夏の便り 金沢より
島田清次郎
冠省、こちらは夏の真つ盛りで、私は近くの海へ行くので真つ黒になつてゐます。
作は大分すゝみました。此分では九月中頃には一通りの脱稿が出来ますでせう。全き完成はゆつくりかゝるつもりでをります。
先日、「読売」に私が山中温泉へ行つてゐるやうの消息が出てゐたさうですが、多分誰れかの悪戯かと存じられます。病気でもない限り病人や隠居の真似はしないつもりです。
いろいろ云ひたきことも今は沈黙してゐます。
底本:「文章倶楽部」大正8年9月号
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