(last update 2005/04/01)

精神科薬広告図像集
第2室 1950-1979


 1950年に世界初の抗精神病薬が開発され、広告も大きく変わってくる。精神病へのマイナスイメージを反映した広告が多いとはいえ、今でも私たちの目を惹く個性的な広告が多く現れたのもこの時代である。
The 1950s

定位脳深部手術装置

定位脳深部手術装置
1954年 精神神経学雑誌

フイゼリン®
(インスリン)
1956年 精神神経学雑誌

 戦後も、しばらくはインスリンショック療法が行われていた。

フイゼリン

Wintermin

ウインタミン®
(塩酸クロルプロマジン)
1956年 脳と神経

 1950年にフランスのローヌ・プーラン社で合成された世界初の抗精神病薬がこれ。もともとは別に精神病の薬として開発されたのではなく、「人工冬眠」(といっても、SFに出てくるコールド・スリープじゃなく、麻酔の作用を強化する、といった意味)用の薬だった。ネーミングの由来は、冬眠→ウィンター眠→ウインタミンだし、雪の結晶の図案ももちろん「冬眠」からの連想。もう少しひねれ。「4560 R.P.」という謎の記号は、この薬品の開発コードナンバーである(R.P.はローヌ・プーラン社の略)。
カロパン®
(塩酸ピプラドロール)
1958年 脳と神経

 カロパンは、ヒロポンやリタリンと同じく中枢神経刺激薬の一種。現在は販売されていない。この広告はダウナーバージョン。

カロパン

The 1960s

カロパン

カロパン®
(塩酸ピプラドロール)
1960年 精神医学

 上のカロパンのアッパーバージョンである。
トフラニール®
(塩酸イミプラミン)
1960年 精神医学

 1958年にスイスのガイギー社が開発した世界初の抗うつ薬。

トフラニール

トフラニール

トフラニール®
(塩酸イミプラミン)
1960年 精神医学
電氣催眠器
1960年 精神医学

 「近代刺戟生理学の画期的応用! 薬物に依らぬ睡眠療法遂に実現」だそうである。不眠症、ノイローゼ、精神分裂症、高血圧症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、其の他の神経性疾患……とほとんど万病に効くようなのだけれど、いったいどんな仕組みなのか全然わかりません。

電氣催眠器

トノスタン

トノスタン®
1960年 精神医学

 この薬についてはよくわからない。現在は使われていない薬である。
トリプタノール®
(塩酸アミトリプチリン)
1964年 精神医学

 トリプタノールは現在も使われている抗うつ薬だが、当時は夜尿症にも使われていた。現在はこの用途にはほとんど用いられてない。

トリプタノール

ラントロン

ラントロン®
(塩酸アミトリプチリン)
1968年 精神神経学雑誌

 現在も使われている代表的な抗うつ薬。
セレネース®
(ハロペリドール)
1968年 精神神経学雑誌

セレネース

セルシン

セルシン®
(ジアゼパム)
1968年 精神神経学雑誌

ピロミジン®
(ピリドキサール)
1968年 精神神経学雑誌

 単なるビタミン剤。絵よりも、上の効能の「放射線宿酔」が気になります。

ピロミジン

大日本製薬

大日本製薬
1968年 精神神経学雑誌

アキネトン®
(塩酸ビペリデン)
1968年 精神神経学雑誌

 抗精神病薬の副作用である手の震えや小刻み歩行などを改善するために使われる抗パーキンソン剤。

アキネトン

デアポン

デアポン®
(ジメチルアミノエタノール)
1969年 精神医学

 ジメチルアミノエタノール(DMAE)は、いわゆる「スマートドラッグ」。日本では現在販売されていないが、「記憶力を高める」といわれていて、海外では今でもサプリメントとして人気。
The 1970s

テグレトール

テグレトール®
(カルバマゼピン)
1970年 精神神経学雑誌

 代表的な抗てんかん薬。しかし、なぜにこんなに哀しい写真が使われているのか。
セレネース®
(ハロペリドール)
1970年 精神神経学雑誌

 今でもよく使われる代表的な抗精神病薬のひとつ。日本の広告には珍しく、統合失調症の妄想体験をストレートにヴィジュアル化している。

セレネース

セレネース

セレネース®
(ハロペリドール)
1970年 精神神経学雑誌

 セレネースのシュールレアリズム広告シリーズ第2弾。ダリの影響が感じられる絵である。
オスポロット®
(スルチアム)
1970年 精神神経学雑誌

オスポロット

スピロピタン

スピロピタン®
(スピペロン)
1970年 精神神経学雑誌

トリペリドール®
(塩酸トリフルペリドール)
1970年 脳と神経

トリペリドール

デリトン

デリトン®
(クロチアピン)
1970年 精神神経学雑誌
デリトン®
(クロチアピン)
1970年 精神神経学雑誌

デリトン

ホリゾン

ホリゾン®
(ジアゼパム)
1970年 精神神経学雑誌
アタラックスP®
(ヒドロキシジン)
1970年 脳と神経

アタラックスP

トラキラン

トラキラン®
(クロルプロチキセン)
1970年 脳と神経

 この時代の広告には、なぜか横顔のイメージが多い。
セルシン®
(ジアゼパム)
1970年 精神神経学雑誌

セルシン

ナーベン

ナーベン®
(チオチキセン)
1970年 精神神経学雑誌

 3ページ連続の力作広告である。
プロピタン®
(塩酸フロロピパミド)
1970年 精神神経学雑誌

プロピタン

プロピタン

プロピタン®
(塩酸フロロピパミド)
1970年 精神神経学雑誌

 崩壊や破壊のイメージが多いのもこの時代の広告の特徴。精神病を治すための薬の広告なのに、「精神病=不治の不幸な病」という当時の精神病観をそのまま反映しているのである。
トリラホン®
(パーフェナジン)
1970年 精神神経学雑誌

トリラホン

トフラニール他

トフラニール®他
1970年 精神神経学雑誌
セレネース®
(ハロペリドール)
1971年 児童精神医学とその近接領域

セレネース

セレネース

セレネース®
(ハロペリドール)
1972年 精神神経学雑誌

ノリトレン®
(塩酸ノルトリプチリン)
1972年 精神神経学雑誌

ノリトレン

デリトン

デリトン®
(クロチアピン)
1972年 精神神経学雑誌

コゲンチン®
(メタスルホン酸ベンツトロピン)
1972年 精神神経学雑誌

 これも破壊のイメージ。ただし、これは抗精神病薬ではなくパーキンソン病治療薬なので、手の震えによってカップを落としてしまう、という意味だろう。

コゲンチン

セルシン

セルシン®
(ジアゼパム)
1972年 精神医学
トリプタノール®
(塩酸アミトリプチリン)
1972年 精神医学

 仮面うつ病、というのは身体症状の背後にうつの症状が隠されているという意味であって、別に仮面のような顔になるという意味じゃないのだけれど、なかなかインパクトのある広告である。

トリプタノール

脳波計

脳波計
1972年 臨床精神医学
ノリトレン
1972年 臨床精神医学

ノリトレン

ノリトレン

ノリトレン
1972年 臨床精神医学
メレリル®
(塩酸チオリダジン)

1973年 精神医学

 空飛ぶ亀。どういう意味があるのか不明。

メレリル

アーテン

アーテン®
(塩酸トリヘキシフェニジル)

1973年 精神医学
トリペリドール®

1974年 臨床精神医学

トリペリドール

ルバトレン

ルバトレン®
(塩酸モペロン)
1974年 臨床精神医学
セレネース®
(ハロペリドール)
1975年 児童精神医学とその近接領域

 これも、妄想をそのままヴィジュアル化した作品。どこかHattenに似ている。

セレネース

ノリトレン

ノリトレン®
(塩酸ノルトリプチリン)
1975年 児童精神医学とその近接領域

オーラップ®
(ピモジド)
1975年 臨床精神医学

オーラップ

トリペリドール

トリペリドール®
(塩酸トリフルペリドール)
1975年 臨床精神医学
ザロンチン®
(エトサクシミド)
1975年 臨床精神医学

ザロンチン

ルバトレン

ルバトレン®
(塩酸モペロン)
1977年 臨床精神医学
リントン®
(ハロペリドール)
1978年 精神医学

リントン

アナフラニール

アナフラニール®
(塩酸クロミプラミン)
1978年 精神神経学雑誌
プロピタン®
(塩酸フロロピパミド)
1978年 精神神経学雑誌

プロピタン

スピロピタン

スピロピタン®
(スピペロン)
1978年 精神神経学雑誌
アパミン®
(プロペリシアジン)
1978年 精神神経学雑誌

アパミン

イミドール

イミドール®
(塩酸イミプラミン)
1978年 精神神経学雑誌

 開いた窓で自閉からの脱出と社会復帰を象徴する手法は、90年代以降の広告でよく使われるが、これはその先駆的な作品。太田裕美のアルバム「まごころ」のジャケットにちょっと似ている。
クロフェクトン®
(塩酸クロカプラミン)
1978年 精神神経学雑誌

クロフェクトン

メレリル

メレリル®
(塩酸チオリダジン)
1978年 精神神経学雑誌

 空飛ぶ亀のカラー版。
トリプタノール®
(塩酸アミトリプチリン)
1978年 精神神経学雑誌

トリプタノール

テグレトール

テグレトール®
(カルバマゼピン)
1978年 精神神経学雑誌
ダルメート®
(フルラゼパム)
1978年 臨床精神医学

ダルメート

クロフェクトン

クロフェクトン®
(塩酸クロカプラミン)
1978年 臨床精神医学
 ここから3本は、カラー8ページぶちぬきの広告。宇宙のテーマでまとめられているが、なんとも暗い絵柄なのが気になる。なお、このひとつ前のダルメートの広告も宇宙のイメージを使っているが、別の製薬会社の製品である。
リントン®
(ハロペリドール)
1978年 臨床精神医学
 目が怖い。

リントン

デフェクトン

デフェクトン®
(塩酸カルピプラミン)
1978年 臨床精神医学
イストニール®
(ジメタクリン)
1978年 精神神経学雑誌

 何かのプレイですか?

イストニール

イストニール

イストニール®
(ジメタクリン)
1979年 精神神経学雑誌

 こちらは目隠し外してます。
メレリル®
(塩酸チオリダジン)
1979年 精神神経学雑誌

 メレリルは、前年までの「空飛ぶ亀」から一転してこの広告に。いくらなんでもあまりにストレートな。

メレリル


home