私の好きな小説戯曲中の女
島田清次郎
小説戯曲中に現はれたる女性と申しても、小説戯曲は古今東西に渉り甚だその類が多く、その女性も亦極めて多いのであります。で、その多い女性のうちで大体次の三種の女性が好きで、もし、その小説戯曲に十分表現し切られてゐない場合は、自己の内面的エナージーで補足しつゝ味はひます。
一、何もかも知りつくしてゐて、しかも静かで美しくて、しとやかで思ひやりふかい、二十八九の女。
一、でなければ、何も知らない初気な無邪気な美しい少女。
一、もしくは、インテレクチュアルであつて、嫌味でなく、生意気でなくて、底力のある美しい女。
もちろん、この三種にも陽性陰性と分つことができるが、それはどちらもよい。
底本:「文章倶楽部」大正10年1月号