野の出来事
島田清次郎
日は照り
土はしめる、
百姓は土をたがやし
草の葉は青く光つてゐる
私はあぜ(、、)道をゆく―― 路は小川に出た
水門の傍に二人の少年が網をうつてゐる
「何かとれるかい」
「ううん、今来たばかりやもん」
「みとるまつし、()かいがをとつて見せるさかい」
「そらやれ!」
網は青空の下に輪をゑがいてぽつちやりと水に入る
「引けや!」
しづかに網はひきあげられる
小さい一尾の鮒が白く光つた
「やあこんな小さいやつが一匹!」
「なあ、こんな小さいやつあ生かしてやるまいかいや!」
二人の少年の手が鮒を小川へ投げつけそして私をふり返つてにつこり笑つた。私は何かなく恥かしくなつて路をひきかへした。
二人の少年よ、幸福であれ!
底本:『石川近代文学全集16 近代詩』
初出:「精神界」大正6年7月号

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