三年振りであつた少女へ
島田清次郎
今日は突然出遇つて僕は全くうれしかつた
僕は君に別れてからきつと再び遇へさうな確信の大きくなるのを感じてゐた
僕は余計うれしかつた
僕は今、母と二人で貧しくくらしてゐる
朝は英語の勉強にゆく
夜は創作にせいを出す
君と自由に遊べる時間は昼だ!
あそびに来てくれたまへ
僕の家は君に出あつた街角から左側のあの化粧品店の奥二階だ
茶の室も寝室も勉強室もみな一つしよだ
母は君を待つてゐる
僕は会ひたくてならない
でも君は実に立派な女になつたね
M子よ、あそびに来てくれ
そして僕をはぢしめないでくれ!
今夜、僕はきつと君の夢を見るに相違ない。
底本:『石川近代文学全集16 近代詩』
初出:「精神界」大正6年7月号

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