読売新聞大正14年8月25日号

ゴシツプ
巣鴨庚申塚の保養院の一室で長編『獅子』(ライオンの一生を自分に擬した)を書き上げた島田清次郎クンもスツカリ正気にかへつたので、同郷人の建築師東方明君と例の観自在木村秀雄君とで速く退院させようとシキリに奔走してゐるさうだ。金沢を引き払つて数日前上京した実母の近況をでも聞かせようものなら人一倍親思ひの島清クンが昂奮の結果トビ出さないものでもないと、本人には一切秘密にしてゐる。東方氏は『先日病院の格子窓で面会したがひどくやつれてゐて、けふで一年と廿一日になると力なく言つたのには思はずホロリとさせられた』と。尚近日退院の上生活問題に就ても何かと心配してゐる由をつけ加へた。
底本:読売新聞大正14年8月25日号

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