朝
島田清次郎
1
朝は水のない一輪挿
挿されたヨカナアンの首の蒼白さ
飛行機の飛べる風景と
脂の匂ひのする音波――
おおーイ
隣室の患者が救ひを求めてゐる。
2
自分は新聞を読んでゐる。
自分は世界を見てゐる。
自分は活字を睨んでゐる。
自分は茫漠とした灰色をみつめてゐる。
底本:「文芸ビルデング」昭和4年6月号
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