たばこ
島田清次郎

機関車――そんなにも私は煙草を吸ふのだ。
部屋が煙でむせび、
投げ出した足が私には見えない。
(お前、おまへ、おまへ)!
私はむせび泣いて、愛人に、煙に、呼びかける。
だが、密閉された部屋からでも、
やがてお前は易々としのび出て行くのだ。
私は激しい嫉妬から、
もはや煙草は吸ふまいと思つた。
底本:「悪い仲間」昭和3年5月号

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