゃ、電撃文庫のCMの方がはるかにおもしろそうである。ブギーの声もなんだか棒読み口調だし。しかし、いきなりこのアニメだけ見ても原作読んでない人は全然わからんだろうなあ。なんの説明もなく人食いとか言われてもなあ。ここまで見る人を選ぶアニメってのも珍しい。
今年最初に買った本は高橋康雄『断髪する女たち』(江戸東京ライブラリー)、若桑みどり『戦争がつくる女性像』(ちくま学芸文庫)、小坂井澄『さまよえるキリスト教』(徳間文庫)、野木恵一『報復兵器V2』(光人社NF文庫)、ホーマー・ヒッカム・ジュニア『ロケット・ボーイズ』上(草思社)。おお、全部ノンフィクションとは珍しい。しかし、単行本で上下巻同時発売でない本なんて久しぶりなんじゃないのかな。
仕事始め。
今年最初の読了本は、ファンタジーノベル大賞受賞作、宇月原晴明『信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』(新潮社)。優秀賞の『BH85』とは対照的な作風ながら、これまた大賞にふさわしい傑作。まさにこれぞ伝奇小説という逸品である。
織田信長と古代ローマの少年皇帝ヘリオガバルスをアンドロギュヌス、バール神、霊石といったキーワードで結びつけ、戦国史を読み替えていく物語はかなり大胆。ここまで刺激的な物語は久しぶりに読んだ気がする。歴史の謎に迫るのがフランスの詩人アントナン・アルトーというあたりも大胆不敵である(ラストはちょっとありがちだけど)。
歴史小説というと、レトリックにあまり気を使わず古めかしい文体でげんなりしてしまうことが多いのだが、この作品では、戦国時代を描いていていも翻訳小説めいた硬質な文体が使われているのが新鮮で心地よい。こういう文体の歴史小説ならもっと読んでみたいものである。
ただ、一貫したストーリーというよりは断章の連続なので、信長の事蹟に不案内な読者にとってはかなり不親切なのが残念。信長やアルトーの生涯くらい当然知っておけ、ということなんだろうな。晦渋な部分が多いのは高踏的な効果を狙ってのことかとも思うのだが、もうちょっとはエンタテインメント性があった方が読みやすいと思うんだけど。
おとといのパズルの答えだけど、掲示板やメールでいくつもの回答を頂きました。どうもありがとうございました。
まずは第1問。(1)は右の00の間に斜め線をひいて、1÷100=1%(これは自力で解けた)。(2)は、18の真ん中に横線を引いて、18+3=5−1。これで、10/10+3=5-1と読ませる。これは杉並太郎さんとつるかめさんの回答。なるほど。
さて第2問だけど、「目田申甲由白旧旦」の8つまでは簡単。えんじ@SFムーンストーンさんの回答は、残りのふたつの日を使って「門」を作るというもの。杉並太郎さんからも同じ回答がよせられました。なるほどねぇ。うまい。確かに出題の意図としてはこれが正解なのだろうけど、なんだかずるい気もしてしまう。
なんとテキサス大学のYoonsuck Choeさんからは、この問題の別解が英文メールで届いていた。Choeさんの奥さんはSFファンで、しかも大阪近郊で3年間暮らしていたこともあって日本語が堪能。このページには、奥さんがSF情報を探しているときにつきあたったそうだ。うーむ、当ページも国際的になってきましたな。Choeさんの回答はここ。日を横にして「巴」「中」という答えである。掲示板でもつるかめさんが同じ回答を寄せてましたね。
ただ、「中」は一筆かどうか、というところでちょっと疑問があるので、そのかわりに私が考えたのは「昌」。下の「日」は一筆で書ける。ずるい?
第3問はいまだにひとつも回答が来ないので謎のまま。だれもが真っ先に思いつくのは「00≠11+8」という答えだろうが、これは式自体が「等式」でなくなってしまうので不可だろう。第1問が「1本の直線」なのに対して、加えるのが「1本の線」というところにポイントがあるような気もするんだけど……本当に解けるんだろうか。
さて東京へ帰ってまいりました。
横須賀線は初詣帰りの客で混んでいるかと思ったが、前の方の車両はがらがら。ゆうゆうと座って帰る。
久しぶりに鎌倉の実家で過ごしてくつろぎました。鎌倉も、住むにはいいとこなんだけど、勤め先が東京だと通うのがたいへんだよなあ。
どっか、鎌倉のそばにいい精神病院はないものか。
ちょっと鎌倉観光でもしてみるか、ということで今日は妻と二人でバスを乗り継いで長谷の方まで行ってみる。アンティークショップを冷やかしたあと、長谷観音から御霊神社にまわり、それから江ノ電で鎌倉駅に戻って小町通りへ。小町通りはものすごい人出でなかなか歩けないほど。正月の鎌倉なんかに来るもんじゃないね。
さて、長谷寺の前にいた焼き芋屋が、こんな問題を出していた。どれか1問でも正解した人には、焼き芋を半分サービスしてくれるというのだが、これがかなり難しい。
第1問 1本の直線を加えて等式を完成させて下さい。
(1) 1÷100=100
(2) 18+3=5-1
第2問 10個の「日」に一筆加えてそれぞれ別の漢字にして下さい。
日 日 日 日 日 日 日 日 日 日
第3問 1本の線を加えて等式を完成させて下さい。
00=11+8
第1問の(1)はなんとかわかったものの、あとがわからない。第2問は、7つまでは簡単なんだけどなあ。こういうパズルは好きなだけに、自力で解けないことが悔しくて仕方がない。いくら考えてもわからないので、恥を忍んで広く読者の方々の知恵を借りたいと思います。
誰かわかる人いますか?
というわけで、世紀末最後の年が明けました。あけましておめでとうございます。
世間じゃミレニアムだ何だと騒いでいるようだが、今年はまだまだ世紀末。私は、今年もまた愉悦と頽廃を合い言葉に生きていこうと思います。
さて、正月といえば鎌倉では市内交通規制と決まっている。旧市内全域にわたり、バスとタクシー以外は進入禁止。そのバスとタクシーも、ふだんは駅前のバスターミナルが終点なのだが、正月にはそこまで入ることはできずはるか手前で折り返す。だから市内の道路は(バス通り以外は)ほとんど無人状態である。
鶴岡八幡宮への参拝路である若宮大路は初詣客でごったがえしているのだが、私の実家は観光ルートからはずれた鎌倉の隅にあるので、中心部の喧騒はまったく届かない。
静かな家の中で、なんにも考えず、だらーりとした正月を過ごす。ささやかな愉悦と頽廃。
久しぶりにゆっくりと実家の自分の本棚を眺めてみたのだが、かつて買ったことを忘れてしまっていた本もけっこうあったりして、まるで掘り出し物の多い古本屋を漁っているような気分である。ファーマーの『淫獣の幻影』『淫獣の妖宴』とか、アンダースンの『鳥人大戦争』とか、私はこんな本を持っていたのか、と我ながら驚いたりして。ホアウッドの『スカヤグリーグ』はまたもう一度読みたいけど、重いので東京まで持っていくのはちょっとなあ。しかしこの本、傑作なのになんでほとんど話題にもならず、いまだに文庫にも落ちてないんだろうなあ、などと思いつつ本棚を漁る。
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