責任編輯言
畠山清身
前号に島田清次郎の詩を載せたところがニセモノか本モノかと聞く不届者がある。悪い仲間はニセモノで売らうなんてケチな了見は微塵もないから安心して呉れ。あれは一党の小林輝が酔払つて親父の家にあばれ込み、気狂とあやまられて巣鴨保養院に投り込まれた際偶然島清の隣室になつた為一ケ月間毎日話し込んでゐた。其時チリ紙に書いた原稿を貰つて来たのがあの詩だ。(尤もこれは悪い仲間本部の指令による小林の行動なのだがそれは内密だ)今号の小林の創作に其時の気狂病院がよく描かれてゐる。僕も小林と共に三月始め島田を訪問して娯楽室で十分程話した。春先で頭がボンヤリしてるとの事だつたが随分確かなものであつた。ほとんど恢復して本人も出たがつてゐるのだが、警察の手で入れられたので一寸出るに困難だと云ふことである。
底本:「悪い仲間」昭和3年4月号