故郷の若者達に
島田清次郎
雪と嵐の北国に生れた若者達よ、
僕は君達の末広がりゆく未来を祝福する。
僕のあらゆる冒険、苦闘、事功は、要するに僕以後に来る
いと若き者達への道開きにある。
モーゼの如く、僕は全民衆の先頭に立つて、

命のある限り、
根のきく限り、足のきく限り、
いな、足がきかなくなれば胴で歩いてでも、
僕は君達を新しい世界へと案内してゆく、
それが僕の役目だから!

今度の講演会に就ての、君達の誠意と労力をうれしく思ふ、
たとへ、それは、全社会から見て、わづかに小さなものであらうとも、
君達の真情は、僕の胸をうつ。

あゝ、いと若き至純なるものの真情にうるほされて、
僕は今、世界一の幸福者だ。

嵐と雪の北国に生れた若者達よ、
達者でくらせよ。
また、勉強を怠るな。
僕が世界認識の旅から帰る日迄に、
少しはしつかりしてゐてくれ。
ぢや、さよなら。
底本:『石川近代文学全集16 近代詩』
初出:「凶鳥」大正11年5月号

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