マンハッタン市街戦
スティーヴン・マーティン・コーエン 務台夏子訳 創元ノヴェルズ(900円)

 ときは湾岸戦争のさなか。マンハッタンに爆弾テロリストが出現。ヘリコプターが、エンパイア・ステート・ビルが、オペラハウスが、次々と爆発炎上していく。死者の数は増える一方。犯人はフセインを崇拝するイラク人テロリスト3人組。これはもうひとつの戦争なのだ。それを迎え撃つのは、殺人課刑事、FBI特別捜査官、爆発物専門家の親友同士の3人。ここにマンハッタンを舞台にした3対3のデスマッチが始まった!

 あらすじを見ればわかるとおり、ひとことでいえばハリウッドB級アクション映画ですね、むちゃくちゃ低予算の。文章なら「爆発した」と書いちゃえば爆破シーンなんていとも簡単なのが強みなので一見派手そうに見えるけれど、脚本(=ストーリー)の雑さはいかんともしがたいものがある。

 ハリウッド映画そのままに、主人公たちは軽口をたたきまくるのだが、その行動ときたらまるっきりいきあたりばったり。テロリスト側もあんまりものを考えているようには見えないのでいい勝負だが。「ダイ・ハード」みたいに両者の駆け引きがあったりすれば緊迫した展開になるのだが、そんなものは一切なし。主人公チームはただただ淡々とテロリストチームを追いつめていく。

 クライマックスには、洞窟探検シーンがあったり、犯人から暗号文まじりの脅迫状が届いたりして盛りだくさんなのだが、この暗号、結局最後まで解明されないままに終わる。なんじゃいこれは。

 映画化の原作にはぴったりかもしれない傑作である((C)小森収)。


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